JA三井リースグループ、電知、日本オートリサイクルは11月17日、電動車(EV・HV)の使用済みバッテリーを対象とした「バッテリー診断・放電サービス」の運用を正式に開始した。3社共同で実施した実証実験を経て、バッテリーの適切な価値評価による資源循環の促進と、リサイクル現場での発火リスク低減を目指す。

本サービスは、電知が開発した持ち運び可能な診断機器を用いる点が特徴だ。診断には、バッテリー内部の劣化状態を非破壊で直接計測できる「電気化学インピーダンス法」を採用。これにより、従来一般的だった走行距離や年式など間接的なデータに基づくSOH(State of Health:健康状態)測定よりも正確な性能評価が可能となり、バッテリーのリユース、リパーパス(再利用)、リサイクルの適切な判断を支援する。診断はリサイクル工場や中古車販売店、整備工場など場所を問わず短時間で実施できる。

また、同機器は放電機能も備えている。リサイクル工程の前にバッテリーを安全な状態まで放電することで、近年課題となっているリサイクル現場での発火事故のリスクを大幅に低減し、安全な保管・輸送を可能にする。

サービスの背景には、電動車の普及に伴い顕在化してきた複数の課題がある。経済産業省が2023年3月に発表した「成長志向型の資源自律経済戦略」では、サーキュラーエコノミー関連市場が2030年に80兆円規模に達すると予測されるなど、車載バッテリーの資源循環は極めて重要だ。しかし、現状では中古バッテリーの性能評価基準が定まっておらず、EVの中古車としての価値がガソリン車に比べて不当に低くなる一因となっている。これにより、価値あるバッテリーを搭載した中古EVが国内で再利用されずに海外へ流出するケースも少なくない。

さらに、リサイクル現場では、解体されたバッテリーが適切な評価や処理体制が整わないまま長期間保管されることが多く、保管量の増加に伴う発火リスクや、保管スペースの逼迫が深刻な問題となっていた。

今回のサービスは、リース契約が満了した車両や廃車から回収したバッテリーを用いて実証実験を重ね、複数の車種に対応可能な診断・放電プロセスを確立した。JA三井リースグループが実証実験の企画・統括、電知が診断・放電技術の開発とデータ分析、日本オートリサイクルが実証フィールドの提供をそれぞれ担った。
今後、診断・放電技術のさらなる高度化を図るとともに、全国展開を視野に入れたサービス体制の構築を進めていく方針だ。

【プレスリリース】サーキュラーエコノミー推進へ、電動車のバッテリー診断・放電サービスの実証・運用開始
【参照情報】成長志向型の資源自律経済戦略[PDF]
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