ファブラボ広島安芸高田(※1)はこのほど、ヤフー株式会社が運営するオープンコラボレーションハブ「LODGE(※2)」と共同で、景品の材料にペットボトルキャップを使用したガチャガチャ筐体(きょうたい)を制作し、作り方をオープンソースで公開した。

同企画は、プラスチックごみのアップサイクル(リサイクル×クリエーション)を身近に楽しく体感できる機会の創出を目的としている。景品はすべて、地域で集まったペットボトルをリサイクルして作られており、ペットボトルキャップ一つと引き換えに、景品を一つ手に入れられる。

最初の景品は、大人と子供が一緒に遊んでアップサイクルについて語るきっかけにしてほしいという思いから、コマに決定した。コマの形は、安芸高田市の象徴の一つである鹿の角をあしらった。ガチャガチャは、ファブラボ広島安芸高田など市内数カ所に設置し、プラスチックのアップサイクルが身近になるきっかけ作りを進めていきたい考えだ。

現在、プラスチックをはじめとする資源の循環に向けた取り組みが世界で進められている。こうしたなか、デジタルファブリケーション技術を駆使して、既存の巨大な製造・廃棄のサイクルを見直し、素材の調達・製造・廃棄のサイクルを小さくしていくFab City構想が注目されているとファブラボ広島安芸高田は認識している。

Fab City構想は、地域のFabスペースが社会的視点から地域に貢献できる一つのアプローチであるとし、今回の企画では、その一つの実験として、プラスチックごみの回収からリサイクル(射出成形)、配布(コマ)までを一カ所で完結させる。ボトルキャップからコマへのリサイクルにおいては、安芸高田市のリサイクル業者である株式会社マルシンと協業して、回収したボトルキャップを破砕して溶かし、家庭用射出成形機を用いて注入している。

参加者は、自分が集めたボトルキャップが景品に直接変換されることで、プラスチックの再利用の可能性や、面白さに実際に触れられると両組織はみている。ファブラボ広島安芸高田は6月、コマ製作のワークショップを開催した。今後、広島県安芸高田市と株式会社マルシンと連携し、ペットボトルキャップの回収・粉砕・加工(射出成形)の実証実験を通じて、地域循環型アップサイクルシステム構築に取り組んでいく予定だ。

こうした活動が他の地域でも展開されるべく、両組織は同プロジェクトの制作物のデータを動画つきでオープンソースで公開している。ガチャガチャ本体はホームセンターなどで手に入る部品のみから構成されており、FAB施設などでレーザーカットできれば、約2時間で組み立てられるとしている。

身近なものを自分の手でアップサイクルし、その過程を実際に目で見て、加工した製品で遊べるという今回の企画は、子供たちにとって大変魅力的なものであるだろう。ガチャガチャ本体の作り方をオープンソースで公開している点も、「誰もがアイデアを形にできるテクノロジーにアクセスできるようにする」「イノベーションの創出」を目指すファブラボ広島安芸高田とLODGEの姿勢がうかがえる。こうした体験型の取り組みが大人と子供の関心を惹きつけ、資源循環への取り組み加速につながっていくことが期待される。

※1 ファブラボ広島安芸高田:広島県安芸高田市に本拠を置くデジタルファブリケーション施設。「年齢・性別・ものづくり経験の有無に関わらず、誰もがアイデアを形にできるテクノロジーにアクセスできるようにする」をビジョンに掲げ、先端技術で地方創生に取り組んでいる

※2 オープンコラボレーションハブ「LODGE」:ヤフー株式会社が運営する、FAB機材を完備したオープンコラボレーションハブ。多彩なパートナーと協働し、公益性と先進性のあるイノベーションの創出を目指している。ヤフー本社ビル内にあるFabスペースを拠点に、デジタルファブリケーションやweb3技術など、ヤフーの既存事業の可能性を広げる技術を駆使した実験を実施している

【プレスリリース】プラスチックゴミのアップサイクルを楽しく体験できるガチャガチャをオープンソースで公開
【参照サイト】ガチャガチャを通じて楽しく体験する、プラスチックゴミの軒先アップサイクル
【参照サイト】きっかけはLODGEでの展示から。ヤフーエンジニアが制作協力、アーティストの展示がスタート!
*記事中の画像の出典:ファブラボ広島安芸高田