持続可能な開発のための世界経済人会議(以下WBCSD)および飲料業界の国際的な環境サステナビリティ向上業界団体(以下BIER)はこのほど、水サーキュラリティ測定指標(Water Circularity Metrics: 以下WCM)をリリースした。同測定指標は、企業の事業活動における水循環への移行を支援するツールとなる。

食品、飲料メーカー、アパレル、製紙、エネルギーなど水を大量に使用する産業が、どのように水使用を効率化できるか模索している。これに対して、WBCSDとBIERは2020年5月、各企業の水資源利用の削減への支援を目的として、企業の水調達、使用、および廃棄物の循環性を把握できる測定ツールの開発を発表、以来作業を進めていた。この測定ツールを使うことにより、企業がリニア型事業モデルから循環型(水の削減、再利用、リサイクル)事業モデルへの移行過程をモニターすることができる。循環型への移行は、今や企業にとって必然的なものとなっており、WCMツールは、その取り組みを支援する力強い味方だ。

エクセルを使ったこのWCMツールには、アプリケーションツールとガイダンスブックがあり、水循環における共通指標の適用を実用的な方法で説明している。また、同ツールには3つの指標があり、これらの新規開発指標はWBCSDによるサーキュラー移行指数(Circular Transition Indicator (CTI) )フレームワークの最新版に取り入れられている。CTIフレームワークは、WBCSDと26の加盟企業が共同で2年かけて開発したもので、企業のサーキュラリティを数値で測定でき、事業分野・規模・バリューチェーン・地理に関わらず使用できる。

WCMツールの機能

企業の位置する地域の水質に関するマッピングを行い、水の循環性測定に必要な特定のデータを探し測定を行う。ガイダンスブックでは、ツールの使い方やそれぞれの指標の違いについて、ステップごとに説明が行われている。水使用の最適化を図る過程で、その進捗状況を測定できるため、企業は水の利用を最小限にとどめ、環境への負荷を削減することに貢献できる。

「CTIの最新版で、水循環の測定指標の開発とそのテストを支援できたことを非常に嬉しく思います。この測定指標により、企業内の水循環の測定だけでなく、地域の分水界まで適用できる一貫した指標の設定が初めて可能となりました。我々の狙いは、企業における水循環が、水の管理責任およびサステナビリティ目標に確実に貢献するよう、このガイダンスとツールで事業者を支援することです」とWBCSDの水部門責任者のTom Williams氏は述べている。

同ツールの開発と実験は、BIERおよび WBCSDが共同で従事するグローバル水ソリューションプロジェクト(Global Water Solution project)やファクター10サーキュラーメトリックス・ワーキンググループ(Factor 10 Circular Metrics Working Group)の協力によって可能となった。

「我々の会員企業は、水の管理責任を発展させるリーダーであり続けています。今回の開発は、不足部分を補うと同時に、我々の状況に応じた意思決定、分水界における取り組み実績、および地域の水の安全性を追求するという取り組みの集大成でもあります」とBIERの事務局長Nick Martin 氏は語っている。

WBCSDとBIERは、引き続き会員企業と共に測定指標を実用し、ケーススタディとして事業セクターごとのガイダンスも発行する方針だ。

【参照記事】Water Circularity Metric: Tool and guidance to measure site-level water management
【参照記事】 WBCSD AND BIER WILL DEVELOP GUIDANCE TO MONITOR AND MEASURE WATER CIRCULARITY
【参考記事】 Circular Transition Indicators (CTI)
【参考記事】Water Circularity Metrics for Industry
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