アパレル大手H&Mは10月1日から順次、オンライン注文商品の配達袋と一部の内袋をFSC(森林管理協議会)認証を得た再利用またはリサイクル可能な紙製袋に切り替えると発表した。同取り組みは、プラスチック廃棄物削減を目的とする。

2025年までに「自社製品に使用する全容器包装をリユース・リサイクル・堆肥化可能なものに切り替える」という目標をH&Mグループ全体は掲げている。今回の取り組みは同目標に沿うもので、循環型事業に向けたH&Mの継続的な取り組みの重要な一部であるとしている。

紙製配達袋と内袋

使用する紙製配達袋および内袋について、H&Mは以下を発表した。

  • FSC認証を取得した、責任ある方法で調達されたバージンパルプ
  • 最小限の空気で商品を梱包できるため、輸送効率向上に貢献する
  • コーティングなどを施していないため、容易にリサイクルできる

今回の導入では、配達袋をプラスチック製から紙製に切り替えることに重点を置いており、注文品の大半には引き続きプラスチック製の内袋を使用する。プラスチック製の内袋は、安全衛生面・商品保護のためにアパレル業界で一般的に使用されているが、同社が掲げる上述の2025年の目標達成に向けて代替策の開発に引き続き取り組んでいく意向だ。同目標は、ニュープラスチックエコノミーグローバルコミットメント(※1)やファッション協定(※2)、およびPack4Good(※3)の目標とも一致している。

これまでもH&Mジャパンは、2018年に店頭での買物袋を紙製にするとともに有料化し、2020年度に買物袋の消費量を59%削減したとしている。オンライン購入商品の外袋を紙製に切り替える今回の取り組みをはじめ、今後も循環型ファッションを目指して取り組みを進めていく構えだ。

Pack4Goodを創設した非営利の環境団体である加Canopyは、プラスチック製容器包装と紙製容器包装について、「使い捨てプラスチックによる汚染への対処は必要だが、紙製容器包装も環境に重大な影響を及ぼす可能性があり、現実的で永続的なソリューションの実装が不可欠である」との考えを示している。世界自然保護基金(WWF)はFSC認証について、「環境保全の点から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な責任ある森林管理の原則や基準である」としている。このFSC認証を取得し、再利用またはリサイクル可能な紙を使用して廃棄物削減を目指す今回のH&Mの取り組みは、環境負荷削減に貢献するものと期待される。

※1 ニュープラスチックエコノミーグローバルコミットメント:プラスチックの循環型モデル構築を目的として、エレン・マッカーサー財団と国連環境計画(UNEP)が2018年に創設した。H&Mをはじめ、企業や政府など450以上の組織が署名している(2021年9月29日時点)
※2 ファッション協定:2019年のG7サミットで発表された、ファッション産業と主な環境分野に関わる協定。H&Mをはじめ、企業70社が署名している(2021年9月29日時点)
※3 Pack4Good:廃棄物を減らし、森林を保全しながら持続可能な容器包装ソリューションを実装することを目的として、Canopyが2019年に創設したイニシアチブ。H&Mをはじめ、企業272社が署名している(2021年9月29日時点)

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*冒頭の画像の出典:H&M