出光興産株式会社(以下、出光)はこのほど、環境エネルギー株式会社(以下、環境エネルギー社)と、出光千葉事業所(所在地:千葉県市原市)における廃プラスチックリサイクル事業の実証検討に合意した。
両社は、環境省の「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」事業として、廃プラスチックの油化リサイクル技術開発に2019年度から共同で取り組んできた。同実証では、千葉事業所内に設置する環境エネルギー社の油化装置(HiCOP技術※)を活用して廃プラスチックを油化した後、生成された混合油を同所内にある出光の精製・石油化学装置で精製・分解・再合成し、プラスチックにリサイクルする。これにより、従来技術では再生困難だった混合プラスチックのリサイクルを目指すとしている。両社は、年間1.5万トンの廃プラスチックの再資源化を目標に、国内初の(出光調べ)廃プラスチックのリサイクルチェーン構築を推進し、グループ製油所での展開も検討していく意向だ。
実証で目指す廃プラスチックのリサイクルチェーン(出典:出光興産株式会社)
近年、海洋プラスチックごみ問題や気候変動、バーゼル条約をはじめとする諸外国の廃棄物輸入規制強化などへの対応が推進されていることに加え、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が2021年3月に閣議決定されるなど、プラスチックの資源循環を一層促進する重要性や社会的需要が高まっていると出光はみている。一方国内では、年間約900万トン排出される廃プラスチックのうち再生品への利用は3割弱に留まっており、5割以上の廃プラスチックは再生利用が困難なため、サーマルリサイクルとして燃料化されているのが現状であるとしている。そんななか、リサイクルプラスチックの拡大需要に応えるため、従来にない革新的なリサイクル技術が求められていると考える。
原油精製からプラスチック製造までを一貫して行っている出光は、その強みを活かし、国内外で先進的な廃プラスチック油化によるリサイクルを実現することで、低炭素社会への貢献に積極的に取り組んでいく構えだ。
なお、同実証における両社の役割は以下のとおりだ。
出光興産株式会社(事業協同実施者):千葉事業所内土地の賃貸、生成油の引取・再精製
環境エネルギー株式会社(事業推進者):油化技術・装置開発
同実証検討の合意を発表した両社は、そのほかにも以下のような取り組みを実施している。
出光興産株式会社
- 2021年1月、山口県周南市が発足させた木質バイオマス材利活用推進協議会に参画。エネルギーの地産地消と林業振興に向け、木質バイオマス材利活用を実証・推進
- 2021年4月、北海道製油所に再生可能エネルギーで走行する超小型電気自動車を導入
環境エネルギー株式会社
- おから・茶殻・コーヒーかす・廃菌床・汚泥・おが粉など、製造工程で発生する含水率の高い副産物の食品化・飼料化・燃料化を可能にする気流乾燥機「風神」を発売
- 2020年11月、富士石油株式会社およびHiBD研究所とバイオジェット燃料の製造に関する共同研究の契約を締結
※ HiCOP(ハイコップ)技術:HiBD研究所の藤元所長(東京大学・北九州市立大学名誉教授)が発明した特許技術「触媒による接触分解方式」のこと