清涼飲料業界の業界団体である一般社団法人全国清涼飲料連合会(以下、全清飲)は4月19日、清涼飲料業界として2030年までにペットボトルの「水平リサイクル」である「ボトルtoボトル」の比率50%を目指すことを宣言した。

2018年11月、全清飲は「清涼飲料業界のプラスチック資源循環宣言」としてペットボトルの100%有効利用を目指すことを発表しており、今回の宣言はそれに沿ったものとなる。循環型社会への貢献とCO2を含む環境負荷低減に向けて、地上にすでにある資源を最大限に再活用するサーキュラー(循環)とエコロジカル(共生)・エコノミーを構築することが重要であると全清飲は考える。清涼飲料水のペットボトル商品に使用されているPET(ポリエチレンテレフタレート)は、清涼飲料水の容器として適しているだけでなく、最もリサイクルに適したプラスチック材料の一つであり、使用済みペットボトルは正しく回収されれば、元の素材と同等の品質に何度でも戻せると全清飲はみている。

(出典:一般社団法人全国清涼飲料連合会)

使用済みペットボトルを何度もペットボトルに循環させるリサイクルは「ボトルtoボトル水平リサイクル」と呼ばれ、同じ材料を資源循環させる理想のリサイクルだと全清飲は考える。「ボトルtoボトル」の推進は、現在ある資源の再活用で、化石由来資源とCO2の削減に寄与できるとしている。

「2030年ボトルtoボトル比率50%宣言」は現在の技術と経済性に基づいた宣言で、将来的には、「マテリアルリサイクル技術の進歩」と「ケミカルリサイクル(※)の確立」を通じてより高い「ボトルtoボトルリサイクル比率」を目指す意向だ。「植物・生物由来のPET素材」の開発も進め、新規の化石由来資源の使用削減を促進するとしている。これらを実現することによって、「地上の資源を最大活用してペットボトルを再生・創造するサーキュラー&エコロジカル・エコノミー」において世界を牽引していくとしている。

下のグラフは、2019年の使用済みペットボトルの地域別回収率とリサイクル率である。日本は、欧州と米国との比較で回収率・リサイクル率ともに圧倒的に高い水準にあり、ボトルtoボトル推進の基盤は確立されていると全清飲はみている。

(出典:一般社団法人全国清涼飲料連合会)

同時に全清飲は、2020年8月に東京都と開始した「ボトルtoボトル東京プロジェクト」の実証実験の結果を公表した。同実証実験は、ボトルtoボトル推進の取り組みの一環として農林水産省より「令和2年度食品産業プラスチック資源循環対策事業」として支援を受けた。以下は、全清飲が発表した概要である。

「ボトルtoボトル東京プロジェクト」の実証実験

  1. 新デザインのリサイクルステーションを使った消費者の分別に対する行動変革の検証(2021年1月~2月):機材デザインと啓発メッセージによる3分別回収(ペットボトル・キャップ・ラベル)について検証。駅や配送センターなど現状はペットボトルの回収機会が提供されていない場所で、消費者の需要の把握と新しい回収機会の場所での3分別回収について検証
  2. 自動販売機横のリサイクルボックスの異物混入対策としての「下向き投入口」デザインの検証(2020年11月)

実証実験の目的

  • ボトルtoボトルの推進には、使用済みペットボトルの確実な回収と、よりきれいな状態で集めることが重要
  • きれいな状態で集めるには、特に「消費者接点(消費者が排出する時点)」での消費者の理解と協力が必要

実証実験で使用した機材

実証実験で使用した機材は以下の3種類である。

(出典:一般社団法人全国清涼飲料連合会)

実証実験場所

実証実験は、以下の場所で実施した。

(出典:一般社団法人全国清涼飲料連合会)

結果総括

  • オフィス:適切な啓発メッセージと機材により、3分別回収(ペットボトル・キャップ・ラベル)へ進化させることに対しての消費者理解は得られることが確認された(3分別達成率81~95%)。実証実験終了後も3分別の実践を継続している事例もある
  • :通学・通勤途中で飲み終わった飲料容器の排出需要を確認。環境意識も高く、分別排出したいという意向が強い。3分別には理解が得られることを確認(3分別達成率81%)。当該需要に将来的にどのように対応するかが課題
  • 配送センター:配送センターに出入りする運転手は飲み終わった飲料容器の排出場所を求めていることを確認。3分別には理解が得られることを確認(3分別達成率70%)。当該需要に将来的にどのように対応するかが課題
  • 学校:緊急事態宣言の影響により標本データの確保に苦慮した。大学では3分別の協力も見られたが、高校では用意した啓発メッセージが十分に届いたとはいえず、今後はステークホルダー別の啓発戦略が課題となる
  • 自動販売機横の新デザインのリサイクルボックス:自動販売機横リサイクルボックスの異物低減策としての「下向き投入口」は、異物混入率減少につながった(異物混入率43%→29%)。今後、他地域で実証実験を実施し、汎用型の検討を実施していく
  • 大規模分別回収啓発メッセージ発信:三菱地所株式会社にて、「ボトルtoボトル東京プロジェクト分別啓発」ポスターのサイネージ版を丸の内ビジョンで2021年1月19日~25日まで投影

「ボトルtoボトル東京プロジェクト」協力企業・団体(五十音順、敬称略)

  • 株式会社JR東日本環境アクセス
  • 株式会社JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニー
  • センコーグループホールディングス株式会社
  • センコー株式会社平和島PDセンター
  • 公益財団法人日本サッカー協会
  • 三菱地所株式会社
  • 早稲田大学西早稲田キャンパス
  • 早稲田大学高等学院

※ ケミカルリサイクル:使用済みの資源を化学反応により組成変換したあとにリサイクルすること
【プレスリリース】清涼飲料業界 ペットボトルからペットボトルへの水平リサイクル2030年ボトルtoボトル比率50%宣言
【関連記事】サントリーと東播磨2市2町、「ボトルtoボトル リサイクル事業」に関する協定を締結
【関連記事】小田急電鉄、新宿駅でペットボトル分別回収の実証運用を実施
【関連記事】日本環境設計、BRING BOTTLEコンソーシアム設立を発表。PETボトル国内完全循環を目指す
【関連記事】EUサーキュラーエコノミー戦略に関する欧州飲料協会の見解と今後のPETボトル動向