日本と国連工業開発機関(UNIDO)は、プラスチック廃棄物の環境への流出削減を目的として、エジプトの使い捨てプラスチックバリューチェーンにおけるサーキュラーエコノミー促進を支援する交換公文を締結した。同締結を受け、日本政府はエジプトに総額3.72億円の無償資金協力をする。

交換公文は、能化正樹駐エジプト・アラブ共和国日本国特命全権大使とバセル・アル・ハティーブ国際連合工業開発機関駐エジプト代表兼地域ハブ事務所所長が署名した。調印式には、エジプトのラニア・アル・マシャート国際協力大臣、ヤスミン・フアド環境大臣、ネビーン・ガーメア貿易・産業大臣も同席した。

同プロジェクトは、中小企業への技術移転を通じてより環境に配慮した代替アプローチを提示し、既存の持続可能なプラスチックの生産・消費慣行に関する利害関係者・生産者・消費者の意識を高め、プラスチック廃棄物の環境への流出を削減する政府の取り組みを支援する。同アプローチには、より環境に配慮したプロセスの採用を促進する政策・規制・経済ツールの開発と、使い捨てプラスチックバリューチェーン内の調達およびビジネスモデルの支援が期待される。

日本が議長国を務めた2019年のG20では、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを目的とした「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が共有された。これを受け、日本は「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」を立ち上げ、世界規模で海洋プラスチックごみに取り組む効果的な行動を推進した。同イニシアティブの一環として、UNIDOは日本からの資金提供と国際協力機構(JICA)との協力により、代替材料・容器包装技術・リサイクル技術などの持続可能な技術を導入する可能性を探るべく、エジプトでプラスチックのバリューチェーン調査を実施した。同調査の完了を受け、今回の交換公文が締結された。

交換公文で合意されたプロジェクトは、包括的で持続可能な産業開発を目的として、2020年2月に開始されたUNIDOのエジプト国家パートナーシッププログラム(PCP)に貢献する。PCPは、「産業政策とガバナンス」「投資促進」「グリーン産業」「スマートシティと持続可能な工業団地」「バリューチェーン」「第4次産業革命の主流化」の6つの要素を中心に策定されている。

バッセル・アル・ハティブ氏は、「UNIDOとエジプトに対する日本の継続的な支援に感謝します。当プロジェクトは、PCPのグリーン産業の要素の一部です。この要素は、生産性を向上させ、エジプトの製造部門における環境負荷低減を目的としています。新しいプロジェクトは、規制・支援制度・企業レベルの支援・新技術・持続可能な製造のための技術向上を組み合わせて、使い捨てプラスチックの生産と消費のグリーン移行を可能にする統合的枠組みのもとで進められていきます。これは、エジプトが包括的で持続可能な産業開発を達成するのに役立ちます」と語った。

能化正樹大使は、「日本政府は1990年代から産業界と国民の協力を得て、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進してきました。日本のプラスチック製の容器包装やボトルは、現在ほとんどごみを出さない設計であることが知られています。当支援による技術移転は、エジプトの豊かな海を守る具体的な行動につながると確信しています。また、ポストコロナおよびサーキュラーエコノミー実現に向けた努力が世界中で加速しているときに、当プロジェクトがエジプトのプラスチック産業の成長に貢献することを願っています」と述べた。

ラニア・アル・マシャート国際協力大臣は、「当協定は、エジプト政府とUNIDO、および日本政府間の共同協力を示しています。サーキュラーエコノミーを促進し、民間部門と中小企業をこの分野に統合することに重点を置いて環境を保護し、エジプトの経済発展を支援します」と話した。

ヤスミン・フアド環境大臣は、「当プロジェクトは、エジプトにおける使い捨てプラスチック製品の消費削減に向けた長年の努力の末に生まれました。同部門の中小企業に適用されるべき法律や金融サービスなど、同部門は依然として多くの課題に直面しているなかで、当プロジェクトは重要です」と語った。

ネビーン・ガーメア貿易・産業大臣は、「当プロジェクトは、今後5年間で実施されるPCPの枠組みにおけるUNIDOとの戦略的協力を反映しており、産業のグリーン化という国の優先事項に沿ったものです。使い捨てプラスチックメーカーは大きな環境負荷を与えることから、政府は使い捨てプラスチックメーカーへの金融サービス提供を停止する法令を公布しました。当プロジェクトによって技術移転が提供されることになり、私たちは環境に配慮した代替製品への移行を目指すことが可能になります」と述べた。

【プレスリリース】UNIDO and Japan to support Egypt with alternative approach to single-use plastics production and consumption
【プレスリリース】エジプト・アラブ共和国に対する無償資金協力に関する交換公文の署名

【参照サイト】大阪ブルー・オーシャン・ビジョン実現のための 日本の「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」

*冒頭の画像の出典:UNIDO