新型コロナウイルス流行の影響が依然として続く2022年。プラスチックの循環化の動きやデジタル基盤づくりなど、サーキュラーエコノミーの具体化につながる取り組みが国内外で加速しました。一方で、2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻を受けたエネルギー・食料供給の不安定化、それに伴う価格高騰によって、2050年のカーボンニュートラルを見据える世界的な気候変動対策としてのサーキュラーエコノミーの先行きへの不透明感が増した一年にもなりました。
そんな中、2022年に公開したCircular Economy Hubの記事のアクセス数に基づき、読者の皆さまに関心を持って読んでいただいた3つの大きなテーマをご紹介します(2022年12月7日までのアクセス数に基づく)。
デジタル製品パスポート、新電池規則…EUによるサーキュラーエコノミー移行に向けた法整備が進む
サーキュラーエコノミーアクションプランに基づいて着々と施策を進める欧州では、欧州委員会が2022年3月、サーキュラーエコノミーアクションプランの要となる「持続可能な製品イニシアチブ」(SPI)を公表しました。SPIは▼エコデザイン規則案▼エコデザインおよびエネルギーラベル作業計画 2022-2024▼サーキュラーファッション戦略▼建設資材規制の改正案▼グリーンウォッシュを禁止するEU消費者法改正案ーーという5つの要素で構成。今回のエコデザイン規則案では、食品や医薬品などをのぞくほぼすべての物理的な製品が対象となる見込みで、その内容とともに、ライフサイクルにおける価値最大化のカギとなる「デジタル製品パスポート(DPP/Digital Product Passport)」をめぐる動向も注目されています。
ほかにも、さまざまな製品で使われる電池の製造過程におけるカーボンフットプリント開示や二次利用、再生材利用の義務化などを盛り込んだ新たな電池規制案が、欧州議会と閣僚理事会での可決に向けた最終段階に入っています。サステナビリティ開示を強化・拡大させる企業持続可能性報告指令(CSRD)も欧州理事会で最終承認されました。これらはいずれも日本を含めて域外のビジネスにも大きく影響するため、編集部でも以下の記事を公開しました。2023年も注目度の高いトピックとなりそうですので、引き続きウォッチしていきます。
- 【連載① 欧州委が発表した「持続可能な製品イニシアチブ」の目的と課題、日本への示唆】持続可能な製品イニシアチブ、5つの目的
- 【連載② 欧州委が発表した「持続可能な製品イニシアチブ」。その意図と課題、日本への示唆】デジタル製品パスポートが意味すること
- 【連載③ 欧州委が発表した「持続可能な製品イニシアチブ」の目的と課題、日本への示唆】一連のパッケージやデジタル製品パスポートが与える影響
- EU新電池規則案が目指すもの。業界内から懸念の声も
- 企業持続可能性報告指令、情報開示を義務化。非EU企業も一部対象
家具、ファッション、空調にも、さまざまな領域へ広がるPaaS
モノ(製品)単体を販売するのではなく、モノ(製品)を通じて得られるコト(サービスやその体験)を、企業が顧客に提供するビジネスモデルであるPaaS(Product as a Service/製品のサービス化)。さらにその目的の一つにサーキュラーエコノミーを据えている同ビジネスモデルは、サーキュラーエコノミー移行への鍵となると言われて久しいといえます。
既存のサブスクリプションビジネスがその目的としてサーキュラーエコノミーを再定義することや、投資家からの調達などによるビジネス拡大などが起こりつつあります。一方で、持続可能なビジネスという観点ではまだまだ模索中とも言え、ケースバイケースで最適な循環型ビジネスモデルが考えられていく必要があるとも言えます。
- 【循環型PaaS特集#3】ライフスタイル変革を後押し。家具家電のサブスクを提供するCLASのサーキュラーエコノミー
- 【循環型PaaS特集#4】ファッションレンタルサービスairCloset、循環性を向上させる取り組みとは
- 【循環型PaaS特集 #5】 エアアズアサービス、空調機のサービス化によるサーキュラーエコノミー移行へ
脱プラスチック、循環の取り組みが加速~プラ新法施行でレジ袋など辞退広がる
プラスチックごみの削減と再生利用の拡大を目的としたプラスチック資源循環促進法(プラ新法)が2022年4月に施行されました。自治体に対して分別回収の努力義務を課すとともに、事業者にはプラ製品の削減を求めており、飲食店や小売店などに対してプラ製スプーンなど12種類の有料化や再利用などの対策を義務づけています。大手企業を中心とした対応や、プラスチックの資源循環に向けた課題についてまとめた一連の記事が読まれました。
- 【プラ新法特集(上)】4月からプラスチック新法スタート、主な企業の取り組みと考え方は?
- 【プラ新法特集(中)】設計・製造の段階から循環を意識する ~プラ新法は使用抑制への一里塚となるか?~
- 【プラ新法特集(下)】プラスチック資源循環の最後のとりで、回収・再資源化の行方は?
プラ新法施行の結果、レジ袋の有料化などでマイバッグやマイボトルの持参、スプーンの辞退など具体的な行動を行うようになった人が約6割となり、法施行以前から取り組んでいた層を含めると約9割の人が対象プラ製品の使用を辞退するようになりました(内閣府「プラスチックごみ問題に関する世論調査」より)。今後は循環型デザインの発展に加え、分別の厳密化や回収ルートの多元化、有料化の対象品目の拡大など、継続した取り組みが求められるでしょう。
プラ削減の加速につながる法制化などの動きは、海外でも広がっています。
- 英国が新たに導入した「プラスチック税」その目的と効果とは?
- 米カリフォルニア州も使い捨てプラスチック容器包装を禁止へ
- ドイツ、使い捨てプラ基金法案を閣議決定。拡大生産者責任の導入に経済界は反発
- 中国はプラスチック循環促進へ何をすべきか?~英エレンマッカーサー財団が初レポート
プラ使用そのものの削減だけでなく、これまで難しかった使用済みプラ製品のリサイクル技術開発と実装をめぐる動きも目立ってきました。2023年以降の注目ポイントの一つでもあるでしょう。
いかがでしたでしょうか?今回はアクセス数に応じて上記3点に絞ってお届けいたしましたが、国際的な物価高や国際情勢が不透明な中において、自律性を確立するという観点からもサーキュラーエコノミーはますます加速すると考えられます。
次回2022年12月のCircularXは、上記のトピックを含めて2022年のサーキュラーエコノミーをめぐる国内外の主な動きを振り返るとともに、2023年の注目ポイントやトピックをご紹介します。サーキュラーエコノミービジネス推進に欠かせない情報が得られる回となりますので、ぜひご参加ください。