欧州委員会は2022年3月30日、サーキュラーエコノミーアクションプランの要となる、「持続可能な製品イニシアチブ」案を公表した。本記事では、同イニシアチブの概要に加え、同案がサーキュラーエコノミーにおいて意味すること、実装にあたっての課題点、日本を含めた域外への影響などをシリーズで考察する。
前回の連載①では、同イニシアチブ全体の概要と5つの目的について確認した。今回は、エコデザイン規則案でも要であると同時に議論の対象となっている「デジタル製品パスポート(DPP/Digital Product Passport)」について見ていく。
1. デジタル製品パスポートとは?
今回、欧州委が提案しているDPPとは、持続可能性・循環性に関するデジタル情報を製品などに紐付けて示すデータセットの総称である。DPPは説明書などの既存の非デジタル情報を置き換えるものではなく、補完する役割を担うものであると原案で位置づけられている。欧州委は、エコデザイン規則における対象製品群のすべてにDPPを適用させたい考えだ。
なお、同委は、「DPPのコンセプトは、すべてのステークホルダーにおいて概ね賛成を得られている」と評価しており、DPPがサーキュラーエコノミー移行の一翼を担うものと位置づけている。
情報の種類として、製造元・原材料・部品に関する情報・耐久性・修理可能性・リサイクル性・再生材・廃棄関連・化学物質に関する情報などが挙げられているが、分野ごとの詳細は今後詰められる。
なお、EU電池規則案については、欧州議会と欧州理事会が修正案をめぐり最終調整に入っている(本記事執筆6月8日時点)。このなかで位置づけられているバッテリー分野におけるデジタル製品パスポート(バッテリーパスポート)をめぐる議論の過程は、今回提案されているDPPの先行動向として参照されている。
2. DPPに期待される主な4つの役割
DPPに期待される効果は、主に下記の4つである。
1. サプライチェーン内の循環性向上
メーカー・輸出入業者・修理業者・リサイクラーなど、サプライチェーン内のステークホルダーが扱う製品の循環性向上(再生材利用への誘導、耐久性・リサイクル率・製造効率・修理性・リマニュファクチュアリング性の向上など)に貢献する。製品ライフサイクル全体で循環性向上に資する情報として利用されることをねらう。情報公開は、循環性の高い製品製造に向けた促進剤ともなる。
この記事は、Circular Economy Hub 会員専用記事となります。