三菱ケミカル株式会社はこのほど、日本国内で廃棄される漁網を再利用した再生ナイロン樹脂を混合した新しいナイロン糸「KILAVIS™RC(キラビス™アールシー)」を開発し量産体制を整えたと発表した。

KILAVIS™RCの特徴について、同社は以下のように発表した。

  • KILAVIS™RCは、廃漁網から再生したナイロン樹脂「REAMIDE®(リアミド)」を同社のナイロン糸・キラビス™に特殊紡糸技術を用いて混合した新しいナイロン糸である
  • 国内生産のため安定供給でき、原料段階で着色することで染色工程が不要となるため排水の問題が解消され、使用する水・電気などのエネルギーを削減できる
  • ナイロン繊維の特長である優れた摩擦堅牢度を持ち、長繊維であるため遊び毛の発生も少なく、カーペットとして使用した場合の掃除も容易である

(出典:三菱ケミカル株式会社)

同社は、日本で発生した廃棄物を日本国内で再利用する地産地消を促進し、製品のアップサイクルとCO2排出量削減に貢献していきたい考えだ。

三菱ケミカルホールディングスグループは、中長期経営基本戦略「KAITEKI Vision 30」を掲げている。三菱ケミカル株式会社は、サーキュラーエコノミーの推進をKAITEKI※実現の主要要素と位置付け、製品などのリサイクルはその重要な取り組みの一つと考えている。今後も、自社だけでなく顧客における使用時のリサイクルにも配慮した製品設計を進め、SDGs達成や持続可能な社会の実現に貢献していく構えだ。

環境省が2016年度に実施した漂着ごみのモニタリング調査によると、海洋漂着プラスチックごみの種類別割合の40%以上が漁網・ロープである。この廃棄される漁網を活用するべく、リファインバース株式会社は廃漁網などを原料とするリアミドの発売を2019年に開始した。KILAVIS™RCには、このリアミドが使用されている。2021年1月には、服飾資材商社のモリト株式会社がリアミドでつくった服飾資材を展開すると発表した。また、公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)とテラサイクルジャパン合同会社が2021年、使用済み漁網の回収・リサイクルを促進するための基本合意を締結するなど、廃漁網の再利用に向けた取り組みが進められている。

こうしたなか、国内最大の大手総合化学メーカーである三菱ケミカル株式会社が廃漁網を再利用した樹脂を用いたナイロン糸を販売開始することで、廃漁網の再利用が促進され認知度も高まっていくことが期待される。国内生産による安定供給・地産地消・CO2排出量削減も大きな利点となるだろう。

※ KAITEKI:三菱ケミカルホールディングスグループ独自のコンセプトで、「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」を表す

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