Yper株式会社(以下、Yper)は、伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)が展開する循環型素材ブランド「RENU®︎(レニュー)」の再生ポリエステル素材を利用して、「置き配バッグ『OKIPPA(オキッパ)』」の製造を開始し、年内に順次提供する予定であることを発表した。新しいOKIPPAのコンセプトを 「エシカル」で「サステナブル」と定め、再配達削減と循環型経済を同時に推進する。

手のひらサイズに折り畳めるOKIPPAは非対面で荷物の受け取りができ、再配達受け取りが不要な簡易宅配ボックスで、2018年9月の発売以来、全国15万世帯以上が利用している(2020年10月末時点)。特に最近は、新型コロナウイルス感染症対策としてのEC利用率の増加や非対面での宅配物受取りニーズにより、導入が増加している。

現在のOKIPPAは、メインとなるバッグ部分がポリエステル素材100%でつくられている。一方、RENU®️は衣料品を生産する際に発生する端切れやポリエステル素材の使用済衣料品などを原料とする再生ポリエステル素材を使用した再生素材だ。伊藤忠商事がファッション業界の廃棄問題を解決し、循環型経済の実現を目的として2019年春に開始したプロジェクトの第一弾である。RENU®️を使ってOKIPPAを製造することで、石油などの化石燃料の使用量と衣料廃棄量の削減に同時に貢献する。同社は、RENU®️を使用したOKIPPA15万個で得られる想定効果(RENU®️30%配合の場合)を下記の通り試算している。

数字で見るRENU®️素材OKIPPA15万個でできること(Yper提供)

再配達削減効果
  • CO2排出削減量:790トン/年
  • 再配達に費やす労働時間削減:146万時間/年
  • 新規荷物受入れに代替可能な人件費:22億円/年(時給1,500円換算)
再生素材利用効果
  • 廃棄物再利用量:63,690枚(Tシャツ1枚200g換算)
  • 削減できる水の量:ペットボトル500ml 23,160本

さらに、重要な2つの工程がOKIPPAの製品ライフサイクルに導入されるため、RENU®️を採用することでYperは循環型経済を促進する。一つは、化石燃料の使用量と衣料廃棄物の削減で、もう一つは利用後のOKIPPAの廃棄を削減して再利用を促進することである。現在でもOKIPPAバッグの破損やバッグが不要になった場合はユーザーから製品を回収しているが、今後は回収品を再生紙に戻してOKIPPA付属品として再利用できるようにする。

RENU®️素材、OKIPPA製造の循環イメージ(Yper提供)

2018年9月以来Yperは、宅配の再配達削減を目的としてOKIPPAの普及に努めてきた。2020年初頭に大阪府八尾市と共同で行った実証実験では、OKIPPAでの高い再配達率削減による環境負荷低減効果も実証されており、実験で対応した約95%の配送員がOKIPPAの普及を望んだ。また、再配達率の減少は多くの現場配送員にとっての適正賃金の支払いや心身の負荷軽減といった、労働環境の改善にもつながることがわかっている。

OKIPPAは、Yperが世界3大デザイン賞を受賞したエコバッグ「Shupatto」を開発した生活雑貨メーカー株式会社マーナと共同開発した。耐荷重は13kgで玄関ドアノブに簡単に取り付けられ、サイズは使用時が約70cm×66cm(容量57L)で、折り畳むと約13cm四方(厚さ5cm)のコンパクトな手の平サイズになる。盗難や個人情報漏洩対策として、2種の鍵(ドアノブ専用ロックとシリンダー式南京錠の内鍵)を採用しており、専用アプリを使用すると盗難補償保険に加入でき、荷物通知も受け取れる。

伊藤忠商事のファッションアパレル第三部・繊維原料課は、「RENUはサプライチェーンから生み出される廃棄繊維・使用済衣料品を繊維製品へリサイクルすることで、サーキュラーエコノミーを実現し、環境への負荷が高いとされている繊維産業を変えることを目指しています。今回の取り組みでは、再配達の削減という社会課題の解決によってCO2排出削減を達成するOKIPPAに、繊維産業における廃棄問題の解決を目指すRENUを採用していただけることで、モノだけではなくサービスを通して、消費者の方々により身近に社会課題の解決への貢献を実感していただけると考えております。将来的には使用済OKIPPAバッグの回収・再利用が実現できるよう進めて参ります」と語っている。

また、Yperの代表取締役である内山智晴氏は、「社会課題である再配達問題をより早く解決するためには、物流や不動産業界からの活動にとどまらず、より多くの方が自然と課題解決に参画できる仕組みが重要です。今回の取り組みが、OKIPPAサービスを介した社会への価値提供をより多様化し、より多くの事業者様及びユーザー様とサーキュラーエコノミーの推進をできる社会環境作りに繋がることを願っています」と述べている。

Yperは今後、創業以来のビジョンである再配達率を5%までに削減することを目指して、さまざまな企業と共同で事業を進めていく意向だ。

【プレスリリース】環境配慮型再生素材RENUでOKIPPAバッグ製造開始「エシカル&サステナブルバッグ」でサーキュラーエコノミー構築