シンクタンクでありメディア・ブランディング創造を手がける英エコノミスト・インパクトと日本財団が共同で実施する海洋環境イニシアチブのBack to Blueはこのほど、Plastic Management Index(プラスチック管理指標)の報告書第1版を発表した。

世界ではプラスチックの生産・使用量が増加しており、プラスチック製品のライフサイクル全体を網羅する新しい枠組みが必要であるとBack to Blueは考える。同報告書は、プラスチック使用に関する世界的懸念の高まりに注目し、持続可能な管理方法を明らかにすることを目的に作成された。

同報告書は、5大陸25カ国を対象にプラスチックの不適切な管理を最小限に抑え、資源としてのプラスチックの適切な生産および利用を推進する各国の能力を評価した。「ガバナンス体制」「管理・運営能力」「主要ステークホルダーの関与」の3分野で構成され、12の指標と44の副指標で測定された。3分野の詳細と対象25カ国は、以下である。

3分野

  • ガバナンス体制:効果的なプラスチック管理に向けた各国の法規制・インセンティブを評価
  • 管理・運営能力:廃プラスチックを対象とした各国の監視・収集・分別・リサイクル能力と、その強化に向けた投資を評価
  • 主要ステークホルダーの関与:各国政府による国内外でのプラスチック汚染対策、民間企業・消費者による取り組みを評価

対象25カ国

アルゼンチン、エジプト、インド、マレーシア、スウェーデン、オーストラリア、フィンランド、インドネシア、メキシコ、タイ、ブラジル、フランス、日本、ナイジェリア、英国、チリ、ドイツ、ヨルダン、ロシア、米国、中国、ガーナ、ケニア、南アフリカ、ベトナム

総合および3分野における順位を同報告書は以下のように公表した。

  • 総合:ドイツ(1位)、日本(2位)、フランス(3位)、英国(4位)、米国(5位)
  • ガバナンス体制:ドイツ(1位)、日本(2位)、フランス(3位)、米国(4位)、スウェーデン(5位)
  • 管理・運営能力:英国(1位)、日本(2位)、ドイツ(3位)、米国(4位)、フランス(5位)
  • ステークホルダーの関与:ドイツ(1位)、マレーシア(2位)、日本(3位)、オーストラリア(4位)、チリ(5位)

国および地域について同報告書が示した主な考察は、下記である。

  • ドイツ:効果的なリサイクル・ プログラムが存在する。政府・産業界の連携を通じたプラスチック循環の仕組みを構築し、世界を牽引している
  • 欧州:プラスチック管理についてのEUの積極的な活動と、イノベーションや研究への資金提供により、総合ランキングで首位になった
  • アジア:世界のプラスチック生産量の半分を生産しているが、欧州に比べて取り組みが遅れている
  • 低中所得国:全体的に苦戦している国が多いが、ベトナム(11位)とガーナ(15位)は圧倒的に優れている
  • 日本:アジア太平洋地域の他国と比較し非常に優れているが、「ステークホルダーの関与」では3位となった。その要因は、「消費者の責任ある行動と認識」の副分野で24位、「プラスチック廃棄物の削減と責任あるプラスチックの使用を促進するための民間企業の取り組み(特にビジネス慣行)」で16位となったことだ。「管理・運営能力」については、効率的な収集・分別面で7位となったため評価が下がった

同報告書は、国内の取り組みを推進することが国際協定への関与以上に重要であると結論付けた。プラスチック管理の強化には教育プログラムの整備など、国内における効果的政策・プログラムの実施が不可欠だが、多くの国が課題を抱えているとしている。日本とドイツはこの点が高く評価された。同時に、プラスチックの国際的管理体制においてはさまざまな規制・協定が乱立しており、問題解決を困難にしているとの見解を示した。新たな枠組みの是非と具体的な進め方については、2022年2月に開催される国連環境総会で議論される予定だ。世界自然保護基金(WWF)を含む3組織はプラスチック汚染に関する国連条約制定を呼びかけており、研究者らもプラスチックのライフサイクル全体における国際的合意を呼びかけている。

各国がそれぞれの課題解決に向けて取り組みを実施することが望まれるとともに、プラスチックの国際的な新たな枠組みについての国連環境総会での議論が注目される。

【プレスリリース】Plastics Management Indexで日本が2位、ドイツがトップに
【参照レポート】Plastics Management Index
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