欧州委員会と各国消費者当局は1月28日、オンライン市場におけるEU消費者法の違反事例を確認するため、毎年実施されるウェブサイトのスクリーニング結果を発表した。今年は初めて、企業が実際よりも環境のために多くのことを行っているように見せかける「グリーンウォッシング」に焦点を当てたスクリーニングが実施され、アパレル・化粧品・家電製品などさまざまな分野におけるオンライン上のエコに関する主張について解析した。
消費者当局は、スクリーニングの対象となったサイトの42%において、誇張された・正しくない・或いは見せかけのエコを主張しており、EU規則下における不公正な商慣行と見なされるケースを指摘した。消費者が環境に配慮された製品を購入する傾向が強まるにつれ「グリーンウォッシング」が増加している。
司法長官であるDidier Reynders氏は次のように述べている。「消費者はこれまで以上に環境に配慮した生活を望んでおり、それを可能にする製品やサービスを提供している企業は賞賛に値します。一方で、曖昧であったり、正しくなかったり、誇張されたりしたエコを謳い消費者の目をごまかそうとする業者がいることも事実です。委員会は、消費者を環境負荷のない社会に移行させ、グリーンウォッシングと戦っていきます。これは、昨年秋に採択された、New Consumer Agendaの優先事項でもあるのです」
調査結果
スクリーニングにおいて最初に広範囲に審査し、そこで発見した344のエコに関する疑わしい主張をより詳細に調査した結果、以下のような事象が指摘された。
- 半分以上のケースにおいて、エコに関する主張が正しいかどうかを消費者が判断する材料を、業者が提供していなかった
- 表現の37%には、「環境を意識している」「環境に優しい」「持続可能な」など、製品が環境に悪影響を及ぼさないかのような根拠のない印象を消費者に与えようとする、漠然とした記述が含まれていた
- 59%において、エコ主張を裏付ける証拠に簡単にアクセスできる環境を、業者が用意していなかった
これらの要因を考慮した全体的な評価では、42%のケースにおいて、主張が正しくない、あるいは消費者の目をあざむく可能性があり、不公正な取引慣行に関するEU指令(UCPD)に基づく不公正な商慣習に相当する可能性が指摘されている。
次のステップ
各国当局は、検出された問題を関係会社に対して指摘し、必要に応じて修正するよう指示する。 このスクリーニングの結果は、New Consumer Agendaで発表されたグリーン移行に向けた消費者政策を後押しする新しい法案の土台となる評価に反映される。
背景
Sweepと呼ばれるこのスクリーニングは、特定の分野におけるEU消費者法違反を確認するため、さまざまなウェブサイトで同時に実行される審査である。今年は、環境に優しい製品を販売していると主張する企業にその焦点が当てられた。
Sweepは欧州委管轄のもと、Consumer Protection Cooperation Network(CPC)に集められたEUの国家執行当局によって毎年実施される。(過去のSweep関連情報)
今年は、ヨーロッパの消費者執行当局だけでなく、消費者保護および執行のための国際ネットワーク(ICPEN)のもとで世界中でも実施され、同様の傾向を示す結果となった。
「グリーンウォッシング」にフォーカスしたウェブサイトのスクリーニングは、消費者がより持続可能な選択をできるよう、欧州委が実施するイニシアチブの1つである。他には、Reynders氏が2021年1月25日に開始したグリーン消費誓約と、製品の持続可能性に関してよりよい情報を消費者に提供し「グリーンウォッシング」から消費者を守るための法案や、「環境フットプリント」プロジェクトに基づく環境に関する主張の実証に関する法案がそれに続く。
「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略の一環として欧州委は、消費者が正しい情報に基づいて健康的で持続可能な食品を選択できるよう、栄養表示の統一規格を提案する。家電に関しては、EUエネルギーラベルにより製品のエネルギー効率が明確かつ簡単に表示されているため、消費者はEU全体の温室効果ガス排出量削減と家庭の電気代節約を両立することが簡単にできる。
最近の消費者市場モニタリング調査によると、消費者の78%が、家電製品を購入する際、環境への影響度を重要視すると答えている。
【プレスリリース】Screening of websites
【参照】New Consumer Agenda: European Commission to empower consumers to become the driver of transition
【参照】Unfair commercial practices directive
【参照】Consumer Protection Cooperation Network
【参照】Sweeps
【参照】Global sweep finds 40% of firms’ green claims could be misleading
【参照】Consumer policy – strengthening the role of consumers in the green transition
【参照】Environmental performance of products & businesses – substantiating claims
【参照】Market monitoring
【参照記事】欧州委員会、新消費者アジェンダを発表。持続可能な製品情報のアクセス性確保へ
【参照記事】欧州委、「Farm to Fork(農場から食卓まで)」戦略を公表。持続可能な食料システム目指す | Circular Economy Hub – サーキュラーエコノミーハブ (cehub.jp)