一般社団法人シェアリングエコノミー協会はこのほど、日本のシェアリングサービスに関する市場調査を株式会社情報通信総合研究所と共同実施した。
同調査によると、2021年度の日本におけるシェアリングエコノミーの市場規模は2兆4,198億円で、2030年度には14兆2,799億円に拡大する。市場規模と課題解決のシナリオについて、両組織は以下のように定義した。
市場規模
- 対象サービスは、インターネット上で資産やスキルの提供者と利用者を結びつけるもの、利用したいときにすぐ取引が成立するもの
- 市場規模は資産・サービス提供者と利用者の間の取引金額。市場規模の範囲は、「空間のシェア(民泊やオフィスなど)」「モノの売買・レンタル、移動(車や料理運搬、買物代行など)」「スキル(家事や育児、記事執筆など)」「お金(必要⾦額が集まった場合の商品開発や寄付など)」
課題解決シナリオ
シェアリングエコノミーの成長には、認知度が低い点や個人が提供するサービス利用への不安などの課題がある。そのため、サービス提供側・利用側両方について、成長の課題が解決する状況を想定した場合の市場規模を算出した。市場規模予測(出典:一般社団法人シェアリングエコノミー協会)
2021年度と2030年度の市場規模の予測と考察について、同調査は以下を明らかにした。
2021年度市場規模
- 2兆4,198億円
- 2020年12月に発表した前回調査の予測通り、順調に成長している(2020年度の市場規模は2兆1,004億円)
2030年度市場規模
- 基本シナリオ:現状の速度で成長した場合は、7兆6,455億円(2020年~2021年のドラッグストアと同程度)
- 課題解決シナリオ:新型コロナウイルス感染症による不安・認知度が低い点などの課題が解決した場合は、2030年度は14兆2,799億円(2020年のコンビニ売上の1.2倍以上) に拡大。将来予測に大きな変化はなく、2030年度予測値は前回調査における予測値(14兆1,526億円)を若干上回った
既存産業への経済波及効果推計結果については、以下を公表した。
- シェアワーカー(シェアリングエコノミーのプラットフォームを通じた働き方をしている個人)の収入から既存産業への経済波及効果は、2021年度1兆5,743億円
- 2030年度は基本シナリオで4兆8,813億円、課題解決シナリオで9兆4,236億円となり、シェアリングエコノミーの成長は既存産業へも好影響を与える
両組織は2021年11月、日本のシェアリングサービスに関する調査結果を公表した。それによると、シェアリングエコノミーによって新品購⼊とごみの量が減少すると感じている人が4⼈に1⼈以上いること、シェアリングエコノミー利用者の方が非利用者よりも幸福度が高いことなどがわかった。
このように、今後10年間で約6倍の成長が期待され、幸福度にも貢献すると考えられているシェアリングエコノミーだが、ユーザーの利便性と環境負荷・経済性との均衡や製品ユーザーのプライバシーに関する課題なども指摘されている。さまざまな課題の包摂的な解決を目指しつつ、シェアリングエコノミーを含むサーキュラーエコノミーへと移行していくことが望まれる。
【プレスリリース】2021年、日本のシェアリングエコノミー市場規模が、過去最高の2兆4,198億円を記録。2030年度には「14兆2,799億円」に拡大予測。
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