凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)とENEOS株式会社(以下、ENEOS)は6月14日、エネルギーの低炭素化と循環型社会の実現に向け、古紙を原料としたバイオエタノール事業の立上げについての共同検討に合意し協議を開始したことを発表した。
同事業の特徴は、通常の再生紙だけでなく、リサイクルが難しいとされる防水加工された紙やノンカーボン紙などの難再生古紙もバイオエタノールの原料として使用するとしていることだ。古紙を原料としたエタノール連続生産プロセスが実現すれば前例のない取り組みになると両社はみている。
古紙などの非可食セルロース由来のバイオエタノールを原料とすることで、CO2排出量削減効果の向上・食料との競合回避・安定した原料確保が期待できると両社は考える。その理由は以下である。バイオエタノールを原料とするバイオ燃料は植物などから製造されるため、原料製造から燃料燃焼までのライフサイクルアセスメント(LCA)でのCO2排出量は少ない。一方で、サトウキビやトウモロコシなどの可食原料を由来とするバイオエタノール製造では、食料との競合や調達が天候に左右されるといった課題がある。両社は、古紙を原料とすることでこの課題を解決できるとしている。
ENEOSが開発したエタノール連続生産プロセスも同事業で活用する。従来のバイオエタノール製造では、全製造工程が完了した際にすべての生成物を製造窯から取り出し新たに原料を投入していたが、同事業では製造工程で原料をつぎ足しながらエタノールを抽出し、連続的に製造する予定だ。これにより、製造効率の向上と高いコスト競争力を実現できると両社は考える。
同事業では、小規模な検証試験によるデータなどをもとに採算性や環境性能を評価し、2027年以降の事業化を目指す。将来的には自治体からの古紙回収も検討し、製造したバイオエタノールはバイオガソリン・バイオジェット燃料・バイオケミカルの原料として販売することを検討していく考えだ。両社は古紙を原料としたバイオエタノールの製造に取り組むことで、低炭素・循環型社会の実現に貢献していく構えだ。
本事業の概要として、両社は詳細を以下のとおりに発表した。
原料
- 凸版印刷グループの工場・自治体・企業から排出される難再生古紙やシュレッダー紙
- 将来的にはセルロース系廃棄物の使用も検討
製造プロセス
- 凸版印刷が古紙を前処理する
- ENEOSが開発したセルロース系エタノール製造技術(※)を活用し、バイオエタノールを製造する
- 副生成物のCO2を分離・回収して有効活用する
最終製品
バイオガソリン・バイオジェット燃料・バイオケミカル原料
両社の役割
凸版印刷
- 幅広い顧客とのネットワークを通じ、難再生古紙を含めたセルロース系廃棄物の調達ルートを構築
- 活用可能なセルロース資源をバイオエタノール製造に適した原料にする前処理プロセスを開発
ENEOS
- 効率的な次世代バイオエタノール製造プロセスを開発
- これらの製品を活用した環境配慮型商品を開発
今後の予定
2027年度以降の事業化
両社がこれまで実施してきた環境への取り組み例は、以下のとおりだ。
凸版印刷
2021年1月、地球環境課題への長期的な取り組み方針を定めた「トッパングループ環境ビジョン2050」を策定し、脱炭素社会・資源循環型社会の実現に貢献する取り組みを進めている。浴室でも使える紙パックを2021年4月から生産している。
ENEOS
グループの2040年長期ビジョンで自社排出分CO2のカーボンニュートラルを掲げており、エネルギーの低炭素化に向けて研究開発に取り組んでいる。生物多様性ガイドラインを定め、製油所内緑地の管理強化および充実した活用の促進・森林保全活動など、生物多様性保全を目指した活動も実施している。
※ ENEOSが開発したセルロース系エタノール製造技術:ENEOSと王子ホールディングス株式会社が共同実施した、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「セルロース系エタノール生産システム総合開発実証事業」の成果を含む
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【参照サイト】ENEOS株式会社