持続可能な開発のための世界経済人会議(WBSCD)は2月4日、建設業界における持続可能な慣行を確立する上でデジタル化によるデジタルトランスフォーメーション(DX)が担う重要な役割を実証するレポートを発表した。デジタル技術はサステナビリティのパフォーマンスを改善し、新しいプロセス・サービス・市場の開発に役立つというメリットがあるにもかかわらず、この分野では新たなデジタル技術を採用するのに時間を要している。今回発表されたレポート「建設環境のデジタル化:より持続可能な建設業界に向けて」では、DXを加速するため、企業および業界レベルで取り組むべき推奨事項が提案されている。

二酸化炭素排出の主な要因のひとつである建設業界は、気候危機の悪化を防ぐため、持続可能な状態に転換していく必要がある。今後数十年のうちに、世界の人口増加と都市化による都市インフラの大規模な拡大が予想され、持続可能な慣行は事業を確実に継続していくための必須条件となる。

WBCSDは、設計・エンジニアリング・管理を行うオランダに本拠を置くコンサルティング会社Arcadisと共同で、他の14の企業と1つの財団が参加を得て今回のレポートを作成した。同レポートでは、デジタル化がバリューチェーン全体を支え、二酸化炭素排出量と資源消費、およびコストを削減しながら生産性と透明性を向上させることで、建設業界が将来も有効に機能することにつながると示されている。デジタル化により、企業内および企業間での大規模で複雑なデータセットの収集・処理・分析・開示が可能になり、高い価値を引き出すことになる。英国だけでも、データのやりとりの増加は、インフラ部門において年間70億ポンドを追加で生み出す可能性があるという。

レポートでは、すでにデジタル化に着手している企業へのインタビューに基づき、建設業界が直面するデジタル化に関連する課題と解決方法、成功事例から得られた洞察が提供されている。また、デジタル化に伴い持続可能な慣行を統合させるために企業やセクターが実行できる手順も示している。初期段階においては、移行のためには文化を変えることが必要であり、コストよりも価値が強調され、短期的な目標よりも長期的な改善が優先される。レポートはまた、建設業界における改革・協業・持続可能な成果をさらに促進するために、データに基づいたアプローチ・統合された戦略・調和、そして調達に関する規制改革を採用することを提案している。

さらに、建設業界の変革プロジェクトの一環として、建設業界全体で共通言語の使用を推進するためのデジタル化の役割や、急速に進化していく技術の舵を取るにあたり、WBCSDが将来担う役割についても報告されている。

WBCSDの持続可能な建設と都市部門のディレクターであるRoland Hunzike氏は、次のように述べている。「デジタル化により、効率を高め、ある建設段階から次の建設段階に知見を移転するために、協調して行動することが可能になります。この可能性を生かすための重要なステップと、プロジェクト主導の性質に起因する、変化に対する強い抵抗を企業が乗り越える必要性を、このレポートは示しています。フロントランナーは、経済合理性・運用効率・サステナビリティにおける利点のすべてを考慮して、デジタル化がもたらすメリットを強調する必要があるのです」

また、ArcadisのグローバルサステナブルソリューションリーダーであるNiels van Geenhuizen氏は次のように述べている。「私たちは共同体として、サステナビリティとデジタル化の長期的な価値創造にこれまで以上にフォーカスし、バリューチェーンに沿った持続可能な慣行・ソリューション・コラボレーションを奨励するべく建設部門における文化を変えていく必要があります。 デジタル化と、データに基づいたプロセスと実践をうまく取り入れることで、サステナビリティの実現に近づきます」

さらに、WBCSD North AmericaのエグゼクティブディレクターであるBill Sisson氏は、建設環境におけるWBCSDのグローバルな取り組みを監督する立場として、次のように述べている。「建設業界におけるDXはまだ初期段階です。 循環性を高め業界全体の脱炭素化を効果的に実現するべくバリューチェーンを次のレベルに引き上げるには、すべての関係者による協力的な取り組みが必要です。 新しいWBCSDレポートは、企業がその対話を始めるのに役立ちます」

【参照記事】New WBCSD report shows how the construction sector can benefit from digital technology – World Business Council for Sustainable Development (WBCSD)