アメリカに本拠を置く繊維開発スタートアップWerewoolが、自然界に存在するタンパク質を使って、美しく高品質な生分解性繊維を開発・生産している。

Werewoolが使用するのはサンゴやクラゲ、そして貝や牛乳だ。これらに含まれるタンパク質をDNAレベルで布地に組み込んでつくられた繊維は、消費者の要求を満たす質の高い色と伸縮性・通気性・防水性を備える。

繊維を再設計して、循環型ファッション産業をサポートすることがWerewoolの目標だ。この天然の染料や蛍光は、タンパク質に当たる光で生成されるという。その色はタンパク質の構造によって変わる。現在、ファッション産業では染色や仕上げのプロセスにおいて、さまざまな化学物質が使用されることが多いが、Werewoolは上記タンパク質を使って染料に使うため、加工工程での水質汚染を防ぐ。また、Werewoolの繊維は循環型ライフサイクルで作られており、使用後に栄養素として自然に戻せるため、マイクロプラスチックの発生を防止できる。

Werewoolは、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のうち、以下の目標に取り組みながら生分解性繊維の開発を行っているという。

  • 目標6:すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
  • 目標12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
  • 目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
  • 目標14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

Werewool解説動画

さらにWerewoolは2020年4月、ファッションの循環を目指す非営利財団であるH&Mファウンデーションが主催するGlobal Change Award 2020を受賞した。これまで、同賞受賞後に実用化された製品も多く、Werewoolにも期待が高まる。「この賞を受賞させていただくことで、実用化しスケールアップを加速させていくでしょう」と共同創業者のChui-Lian Lee氏は述べた。現在も開発が続いているが、試作品はできているという。Werewoolが自然界から生み出した、サーキュラーエコノミーを推進して環境への負荷を最小限に抑える新しい繊維の可能性に着目していきたい。

【参照サイト】Werewool
【参照サイト】Global Change Award