英スコットランドで、ウイスキーの副産物から持続可能な利用について研究する新プロジェクトがこのほど開始された。同プロジェクトは、生物工学イノベーションセンター(IBioIC)が主導し、ゼロ・ウェイスト・スコットランドが共同出資。さらに、研究機関であるスコッチウイスキー研究所(SWRI)からの追加支援を受けている。

Horizon Proteins社・MiAlgae社・BioPower Technologies社のバイオ企業3社とIBioICの共同体制で持続可能性を追求する同プロジェクトは、ウイスキーの副産物であるドラフ(発酵時に残る麦芽の搾りかす)やポットエール(1回目の蒸留後に残る液体)などから最大価値を引き出すためのさらなる方法を模索する。

IBioICのCEOであるマーク・バスタード氏は、「副産物の循環化がいかに大きな利益をもたらすことができるかを示す素晴らしい事例になります」と述べている。また、協働を通じたイノベーションが、いかに商業的または環境的にメリットのある結果につながるかを実証するものだと同氏は見ている。

プロジェクトは、バイオプロセスを事業運営プロセスに統合することで持続可能な製品を生み出し、廃棄物全体を削減することができるため、スコットランドの2045年カーボンニュートラルの目標達成に貢献するという。

ゼロ・ウェイスト・スコットランドの最高経営責任者イアン・ガランド氏は、「すでに保有する原材料や副産物から価値を高めることは、循環型経済の重要な原則だと考えています。スコットランドの象徴的な製品で、世界中の産業にインスピレーションを与えることができるのは素晴らしいことです」と述べた。また、二酸化炭素排出量を削減するうえで最も重要なことは、消費する原材料の量を減らすことであり、バイオ由来の製品はこれを達成するうえで重要な役割を果たすと同氏は考える。

同プロジェクトにおいて上記3企業は、ウイスキー製造工程で生成される副産物の代替利用に関する研究を行うことが求められる。ヘリオット・ワット大学にあるIBioIC の FlexBio研究施設を利用して、タンパク質と炭水化物を抽出する商用プロセスを試験・改良・評価・統合し、それぞれ同じ原料を使用して価値の最大化に取り組む。

また、FlexBioの科学者は上記研究を支援する。SWRIも蒸留所名を伏せてウイスキーの副産物サンプルを提供する予定だ。

ウイスキー業界は過去10年間で、副産物量の削減と持続可能なサプライチェーンやプロセスの創出において大きな進歩を遂げてきた。 1年にわたる研究プロジェクトに参加したバイオテクノロジー専門家はすべて、バイオテクノロジーと副産物を独自に活用して成功を収めている。

例えば、Horizon Proteins社は、ウイスキーの副産物からタンパク質を抽出して動物飼料を製造。また、MiAlgae社は、ウイスキー副産物からオメガ3を豊富に含む微細藻類を栽培し、サケの飼料としている。今後の同プロジェクトの研究に期待する。

【参照記事】Whisky industry and biotech innovators collaborate to find new sustainable solutions