持続可能な資源利用を推進する慈善団体の英WRAP(The Waste and Resources Action Programme)はこのほど、英国プラスチック協定(The UK Plastic Pact)の年次報告書2019-2020を発表した。
同協定は、WRAPがエレン・マッカーサー財団の支援を受けて、プラスチックごみ削減を目的として2018年4月に発足させた。2020年12月18日現在、企業や英政府、およびNGO団体など、160以上の組織が署名している。今回の年次報告書では、同協定が掲げた2025年までに達成すべき以下の4つの目標に対する進捗状況と、今後取り組むべき課題が提示された。
- 再設計とイノベーション、および新しい流通モデルを通じて、問題のあるもしくは不要な使い捨て容器包装を根絶する
- 全てのプラスチック容器包装を再利用・リサイクル・堆肥化可能にする
- プラスチック容器包装の70%を有効にリサイクル・堆肥化する
- 全てのプラスチック容器包装の再生材平均含有率を30%にする
進捗状況の詳細データは、以下の通りだ。
- 英国プラスチック協定に署名した組織(以下、同協定メンバー)が2019年に販売した問題のあるもしくは不要と分類されるアイテムの数は前年比40%減の4億個であった
- 同協定メンバーが市場に導入したプラスチック容器包装の64%がリサイクル可能であった
- 英国でリサイクルされたプラスチック容器包装の割合は、2018年の44%から50%に増加した
- 同協定メンバーが提供するプラスチック容器包装の再生材平均含有率は、2018年の9%から13%に増加した
これらの結果に基づいて、4つの目標に対する課題を提示した。
目標1
同協定メンバーは2020年末までに、問題のあるもしくは不要と分類された8アイテムのうち6つを根絶する予定だが、一部のアイテムは根絶が難しいことが証明されているため、課題が残っている。このようなアイテムには、医薬品の容器包装に使用されるポリ塩化ビニル(PVC)や、マルチパックのヨーグルト容器包装に使用されるポリスチレン(PS)が含まれる
目標2
容器包装の再設計と再利用、詰め替えへの取り組みと近赤外分析(NIR)で検出できない黒色プラスチックの大規模な排除において前向きな動きが見られる。しかし、目標を達成するには、英国で広くリサイクルできる柔軟なプラスチック容器包装をつくるための緊急措置を取らなければならない
目標3
リサイクルされるプラスチック容器包装量の増加傾向は持続させる必要がある。市民のさらなるリサイクル活動と、英国におけるリサイクル能力および将来性の構築を引き続き奨励しなければならない
目標4
プラスチック容器包装における再生材平均含有率13%という数字は、70万バレル(約1億1100万リットル)の新たな石油生産、または65,997トンのCO2削減に相当する。これは好ましい動きだが、目標達成のためにはプラスチック容器包装を分類・処理する新技術の開発や投資など、さらに多くの取り組みを実施しなくてはならない
WRAPは2019年の進捗状況について、4つの目標すべてに対してある程度の進歩を遂げたことを示しているものの、急務として対処しなければ目標達成に影響を与えるであろう特定分野の重大な課題があり、非常に複雑な状況だとみている。
【参照サイト】The UK Plastics Pact Annual Report 2019-20
【参照レポート】The UK Plastics Pact | ANNUAL REPORT
【参照サイト】The UK Plastic Pact
【参照サイト】The UK Plastics Pact launched by the Ellen MacArthur Foundation and WRAP
【関連記事】エレン・マッカーサー財団「プラスチック協定」の地域イニシアチブが欧州で発足