WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)は2月20日、新報告書「日本におけるゴーストギア対策の現在地―漁業系プラスチックごみの解決に向けて―」を発表した。ゴーストギアとは、海洋に流出した漁具由来のプラスチックごみのこと。報告書では、日本の漁業関係者、自治体、企業、政府が連携し、対策を強化する必要があると提言している。
ゴーストギアは、海洋プラスチックごみ全体の約1割を占めると言われており、海洋生態系や漁業資源の減少、さらには航行の妨げや地域経済への悪影響が指摘されている。特に日本の海岸に漂着するプラスチックごみの5~6割が漁業系プラスチックごみであるというデータもあり、対策の必要性は高い。
本報告書は、ゴーストギアの発生を抑制する「予防策」、影響を軽減するための「軽減策」、回収を進める「回復(回収)策」の3つの枠組みが重要だと指摘。ゴーストギア対策には、漁業者による適切な漁具管理と廃棄が求められるが、漁業者のみで対応するには限界があるとし、バリューチェーン全体での協力が不可欠だと提言している。
例えば、素材メーカーや繊維メーカー、漁具メーカー、リサイクラーなどが漁具の循環利用を進めることが鍵だとし、帝人と木下製網等が展開する漁具の循環利用を促進する「Re:ism」プロジェクトのような事例を紹介。
また、自治体ごとに漁業の特性を踏まえた対策の例として、香川県や広島県の独自の取り組みを紹介している。さらには、国際的なプラスチック汚染対策と連携し、政府が包括的調査を実施することも不可欠だとしている。
プラスチック汚染は生物多様性の損失や気候変動と並ぶ環境課題であり、ゴーストギアの問題解決は持続可能な水産業のために急務だ。WWFジャパンは、ゴーストギア問題を「自主性のみに依存した取り組みでは限界がある」とし、政策的支援の必要性を強調している。一部の漁業者や企業、自治体が先進的な対策を実施しているが、今後取り組みのさらなる拡大が期待される。
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