Circular Economy Hubでは2021年4月27日より、サーキュラーエコノミーが各業界や領域に広がる未来像を学べるオンライン学習プログラム「Circular X(サーキュラーエックス)」シリーズを毎月開催しています。

一つひとつのニュースが持つ「なぜ?」を深める

「Circular X」シリーズでご登壇いただく各業界のゲストからのプレゼンテーションの前に、各テーマについて国内外の動きを体系立てて解説。日ごろサーキュラーエコノミーに関する国内外からの大量の情報に接している私たちですが、なぜこのようなことがニュースになるのか、ニュースになった取り組みが始まった意義について、改めて深く考える機会は意外にも少ないものです。解説ではそういった一つ一つのニュースの背景にある文脈をお伝えしています。

第1回では、「サーキュラーエコノミーの本質を問う」と題して、編集長の那須清和とアムステルダム在住の西崎こずえが、サーキュラーエコノミーが生まれた背景や学術的な裏付けも含めた現在に至る潮流から、サーキュラーエコノミーをめぐる課題や今後の方向性までを網羅した内容をお届けしました。イベントレポートはこちらよりご覧いただけます。

答えは一つでない:循環型都市づくりへの道のり

さて、第2回のテーマは「サーキュラーエコノミーと自治体」でした。2050年には世界人口の約70%近くが都市に居住することが予想されています*1。今すでに世界の自然資源の消費の約75%が都市に集中し、世界全体の50%の廃棄を生み出し*2、60-80%の温室効果ガスを排出している*3と言われるように課題が多いリニア型都市。循環化への移行は急務となっていることから、第2回のテーマとして設定させていただきました。解説の概要は下記の通りです。

循環型(サーキュラー都市)の特徴

現状では明確な定義のない「循環型(サーキュラー)都市」の特徴を、サーキュラーエコノミーに取り組んでいる世界の都市から読み取った論文から把握。各都市の環境・経済・社会の指標を見ていくことで、「循環型都市とは何か」を明らかにしています。

循環型都市に向けた政策フレームワーク

エレン・マッカーサー財団のレポート「CITY GOVERNMENT AND THEIR ROLE IN ENABLING A CIRCULAR ECONOMY TRANSITION」やICLEI Circulars、C40、Reflowなどが提唱している政策遂行におけるフレームワークを紹介。循環型都市に向けた政策を進めていく上での考え方を整理しました。

都市の循環性測定方法と今後の課題

広範囲にわたる循環化への取り組みに欠かせない、循環性の測定方法。Circle City Scan Tool(Circle Economy)などすでに海外で開発が進みつつあることを紹介。また、主に海外で議論が交わされている「循環のサイズ」「データの収集・所有方法」「産官学民を巻き込むためのデザイン方法」などの今後の循環型都市をめぐる課題に触れ、解説を締めくくりました。

都市は企業とともに、サーキュラーエコノミーの実現に欠かせない「車の両輪」であるということを再認識できたのではないでしょうか。

ゲストトーク①:「つくる側」への働きかけを強める:【鹿児島県大崎町】大崎町SDGs推進協議会の中村健児氏

大崎町は住民と一体となって資源リサイクル率日本一を達成した成果をベースに、地元主導でサーキュラーエコノミー地域圏を作り上げようとしています。なぜ、循環型都市を目指すようになったのか、今の取り組み、今後の課題についてお話いただきました。循環型都市に向けては、「町外で生産されたもの」、すなわち「つくる」という部分を変えていかないと、持続可能な仕組みとして成り立たないことを認識。「つくる側」に働きかけを強めることも含め、「一般社団法人大崎町SDGs推進協議会」を設立し、官民連携でより包括的な循環化への取り組みを始めました。

サーキュラーヴィレッジ大崎町の全体図(大崎町公式HPより)

ゲストトーク②:デザインを通じて循環型拠点づくりを:【鹿児島県薩摩川内市】同市企画制作部長の古川英利氏/九州大学大学院芸術工学研究院の稲村徳州氏

薩摩川内市の古川氏より、同市の循環型都市に向けた取り組み内容やその変遷をお話いただきました。同市では、未来ビジョン策定に当たって様々な領域の専門家を全国から集めて、異分野共創を実施。新たに循環型都市の実装拠点である「薩摩フューチャーズコモンズ」(下図参照)を設立し、先端テクノロジーの活用や衣食住の研究開発拠点、そして市民発のイノベーションを起こす場所として機能させていく予定です。

有識者メンバーの一人である稲村助教からは、循環型都市を目指す上で同市が大切にしている「デザイン」の視点について、薩摩川内市と合同で実施したワークショップの内容を振り返ることなどを通じてその理解を深めました。

地域でサーキュラーエコノミーを実現する上では、多彩なアプローチがあるということを印象付けられた回となりました。

薩摩フューチャーコモンズの全体図(出典:薩摩フューチャーコモンズ 公式HPより)

「聞いて」学ぶから「やって」学ぶへ

最近筆者が読んだ『超自習法~どんなスキルでも最速で習得できる9つのメソッド~』(スコット・H・ヤング ダイヤモンド社)には、多分野を短期間に習得して成果を上げている「ウルトララーナー」と言われる人たちの学び方の特徴として、授業や書籍から間接的に学ぶのではなく、実際にやってみるプロジェクトに没頭することを通じて直接的に学んでいると書かれていました。Circular Xは、「理論から実践へ」を主眼に置きながら、サーキュラーエコノミーの未来をワクワクしながら深く学べる豊かな時間を作り出してまいります。

アーカイブ動画は下記より購入・視聴することができます。

【参照記事】【アーカイブ動画購入可能】「サーキュラーエコノミーと自治体」オンライン学習プログラム Circular X 第2回

【関連記事】私たちはどのようなサーキュラーエコノミーを目指すのか:Circular X 第1回「サーキュラーエコノミーの本質を問う」イベントレポート
【関連記事】「リサイクルの町から、世界の未来を作る町へ。」リサイクル率12年連続日本一の鹿児島県大崎町がSDGs推進協議会を設立

【参考】Moving Towards the Circular Economy/City Model: Which Tools for Operationalizing This Model?
【参考】大崎町公式HP
【参考】薩摩フューチャーコモンズ 公式HP

*1: United Nations Department of Economic and Social Affairs, 2018
https://www.un.org/development/desa/en/news/population/2018-revision-of-world-urbanization-prospects.html

*2 UNEP: Resilience and Resource Effciency in Cities

https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/20629/Resilience_resource_efficiency_cities.pdf?sequence=1&isAllowed=y

*3: Seto K.C., S. Dhakal, A. Bigio, H. Blanco, G.C. Delgado, D. Dewar, L. Huang, A. Inaba, A. Kansal, S. Lwasa, J.E. McMahon, D.B. MȜller, J. Murakami, H. Nagendra, and A. Ramaswami, 2014: Human Settlements, Infrastructure and Spatial Planning. In: Climate Change 2014: Mitigation of Climate Change. Contribution of Working Group III to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change =Edenhofer, O., R. Pichs-Madruga, Y. Sokona, E. Farahani, S. Kadner, K. Seyboth, A. Adler, I. Baum, S. Brunner, P. Eickemeier, B. Kriemann, J. Savolainen, S. SchlȘmer, C. von Stechow, T. Zwickel and J.C. Minx (eds.). Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA.