経営コンサルティング会社の米A.T.カーニーはこのほど、サステナビリティに関する論考「Closing the loop:models for a plastics circular economy(資源の環を結ぶ:プラスチックにおけるサーキュラーエコノミーモデル)」を公開した。
同論考では、プラスチックのサーキュラーエコノミー移行に向け、化学メーカー・消費財メーカーがとるべき行動が示された。4章から成る同論考の概要は、以下のとおり。
1章:サーキュラーバリューチェーンとは?
- サーキュラーエコノミーを概説し、金属やプラスチックなどのリサイクル状況を次のように紹介した。世界のサーキュラリティは、わずか9%である。プラスチックのリサイクル率は20%で、なかでもポリエチレンテレフタレート(PET)のリサイクル率は欧米で29〜58%と最も高く、リサイクルの余地は大きい(※1)
2章:プラスチックの特徴と、そのサーキュラーシナリオは?
- プラスチックの特徴:有用な特性・汎用性・低コストにより、消費者の利便性や工業工程、物流や公衆衛生などに大きな恩恵をもたらしてきたが、環境コストが伴う
- サーキュラーシナリオ:プラスチックにおけるサーキュラーシステム拡大には、単一のプラスチック素材に特化したスモールループシナリオと、複数のプラスチック素材を合わせたラージループシナリオを組み合わせる必要がある。スモールループシナリオでは、プラスチック廃棄物を回収・分類・処理し、バージン材と同等の価値のポリマー製品などに再利用できるようにしなくてはならない。ラージループシナリオでは複数種類のプラスチック素材を扱え、特定物質に依らないバリューチェーンが必要となる。ケミカルリサイクルに大きく依存し、素材を原料やモノマーとしてさらに上流のバリューチェーンに戻すことになる。素材メーカーは、自社製品のバリューチェーンにおけるサーキュラーソリューションの機会とリスクを評価する際に、両方のシナリオを考慮しなくてはならない
3章:どのような推進力が変化を形成し、促進するのか?
- 「経済的価値」「テクノロジーの進歩」「市民の自覚と行動」「反応する行政」の4つの推進力が、サーキュラーチェーンの形成と進行度合いを決定すると考えられる。この4つの推進力は、アンドリュー・マカフィー氏の著書「More from Less」で、米国と英国における多くの素材のバリューチェーンの生産と消費に影響を与え、広範囲にわたる脱物質化をもたらしたと紹介された
4章:化学品メーカーや消費財メーカーは何をすべきか?
3章を踏まえ、化学品メーカーや消費財メーカーに3つの領域での行動を提案した。
- 経済的影響の算出:自社製品のバリューチェーンにおけるリスク・開示・機会を理解し、潜在的な経済的影響を上流・下流の両方で算出する
- 4つの推進力を観察:4つの推進力を観察し、シナリオプランニングを用いて、スモールループまたはラージループの将来に備える
- 協働と教育:同業他社・バリューチェーンのパートナー・規制機関・非政府組織と協力して、ソリューションの拡張性と経済性を確保し基準を確立させて、人々に働きかけ教育する
サーキュラーエコノミーへの移行を目指す化学メーカー・消費財メーカーは、プラスチックのバリューチェーンの特徴と将来モデルを推進する力を理解し、適切な行動指針を計画することが求められており、いまこそ積極的な準備と対応が必要であると同論考は結論付けた。
※1:NexantおよびGrand View Research
【プレスリリース】A.T.カーニー論考「資源の“環”を結ぶ(Closing the loop):プラスチックにおけるサーキュラーエコノミーモデル」を公開
クリューガー量子
クリューガー量子(くりゅーがー りょうこ)ドイツ在住、ハイデルベルク市公認ガイド。土木工学を学び日本で土木技術者として働いた後、メキシコでスペイン語を習得、日西通訳として自動車関連企業で働く。2003年に渡独。専門分野:ドイツのサーキュラーエコノミー関連政策・企業動向、企業現地視察サポート、建設業界のサーキュラーエコノミー移行。個人ブログ:http://ameblo.jp/germanylife10/ 。(この人が書いた記事の一覧)