プラスチック汚染対策の国際条約制定に向けて11月13日からケニア・ナイロビで行われていた政府間交渉第3回会合(INC3)が閉幕した。これを受けて、会合に参加した国際環境NGOのWWFジャパンとグリーンピース・ジャパンが共同でオンライン会見を開き、会合に先立って公開されていた草案(セロドラフト)での合意に至らなかったことを明らかにした。
次回会合までの準備作業実施も目途立たず
会見では、会合の進行内容や閉幕時の状況について両団体が説明した。それによると、会合ではゼロドラフトに参加各国からの400以上にのぼる意見をそのまま加えた100ページ以上に及ぶ素案がベースとなったため、具体的な内容の議論に入れなかったという。
さらに、2024年4月にカナダ・オタワで開催予定のINC-4までに行うべき会合間作業も一切行われないことになった。会合間作業としては、懸念される化学物質やポリマー、バージンプラスチックの削減などを含む主要な論点をめぐって、科学的・技術的な事項と実施手段やファイナンスに関する事項という2つの形式が提案された。しかし、バージンプラスチックに関わる作業を外して合意を図ろうとした欧州などに対して、プラスチック汚染の影響を大きく受けるアフリカ諸国や島しょ国が強く反対したことで、政府間交渉の土台となる会合間作業が行えないという事態に見舞われることになったという。
INC-3の閉幕を受けて、グリーンピース・ジャパンは「化石燃料業界の干渉を退け、2040年までにプラスチック生産を75%削減する条約を」と題した声明を発表した。この中で、グリーンピース・アメリカ グローバル・プラスチックキャンペーンリードのグラハム・フォーブス氏は「国際プラスチック条約は、地球の気温上昇を1.5度以下にとどめるために、2040年までにプラスチックの生産量を少なくとも75%削減するものでなければなりません。しかし、条約交渉の半分以上が終わった今、私たちは破局に向かって突き進んでいます。2024年4月にカナダで第4回交渉が再開されるとき、各国・地域の指導者たちがこれまで以上のリーダーシップを示すことを強く求めます」などと訴えた。
日本政府の交渉スタンスについて、今回の会合にも参加したグリーンピース・ジャパン シニア政策渉外担当・小池宏隆氏は「日本はアフリカ諸国や太平洋小島嶼開発途上国など、プラスチック汚染の被害をまさに受けている国々からの声を聞くことなく、『汚染の蛇口を閉める』ために必要な上流規制には積極的ではありませんでした。日本は立場の違う国々の『橋を架ける』という発言がありましたが、実際には、一次ポリマーの生産規制においてはいくつかの東南アジア諸国よりも後ろ向きです。自国の社会を変革することに後ろ向きであるうえ、一部の大国の後ろ向きな姿勢を理由に、目標値を低くしようとする交渉姿勢は評価されません」と指摘。その上で「日本政府に対して、石油化学産業界ではなくプラスチック汚染問題を抱える国や地域の声にこそ耳を傾け、プラスチック汚染を発生源から終わらせる条約実現に向けて、より積極的な発言や行動をすることを求めます」とコメントした。
次回会合(INC-4)は、2024年4月21-30日の日程でカナダ・オタワで行われる。2025年中の国際条約化を目指す交渉を、バージンプラスチックの生産・消費の削減に踏み込む野心的なものにできるかどうか、予断を許さない状況だ。
【プレスリリース】
化石燃料業界の干渉を退け、2040年までにプラスチック生産を75%削減する条約をーー国際プラスチック条約第3回政府間交渉委員会が閉幕(グリーンピース・ジャパン)
【関連記事】