経団連は7月30日、環境委員会廃棄物・リサイクル部会を開催し、環境省の角倉一郎局長らが廃棄物処理制度および再資源化事業等高度化法の認定基準等の検討状況について説明した。政府が国家戦略として位置付ける循環経済への移行を加速するため、再資源化事業の高度化と廃棄物の適正処理確保に向けた具体的な制度設計が進められている。
環境省の角倉氏によると、政府は2024年8月に閣議決定された「第五次循環型社会形成推進基本計画」において、循環経済への移行を国家戦略と位置づけた。同年12月には「循環経済への移行加速化パッケージ」を取りまとめている。この移行は、環境保全だけでなく、日本の産業競争力強化と経済安全保障の観点からも重要だ。世界的に再生材の需要が増大する中、レアメタルなどの重要鉱物を含む廃棄物を国内で資源として循環させ、再生材の質と量の安定供給体制を整備することが目指されている。
再資源化事業等高度化法では、廃棄物処分業の許可手続きを不要とする特例が設けられる。対象となるのは、製造側が必要とする質・量の再生材を確保するための広域的な分別収集・再資源化を促進する「高度再資源化事業」、分離・回収技術の高度化に係る施設設置を促進する「高度分離・回収事業」、温室効果ガス削減効果を高めるための高効率な設備導入等を促進する「再資源化工程の高度化事業」の3事業だ。
高度再資源化事業では、申請者が統括管理する体制整備やトレーサビリティの確保が認定基準に含まれ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した手続きのスリム化が図られ、再委託も可能となる。高度分離・回収事業では、まず太陽光パネル、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池が指定廃棄物となるが、社会的な動向や高度な技術を用いた事業の状況を踏まえて追加検討される。今後、認定に求められる類型別の定量的指標や申請手続き等の詳細が政省令等およびマニュアル・ガイドラインで示され、11月に全体施行される見込みだ。
廃棄物処理制度については、不適正ヤード問題、処理期限以降に覚知されたポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物の適正処理確保の仕組み、災害廃棄物の適正かつ円滑・迅速な処理に関する制度の点検見直しについて検討が重ねられ、2025年6月の審議会で中間取りまとめが行われた。
不適正ヤード問題への対策として、廃鉛蓄電池等の有害性の高い物品や金属・雑品スクラップ等が適正に解体・処分されるよう規制するとともに、不適正な輸出の防止につながるよう検討が進められる。PCB廃棄物に関しては、高濃度PCBは覚知後の届け出と一定期間内の処理を義務付けるとともに、新たな処理体制の整備を行うこと、使用中の低濃度PCB使用製品等の管理制度を創設することなどが検討されている。災害廃棄物処理については、令和6年能登半島地震等の経験・課題を踏まえ、各自治体の支援体制や災害廃棄物処理計画、災害支援協定に基づく特例措置等の整備、廃棄物最終処分場での受け入れ容量確保に係る特例制度を創設することなどが検討されている。
【参照記事】廃棄物処理制度、再資源化事業等高度化法の認定基準等の検討状況-環境委員会廃棄物・リサイクル部会
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