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スーパーやコンビニに並ぶ商品のほとんどが、パッケージに入れられて販売されている。そして、パッケージの多くが石油由来のプラスチックからできている。衛生的で中身の保存ができ、軽くて持ち運びしやすいプラスチック包装。便利だけれどなんとかサステナブルなものに替えられないか、と考える人も多いのではないだろうか。その一つの代替素材が植物由来等のバイオマスプラスチック。しかしまだまだ目にする機会は多くないのが現状だ。

背景には、例えばバイオマス素材やリサイクル素材など、企業が環境に配慮した製造に切り替える場合の、品質や物流管理システムの課題がある。今、この課題の解決策の1つとして、プラスチック業界をはじめ、さまざまな分野で注目されているのがマスバランス方式だ。次項でより詳しく説明するが、マスバランス方式は既存設備やシステムを活用しながら、環境に配慮した製品をつくることが可能だとされている。

三井化学グループである株式会社プライムポリマー(以下、プライムポリマー)は、このマスバランス方式を採用したバイオマスポリプロピレン(以下、バイオマスPP)「​​Prasus®」(プラサス)を製造・販売している樹脂メーカーで、2023年7月に日本生協連と共にこのマスバランス方式によるバイオマスPPを食品パッケージに採用することを発表した。

IDEAS FOR GOODと三井化学による「素材の素材まで考える」連載。サーキュラーデザインの世界でも「素材」が重要視されている中で、サーキュラーなものづくりをするうえで環境に配慮された素材の調達は欠かせないものになっている。連載では、素材そのものを変革していく三井化学や、パートナー企業の取り組みを追っていく。

前回の第四弾では、ブロックチェーン技術を活用した「RePLAYER®ブロックチェーンプラットフォーム」にかける想いや、プラスチックのトレーサビリティ確立の重要性を伺った。

第五弾である今回のテーマは「バイオマス素材と生活者コミュニケーション」。「Prasus®」とは何なのか、そしてパッケージ採用の背景やこれからの可能性・目指したい理想の未来について、プライムポリマーでバイオマスポリエチレンやバイオマスポリプロピレンのマーケティング企画などを行う箔本室長・沈潔バイオチームリーダー、日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)のサステナビリティ戦略担当である設楽良昌さんに伺った。

話し手

箔本泰孝(はくもと・やすたか):株式会社プライムポリマー 企画管理部 サーキュラーエコノミー推進室室長

沈潔(しん・じえ):株式会社プライムポリマー 企画管理部 サーキュラーエコノミー推進室 バイオチームリーダー
設楽良昌(したら・よしまさ):日本生活協同組合連合会 ブランド戦略本部 サステナビリティ戦略室 サステナビリティ戦略担当

マスバランス方式を採用すると、どうなるのか?

プライムポリマーは、ポリオレフィン(ポリプロピレンとポリエチレンの総称)の製造・販売を行う三井化学と出光興産の合弁会社である。

ポリプロピレンもポリエチレンも加工性に優れており、生活のあらゆる場面で使用されている。しかし、従来のポリプロピレンは、石油由来のナフサ(粗製ガソリン)を原料として製造されており、地球温暖化への影響や持続可能な社会の実現に向けては、課題がある。

そこでプライムポリマーはカーボンニュートラル実現に向け、ポリオレフィンメーカーとして貢献できることは何かを自問し、2022年9月5日、その1つの答えとしてマスバランス方式によるバイオマスPP・PE「Prasus®」ブランドを発表した。

image via 三井化学

沈さん「『Prasus®』はプライムポリマーが新しく立ち上げた、 環境対応製品の1ブランドです。従来の石油由来のものとは違い、新しい原料を採用しています。現在想定している原料は2種類あり、今回日本生協連様にも採用していただいたバイオマス由来のものがその一つです。バイオマスナフサを原料としており、使用済みの食用油や植物油を生産する際の廃棄物などから作られます。

もう一つはケミカルリサイクルの原料です。今後、廃プラ由来のケミカルリサイクル原料を活用したケミカルリサイクルPP・PEも提供していく予定です」

「Prasus®」には、マスバランス方式が採用されている。マスバランス方式とは、原料を加工して製造する過程において、ある特性をもつ原料が混合される場合に、その原料の投入量に応じて、製造されたものの一部にその特性を割り当てる方法だ。

image via 日本生協連

例えば、バイオマス由来の原料を3トン、石油由来の原料7トンを混ぜ合わせた10トンの原料から製品を作ったとする。その場合、完成した製品のうち3トンを「100%バイオマス由来」と見なすことができる。

沈さん「『Prasus®』が採用しているマスバランス方式は、既存の生産設備や製造プロセスがそのまま利用できるため、新たな設備などを作る必要はありません。また、「Prasus®」の物質的な性質は石油由来のものと全く同等ですし、品質管理も同じ体制を取っています」

プライムポリマー・左から沈さん、箔本さん

これまで、化粧品の容器や食器、おもちゃなどに使用されてきた「Prasus®」。今後は食品パッケージや医療器具、車の部品などでの採用を目指していきたいという。

マスバランス方式普及のカギは「エコマーク認定」

このマスバランス方式のバイオマスプラスチックに着目しているのが、日本生協連だ。日本生協連は、全国の各生活協同組合(以下、生協)や連合会が加入する全国連合会となり、全国の生協の中央会的役割を果たす。さまざまな団体と交流しながら生協への理解を広げ、社会制度の充実に向けた政策提言などを行ったり、コープ商品の開発と会員生協への供給、会員生協の事業や活動のサポートなどを通して、生協の発展を支えている。

生協は、消費者が出資金を出して組合員として参加し、意思決定や運営に参加することでよりよい暮らしを実現することを目指して組織された協同組合で、宅配や店舗での商品販売、共済、福祉や介護事業など人びとの生活に関わる事業を行っている。

日本生協連・設楽さん

2023年7月、日本生協連から発売される食品「CO・OP 味付のり10切90枚」のパッケージに「Prasus®」を使用することが発表された。

設楽さん「日本生協連の商品パッケージに『Prasus®』を使おうという話は、2022年6月ごろに始まりました。プライムポリマーさんからお話をいただいたのがきっかけです」

沈さん「個人的な話にはなるのですが……私は以前中国の拠点で働いていたのですが、コロナ禍の2021年1月に日本に戻ってきました。帰国後、2週間の隔離生活の時に食料調達に非常に困ってしまって。実は、食料や日用品を購入しようにも、当時所持していたクレジットカードがネット通販で使えない状況でした。その時、ふと過去に生協さんを利用していたことを思い出し、利用させていただいたんです。娘もいたので非常に助かりました。

職業柄もあり、生協さんから届いた商品のパッケージなどを見ていたのですが、そうしているうちに、植物由来の素材やリサイクル素材が使用されている商品が多いことに気付きました。そこで『Prasus®』のお話をしてみようと思ったんです」

image via 日本生協連

公益財団法人日本環境協会エコマーク事務局は、2023年2月に、マスバランス方式のバイオマスプラスチックを使用した包装容器を対象とし、いち早く「バイオマス由来特性を割り当てたプラスチックを使用したプラスチック製容器包装」のエコマーク認定基準を制定した。「Prasus®」を使用した同商品は、制定後初の認定商品となった。

日本生協連から販売されている商品全5,000点程の中で、エコマーク認定を受けたものは約660点。実に、10分の1以上の商品でエコマーク認定を受けていることになる。

なぜ日本生協連は、マスバランス方式のバイオマスプラスチックに関するエコマーク認定取得を積極的に取得しようとしたのだろうか。

設楽さん「マスバランス方式を社会に定着させていくには、エコマーク認定がふさわしい、取るしかないと思いました。生協の組合員には、マスバランス方式とはなにかが伝わりづらい部分があります。ISCC PLUS認証(持続可能性カーボン認証)もありますが、馴染みのない人が多いです。一方、エコマーク認定は組合員の方にも馴染みがあり、分かりやすいですよね。

今後も、マスバランス方式のバイオマスプラスチックを使用したエコマーク認定の取得を拡大していきます」

2023年11月には、マスバランス方式によりバイオマス由来特性を割り当てたプラスチックパッケージを使用した「牛乳焼きドーナツ」を含めた4商品が発売予定だ。

味付のりパッケージの裏側にはエコマークとマスバランス方式の表記が。

エシカル消費は「誰かの笑顔に繋がるお買い物」

生協は、サステナビリティに積極的に取り組んでおり、2021年には「生協の2030環境・サステナビリティ政策」を制定。この政策には10の行動指針があり、エシカル消費拡大、脱炭素化、資源循環、生物多様性保全や人権尊重などの項目で構成されている。

mage via 日本生協連

設楽さん「現在商品パッケージの多くにプラスチックが使用されていますが、全国の生協で取り組む目標には、2030年までに使い捨てプラスチック製容器包装の使用量を2018年度比で25%削減するというものがあります」

日本生協連では「コープ商品の2030年目標」を設定。農産・水産・パーム油など6つの項目ごとに具体的な目標を掲げており、その項目の一つに「プラスチック」がある。

左から設楽さん、沈さん、箔本さん

設楽さん「『コープ商品の2030年目標』では、先ほどの容器包装使用量を25%削減することに加え、2030年までに再生プラスチックとバイオマスプラスチックの使用率を合計で50%以上にする目標があります」

プラスチック使用量の削減に向けて、コープ商品について、ペットボトルの軽量化やラベルの削減、プラスチック容器から代替容器への切り替え、詰替え商品の拡充、バイオマス素材を利用したパッケージを拡大している。今回の「Prasus®」の採用もその一環だ。また、再生プラスチックを使用したペットボトルの導入や、生協で回収したペットボトルをコープ商品のパッケージ原料の一部に使用する取り組みも拡大中だ。

設楽さん「持続可能な世界の実現に向け、コープ商品を通じてエシカル消費を呼びかけています。エシカル消費のことを日本生協連では『誰かの笑顔に繋がるお買い物』と呼んでいます。

地域や環境、社会に配慮して物を買ったりサービスを利用したりすることを、積極的に応援していきたいです」

よりよい未来のために。社会課題の解決に向けたソリューションを提供する

素材の素材からカーボンニュートラルを目指すプライムポリマーと、パッケージを通じてエシカル消費を呼びかける日本生協連。今回の取り組みは、マスバランス方式やバイオマスプラスチックを世の中に広める大きなきっかけの一つと言える。

日本生協連との今回の取り組みを、プライムポリマーの沈さんはこう振り返る。

沈さん「今回の味付のりをきっかけに、日本生協連さんと協働できたのは非常にありがたいことです。マスバランス方式のバイオマスプラスチックを用いたパッケージへの採用を第2弾、第3弾と続けていけたらと思います。

今後は、リサイクルにも力を入れていきたいですね。作るだけでなく、その後どうするか、廃棄されるものにも責任を持って対応していく必要があります。原料から製造、そして回収して素材に戻す。その仕組みを作り上げていきたいです」

プライムポリマー・箔本さん、沈さん、日本生協連・設楽さん

パッケージを一つ作る時、原料を作る企業、加工する企業、印刷する企業、パッキングする企業、そして商品を販売する企業……商品が私たちの手に届くまでに、サプライチェーンを構築するさまざまなプレイヤーがいる。サプライチェーンの中のプレイヤーの一つが、プライムポリマーであり、日本生協連である。

箔本さん「プライムポリマーは、樹脂メーカーであり、素材の販売や製造などを行っている企業です。しかし、一番大事な役割は『社会課題を解決するためにソリューションを提供すること』だと考えています。

日本生協連さんは、生協組合員の声を聞き、暮らしの中の課題を把握している。連携することで、直接的なコミュニケーションから課題を把握し、より迅速に課題解決に向けたソリューションを提供していけたらと思います」

サプライチェーンを繋げていくことで、社会を変える力になる

素材を環境負荷の低いものに変えることは、未来の地球のためによいことだろう。しかし、生活者からは直接的には見えづらい素材のことを自分事として捉えるのは簡単ではない。日本生協連の設楽さんは、まずはマスバランス方式やバイオマス素材に対する認知や理解を広めることが重要だという。

設楽さん「『マスバランス方式のバイオマス素材のパッケージ』と言っても理解しづらい部分があると思います。少しでも理解してもらうきっかけとなるよう、資料なども用意していきたいと思います。

生協は組合員の暮らしの願いを実現するために存在しています。よりよい未来の暮らしのためには、環境負荷を減らしていくことが重要です。コープ商品が、その重要性に気づくきっかけになったら嬉しいですね」

最後に、プライムポリマーの沈さんにこの記事を読む読者に伝えたいメッセージを伺った。

沈さん「私たちは、社会を変えるために、2つの力が重要だと考えています。

一つ目は『変える力』。環境にやさしい新しい素材を提供して、世の中の社会課題を解決する第一歩になればいいですね。そして二つ目が『繋げていく力』です。当社だけでは解決できない問題も、サプライチェーンを繋げていき、大勢の力で社会変革に繋げていきたいです。

身近なものから変えていくことで、いつか大きな力になる。そうすれば、包材一つでも、社会を変える力になると信じています」

編集後記

「バイオマス」や「マスバランス方式」と聞いて、難しいと感じる人は多いかもしれない。筆者も最初はそう感じた。しかし、実際に調べてみると、思っていた以上にすんなりと理解でき、持続可能な社会の実現のためには、大切な一つの選択肢だと思った。

今回の取材の中で感じたのは「気づくきっかけ」が大切ということだ。例えば、インスタントカレーのパックやお菓子の袋、詰め替え用洗剤の袋。ふと後ろを見たら、バイオマスの文字やエコマークの表示がある。一度気になると、他のパッケージも確認するかもしれないし、言葉の意味を調べるかもしれない。
エコマークのように、「気づくきっかけ」となる仕組みを作っていくことで、その小さな積み重ねが、後の選択を変えるポテンシャルを秘めているのではないだろうか。

そして、沈さんのお話の中で出てきた「変える力」と「繋げていく力」。これは私たち生活者にも当てはまる。自分が納得したものを選んで買うことで、社会は変わっていく。そして、その行動はより良い未来に繋がっていくだろう。

取材協力:日本生活協同組合連合会

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【参照サイト】株式会社プライムポリマー