2025年までに持続可能な容器包装を実現するという目標の達成に向け、時間と戦っている企業にとって、2021年は大きな試練の年となった。米国では、崩壊したリサイクルシステムを修復し、企業がより迅速にコミットメントに取り組めるよう、各州が画期的な法案を可決した。

※この記事は、2022年1月6日、オンラインメディアGreenBiz上に掲載されたMeg Wilcox氏による記事を許諾を得て筆者が翻訳しています。

オレゴン州環境品質局(DEQ)のシニアアナリストであるDavid Allaway氏は、GreenBizにこう語った。「廃棄物問題の存在を認めるときが来たのです。リサイクルシステムは、本来の環境効果を発揮しておらず、場合によっては環境に悪影響を与えることさえあります。これらの問題はすべて、責任分担のアプローチで解決できます」

2021年は、新型コロナウイルスによってサプライチェーンやリサイクル業界が混乱し続けていたが、進展も見られた。エレン・マッカーサー財団(EMF)が主導するグローバルコミットメントに署名した企業では、容器包装におけるバージンプラスチック使用量が数十年にわたり増加していたが、ピークに達した。再利用と詰め替えのアプローチは、少しずつではあるが成長を続けている。

この勢いは2022年も続くのだろうか?注目すべきトレンドをいくつか紹介する。

1. 拡大生産者責任

カナダや欧州で長年にわたって確立されてきた拡大生産者責任(EPR)は、2021年についに米国でも広がりを見せた。オレゴン州とメイン州では、容器包装の回収・処理のための資金をメーカーが援助することを義務付ける法律が可決され、ニューヨーク州・ワシントン州・カリフォルニア州などのほかの州でも可決される予定だ。

メイン州とオレゴン州ではアプローチが異なるが、どちらの法律でも、州内で包装製品を販売する企業は、生産者責任団体(PRO)に加入し、会費を支払い、販売する包装製品の量と種類を報告することが義務付けられている。オレゴン州の法律ではさらに、大手生産会社25社に対して、包装製品のポートフォリオの一部について、ライフサイクルでの環境負荷を定期的に評価し、開示することを求めている。メイン州の法律は2024年半ばに施行され、オレゴン州では2025年半ばに施行される。

両州とも、リサイクル可能かどうかにかかわらず包装材を対象としている。「リサイクルシステムの一部の課題を生み出している原因は、リサイクルできないものなので、この法律は本当に重要です」とAllaway氏は話す。

オレゴン州の法律では、州のリサイクルシステムに年間約8,200万ドル(約93億2,000万円)を投資し、地方自治体による長年の課題の解決を支援することになっている。しかしこの法律が、より環境に配慮した容器包装を企業が開発する動機になるかどうかについては、「価格シグナルは形成されますが、それほど大きなシグナルにはならないと考えています」とAllaway氏は話す。

2022年には、カリフォルニア州・ニューヨーク州・バーモント州・コネチカット州が法律の可決に向けて取り組みを本格化させる可能性がある。全米スチュワードシップ行動評議会(National Stewardship Action Council)の創設者で、リサイクル市場とカーブサイドリサイクル(道路脇に出された資源ごみを回収して行うリサイクル)に関するカリフォルニア州の委員会の委員長であるHeidi Sanborn氏は、「カリフォルニア州の議員らは、現時点で目標からどれほど離れているかを把握しており、遅れを取り戻したいと考えています」と話す。

EMFのグローバルコミットメントのプログラムマネージャーで、イニシアチブ「ニュープラスチックエコノミー」で戦略的対応を取っているLily Shepherd氏によると、世界的に見れば、同コミットメントに署名している8カ国の政府が、2025年までにEPR政策を導入することを決定、または計画している。8カ国は、オランダ・イギリス・ルワンダ・ニュージーランド・チリ・ペルー・フランス・ポルトガルである。

2. リサイクル可能材料に関する法律のさらなる増加

カリフォルニア州では2021年に、画期的な法律「Truth in Labeling for Recyclable Materials(リサイクル可能な材料に関するラベルの真実)」が成立した。ニュージャージー州でも同様の法案が提出されており、Sanborn氏は、ニューヨーク州も後に続いて取り組みを開始すると予測している。

「ラベルに真実を記載することは、環境汚染と市場の混乱に関する問題の核心だと思います」とSanborn氏は話す。「私たちはラベルに騙され、製品がリサイクル可能、または生分解性だと思い込んで購入しています。なぜなら、何かしらの強制力を持つ連邦規格が存在しないからです」

カリフォルニア州の生産企業は2年以内に、新しい法律と、その法律が定義するリサイクル可能なものに従ってラベルを修正する必要がある。カリフォルニア州ではそのほかに、処理施設に入ってくる製品と、梱包されて出荷される製品を監査する。

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Image via Unsplash/Sigmund

北東部廃棄物管理当局協会(Northeast Waste Management Officials Association)の理事長であるTerri Goldberg氏によると、2022年に成立する可能性があるほかの法律として、製品におけるリサイクル材含有量の最低要件を定めた、リサイクル材使用の義務化がある。たとえばニュージャージー州では2020年に、硬質プラスチック容器・ガラス容器・紙製およびプラスチック製の持ち帰り用袋・プラスチック製ごみ袋のリサイクル材含有量に関する要件を定めた法案が提出された。

廃棄物・リサイクル業界団体がこの法案への支持を表明しているため、全国規模のボトル法案についても議論されていると、Sanborn氏はGreenBizに語った。

3. 容器包装から有害物質を排除するための取り組みの強化

リサイクル材からつくられた製品には、香料・難燃剤・溶剤・殺生物剤・染料がより多く含まれていることがEPAの最近の研究で判明し、「リサイクル経済のサーキュラーな性質により、製品にさらに多くの化学物質が使用される可能性があります」とEPAは警告している。

そんななか、食品包装(およびその他の製品)におけるパーフルオロアルキル化合物(PFAS)の使用を禁止、または段階的に削減する法案を可決する州が増え続けており、ワシントン州カリフォルニア州メイン州でもこうした法案が可決された。全米では、食品容器に含まれるPFASを禁止する超党派の法案が提出された。

マクドナルドのような多くの小売業者がPFASの使用禁止を発表するなか、より安全な容器包装を選択する際の指針となる新たなツールも登場している。米非営利団体のCenter for Environmental HealthとClean Production Actionは、使い捨ての皿やボウルなどの食器類に、PFASやその他多数の有害化学物質が含まれていないことを保証する安全基準「GreenScreen Certified Standard for Food Service Ware(外食業界で使用される食器のための認定基準)」を発表した。

米非営利団体Safer Chemicals Healthy Familiesが実施する「Mind the Store」キャンペーンの責任者であるMike Schade氏は、「この新しい基準は、小売業者・メーカー・配合業者がPFASやフタル酸エステル、その他の高懸念化学物質から移行する際、代替品の安全性を確保するのに大いに役立ちます」と話す。

米環境NPOのGreenBlueの事務局長で、GreenBlueが展開する業界団体「持続可能な包装連合(Sustainable Packaging Coalition)」の理事長であるNina Goodrich氏は、「企業が適切な材料の選択について理解し、不十分な代替品を販売することを避けるため、当連合は2021年にChemForwardと共同で『安全で循環型の材料の共同事業(Safe and Circular Materials Collaborative)』を開始しました」とGreenBizに語った。

PFASは環境汚染物質として注目を集めたが、氷山の一角にすぎない。たとえばマイクロプラスチックは、食品や水、空気、さらには胎児の胎盤に至るまで、あらゆるところに存在し得るため、健康への深刻な懸念として浮上している。科学者らがこれらの汚染物質を、脳腫瘍や出生率の低下に関連付けるようになれば、より安全な容器包装(およびその他の消費財)を求める消費者の声は高まるだろう。

「汚染物質によって自分たち自身に、何度も繰り返し危害を加え続けるようでは、循環型経済も何もあったものではありません」とSanborn氏は厳しく指摘した。

4. 容器包装へのより総合的なアプローチ

容器包装業界のステークホルダーは、持続可能な容器包装について、より多くの優れたリサイクル方法や、より優れた使い捨て製品、あるいは最適な使用材料という枠を超えて話を進めたいとしている。

「容器包装の分野で起こっている悲劇は、リサイクル可能である点ばかりが重要視され、環境負荷が小さいものとして排除されていることです」とAllaway氏は指摘する。「リサイクルや堆肥化が可能な容器包装は、より持続可能であると広く信じられています」

しかし、必ずしもそうとは限らない。オレゴン州DEQがライフサイクルアセスメントの文献を評価し、リサイクル可能・不可能な2種類の容器包装を比較したところ、約50%の確率でリサイクル可能な容器包装の方がライフサイクルにおける環境負荷が小さく、約50%ではその逆であることが判明した。また、堆肥化可能・不可能な2種類の容器包装を比較したところ、同様の結果が得られた。

「消費による気候への影響を考えるなら、『容器包装』をもっと総合的に見る必要があります」とGoldberg氏は話す。複数の外食企業と環境NGOの新たな提携「Single-Use Material Decelerator(使い捨て材料の減速機)」から生まれた「Understanding Packaging (UP) Scorecard(容器包装を理解するためのスコアカード)」は、総合的に見る一助になるだろう。現在ベータ版であるこのスコアカードは、食器や食品包装が環境や人間の健康に与える影響を総合的に評価するためのオンラインツールだ。

再利用・詰め替えソリューションに特化した非営利団体UpstreamのMatt Prindiville事務局長は、より総合的なアプローチとは、容器包装を製品としてではなくサービスとして捉え、再利用と詰め替えが可能なサプライチェーンを設計することを意味するとしている。

5. 再利用・詰め替え分野の、時間をかけた着実な成長

再利用のパイオニア企業であるAlgramo(チリ)とLoop(フランス)は、2021年も拡大を続けている。AlgramoはシリーズAラウンドで850万ドル(約9億6,500万円)を調達し、ジャカルタ・ニューヨーク・メキシコ・ロンドンに進出するための資金を調達した。

小売業の仏Carrefourは、ループと提携する9社のうちの1社で、再利用可能な容器サービスを店舗内で提供している/Image via Loop

ループも好調で、アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・日本で店舗を運営している。ループの再利用可能な容器サービスは、日本・フランス・イギリスの大手食料品店で提供されており、アメリカでは2022年に、クローガーとウォルグリーン、バーガーキングで提供が開始される予定だ。

さらに、廃棄物管理の米テラサイクル社の最高経営責任者(CEO)であるTom Szaky氏によると、店舗での再利用可能な容器サービスの運営規模は拡大しているという。「現時点で当社の提携先は、消費者が関心を持っているかどうかは求めていません」とSzaky氏は話す。「いまは、より多くの店舗と製品が必要なときです。私たちはワクワクするような局面を迎えているのです」

ビール業界では、詰め替え戦略が進んでいる。たとえばオンタリオ州では、販売されるビールの85%で再利用できる詰め替え容器が導入されている。米国では、オレゴン州酒造組合(Oregon Brewers Association)が同州の大手地ビールメーカー12社と共同で詰め替え用ビール瓶のプログラムを実施しているほか、シアトルにあるアリーナClimate Pledge Arenaでは、再利用できるビールカップを導入している。

こうした明るい話題はあるが、なかなか進展が見られないのも事実だ。EMFのShepherd氏によると、2021年に再利用に関するパイロットは50%増加したが、ごく少ない市場、または製品ラインアップでの小規模な取り組みであるという。「あまり野心的な取り組みには見えません」とShepherd氏は話す。さらに、国連グローバル・コンパクトの署名企業が使用している再利用可能な容器包装の割合は、全体の2%未満と極めて低い水準にとどまっている。

最大の障壁は「ビジョンの欠如」であるとPrindiville氏は話す。進展を加速させるべく、外食企業が調達している既存の使い捨て製品を登録して、それらの製品の基準コストと環境データを取得し、再利用可能な製品と比較できるようにするソフトウェアをUpstreamが2023年にリリースする予定だ。

Prindiville氏によると、取り組みの勢いを加速させるため、EPRに関する法律に再利用・詰め替え目標が追加される可能性があり、欧州委員会は循環型経済行動計画の一環として、2022年4月に新たな再利用・詰め替え目標を発表する予定である。フランスはすでに、2025年までに使い捨てプラスチック容器包装を20%削減する目標を設定しており、そのうち少なくとも10%は容器包装の再利用によるものでなくてはならない。

投資会社の米クローズドループパートナーズの業務執行取締役であるKate Daly氏は、再利用と詰め替えの未来は、相互運用性や、継続的な実験と協力にかかっているとする。クローズドループは、カリフォルニア州の9店舗で4種類の再利用可能なカップシステムを試験し、消費者がよく利用する店舗ごとに異なる再利用システムを提供することが大きな懸念事項であると判明した。

さらにDaly氏は「容器包装の非常に高い回収率なくして、詰め替えモデルの成功はあり得ません」と指摘し、顧客と小売業者の両方にとって有効なプログラムの実験を継続する必要があるとしている。

「競合他社が一丸となって取り組むことが、私たちの力強い未来に大いにつながります」とDaly氏は補足する。「データの透明性を高め、小売業者の運用実態や、顧客の嗜好に合わせた方向性を導き出す必要もあります」

6. アカウンタビリティ(説明責任)

持続可能な包装連合のGoodrich氏は、2022年は説明責任にかかっているとGreenBizに語る。2025年まであと少しであることを指摘したうえで、各企業が策定した2025年の目標の進捗状況を評価できるUbuntoo社のスコアカードは、行動を促進する“素晴らしい”ツールであると評価した。

Szaky氏も、企業が実際に行動に移すことを望んでいる。Szaky氏がこれまで見てきた企業のなかで、小売業の英テスコの1社のみが、売上が減少するにもかかわらず、環境負荷が大きい特定の包装製品の販売を中止する“つらい”決断をしたという。

「『最終的な収益につながるのであれば、持続可能な活動をする』という企業の考え方から根本的に変わるとはまだ思えません」とSzaky氏は話す。「テスコのような犠牲を伴うサステナビリティの決断はまだ見たことがなく、私が注目しているのはそのような決断です。それこそが、世界を変える魔法なのです」

【翻訳元記事】The 6 sustainable packaging trends we’ll be watching in 2022

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