今さら何をと思われるかもしれないが、私たちはなぜサーキュラーエコノミーを推進する必要があるのだろうか。その中心的な理由の一つは、無尽蔵と思われてきた天然資源の有限性に気づき、可能な限り採掘を最少化させ、なおかつ循環的に利用する必要性に迫られているということだろう。さらに、採掘と利用に伴う温室効果ガスの排出による影響は、もはや毎年のように襲ってくる猛暑を持ち出すまでもなく、気候危機という形で地球規模で顕在化している。

日本人にとって天然資源と言えば国内ではほぼ賄えない化石燃料や金属を思い浮かべやすいかもしれないが、世界を見渡せば水もまた「水資源」という言い方をするほど有限性が高い。水専門家は、現状の経済活動を続けていけば、2030年までに世界の淡水の供給量は需要に対して40%足りなくなると試算する

地球規模で進む気候危機と都市化に伴う人口増加は、あらゆる命の源である水資源の安定的な確保と利用を難しくしていく。いよいよ、水資源の循環的な確保と利用のあり方、つまり水資源のサーキュラーエコノミーを進めるべき時が来ているのだ。

限りある水資源をこれからも安定的に確保しながら、無駄を少なく効率的に利用し続けられるようにするためには、水資源のサーキュラーエコノミーをどのように推進していくのが望ましいのか――。本稿では、以下の点を概説していきたい。

水資源循環システムとは何か?

水資源循環については、世界的なサーキュラーエコノミーの戦略や議論においてプラスチックや食料システム、ファッション、建築物ほど喫緊に取り組むべきテーマとしては位置づけられてこなかった。しかし、上述のように地球規模で水資源が希少化していく現状も踏まえた形で、アラップやanteagroup、エレン・マッカーサー財団は現存する水資源循環の取り組みをバタフライダイアグラムになぞらえた形で、自然による管理サイクルと人間による管理サイクルで捉えた図を公表している。水資源にReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)といった循環型手法を取り入れることによって、安全な水道サービスやエネルギー源として、あるいは養分その他の物質を運ぶ触媒として水の価値を最大化できることを示した。

図:アラップ・anteagroup・エレン・マッカーサー財団によるレポート

では、このような循環型でレジリエントな水資源循環システムを実現させるためには、どのようなアプローチで取り組めば良いのだろうか。サーキュラーエコノミーの具体的な方法であるいわゆる5Rのうち、Repair(リペア)をのぞくReduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)、Refuse(リフューズ)の各側面から見ていきたい。

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