新型コロナウイルス感染拡大の影響で、衛生管理の観点から医療品や生活必需品の使い捨てプラスチックの需要が全世界で増加した。実際に、今後の世界の容器包装市場は2019年の9千億米ドルから2021年の1兆米ドルへと拡大すると予測されている。

感染拡大の最中では衛生対策が最優先事項として、再利用や生分解性のプラスチックよりも使い捨てプラスチックが衛生的だという誤った認識が広がった。その結果、各国政府は使い捨てプラスチックの使用禁止令を解除または延期する措置を施した。この誤解を解くために、世界各国の科学者が2020年6月、再利用可能な包装は基本的な衛生管理が施されている場合は安全であるという声明を出した。

そして、将来に目を向けると、新型コロナウイルスは特定の容器包装のメガトレンドを変化させる可能性が高い。在宅勤務やサービスのデジタル化が増加するにつれ、多くの人がオンラインで商品を購入し宅配サービスを選択する傾向が強まり、ECが大幅に加速する。

サーキュラーエコノミーは、プラスチック廃棄物問題にアプローチし、経済回復の途上で重要な役割を果たす。プラスチック包装の変革は、コストや材料の節約をもたらすだけでなく、廃棄物削減と環境汚染を防ぐシステムを形成することができる。このビジョンの達成に役立つ循環型の投資機会で特に魅力的な2つの機会は下記のとおりだ。

本編は10の投資機会のうち、5,6を取り扱う。投資機会1.2は建築編を、投資機会3,4は運輸・交通編を参照

5. プラスチック容器包装の革新的な再利用ビジネスモデル

これらの投資機会は、公共部門と民間部門の目標達成に向けて役立つ分野を浮き彫りにしている。それらは、新型コロナウイルス感染症拡大によって引き起こされた課題への解決策を提供すると同時に、成長とイノベーションの促進、雇用の創出、SDGsと気候目標の達成など、政府の優先事項を満たす。

プラスチック包装の革新的な再利用ビジネスモデル

新型コロナウイルスの感染拡大より前から、2050年に海に漂うプラスチックごみの量が魚の数を上回るという推測からプラスチック汚染に関する認識が世界的に高まっていた。その問題に立ち向かうべく、プラスチックが廃棄物にならない革新的な再利用による解決策が存在する。それにより、ユーザーとビジネスに大きなメリットがもたらされ、より回復力のある低炭素経済が実現すると見込まれている。

再利用のビジネスモデルに投資することで、使い捨て容器包装の必要性を減らし、大きな経済的利益をもたらす

再利用のビジネスモデルにより、高品質の材料を経済圏の中で循環させ続けることができるため、材料の大幅な削減と社会的・環境的なメリットを享受することができる。使い捨てプラスチック包装の20%を再利用可能な代替品に置き換えることで、世界的に見て少なくとも100億米ドル相当の経済機会がもたらされるのと同時に、約600万トンの材料が節約につながる。さらに、再利用可能な包装は、「Physical Internet(物理的インターネット)」(標準化され、モジュール化された共有資産に基づくロジスティクスシステム)の実現に寄与すると注目され、米国だけで年間1,000億米ドルと推定される大きな経済的価値を引き出す可能性がある。これらの機会は未だほぼ活用されておらず、再利用可能な容器包装市場は継続的な成長を遂げ、2026年には1,450億米ドルに達すると予測されている。

経済的利益に加えて、再利用ビジネスモデルは、汚染対策に貢献し、ユーザーとビジネスの利益をもたらす上でも重要な役割を果たす

一例として、Material Economicsのレポートでは、プラスチック製品を再利用するビジネスモデルの導入により、2050年までに年間約300万トンの二酸化炭素排出量を削減できると推定されている。デジタルテクノロジーと顧客の嗜好の変化によって実現すれば、企業と顧客の両方にメリットをもたらす。例えば、再利用可能な包装の見た目や手触り、機能性を向上することでユーザー体験を向上し、製品をカスタマイズすることで顧客の個々のニーズを満たすことができる。そしてRFIDタグ、センサー、GPSなどのテクノロジーを駆使し、ユーザーの好みやシステムパフォーマンスに関する情報を収集することで、サービスの改善に役立てることができる。

さらに、企業はデポジット・リターン・スキームを導入し、ブランドロイヤルティと顧客維持にも繋げることができる。また、流通・物流を最適化し、再利用可能な容器に詰め替え品を供給することで梱包や輸送コストを削減することもできる。このように再利用可能なビジネスモデルを効率的な配送モデルと組み合わせることで、従来の使い捨てボトルと比較して、温室効果ガス排出量を80〜85%削減できると見込まれている。

再利用包装のソリューション開発を促進するための規制は、各国ですでに進行している

ペルー、オーストラリア、ジンバブエを含む国々では、プラスチック廃棄物汚染対策への共同の取り組みとして、使い捨てプラスチックを禁止する規制が施行されている。特に欧州委員会は、2021年までに10品目の使い捨てプラスチック製品を禁止する「使い捨てプラスチック指令(SUP指令)」を採用し、2030年までにEU市場で販売されるすべての包装材が再利用またはリサイクル可能であることを保証するための規制も導入した。 世界中で講じられているその他の措置には、生産者責任(EPR)制度の拡大、デポジット・リターン・スキーム、埋立税、包装材のリサイクル含有量や廃棄物削減などの必須要件の設定が含まれる。したがって、リターナブル包装市場は2018年の370億米ドルから2026年までに590億米ドルに成長すると予想されている。

ほとんどの再利用システムは、数十年にわたって稼働しているものもあり、洗浄プロセス変更を加えることなく、パンデミックの影響に耐えてきた。

宅配・集荷・返品サービスを提供する再利用ビジネスモデルは順調に機能している。再利用可能な容器を顧客に提供するLoopやVesselなどの企業は、新型コロナウイルスが感染拡大している数か月間に需要が急増し成功している。また、再利用モデルの1つである「外出先での補充」は、新型コロナウイルス禍では苦戦を強いられており、場合によっては使い捨て容器へのシフトがあった。しかし、この使い捨て容器の需要が急増したにも関わらず、人と人との接触を制限するシステムが再構成され、再利用可能なものを安全に使用し続けるための明確な公的ガイダンスにより、再利用市場が回復しつつある。

6. プラスチックの回収・分別・リサイクルのインフラ

回収・分別・リサイクルのインフラは、高品質材料の循環の規模拡大を促し、二次市場を可能にする投資機会を提供している。プラスチック包装の使用を化石由来原料の消費からデカップリング(分離)するシステムを作りながら経済回復を成し遂げ、海や土壌へプラスチックの流出を防ぐのと同時に気候目標を達成することができる。

リサイクルの経済性、品質、そして利用率を劇的に改善するには、物理​​的なインフラとテクノロジーを更新するための投資が必要

2016年には、不適切に管理されたプラスチックの世界シェアは約41%だったが、2040年には56%に増加し、年間の海に流出するプラスチック量はほぼ3倍になると予測されている。これは、現在世界に流通するプラスチック廃棄物の大部分が回収されていないことと、回収された廃棄物の一部が環境に直接投棄されていることが関係している。農村部は未回収の廃棄物の45%を占めており、海へのプラスチック流出も同様の割合を占めているため、適切に管理された回収率を高めるためには、農村部への投資が特に必要になる。中低所得国では、世界的にリサイクルされた全プラスチックの59%の回収においてインフォーマルセクターが重要な役割を果たしているため、セクターの公式化に投資することで、使用後のプラスチック包装の価値を高め、海への漏出が削減できる。

また、現状ではリサイクルのために収集されたプラスチックのバージン材料価値の35〜40%のみしか実際にリサイクルされていないことから、分別およびリサイクルの処理過程で損失が多く出ている。

この状況を改善するためには、分別およびリサイクルプロセスの規模拡大に投資をして、リサイクルの歩留まり、品質、および経済性を大幅に改善するためのアクションが求められる。具体的には、回収率を高める取り組みを補完するには、プロセス制御、化学マーキング技術、自動化など、最新の技術を駆使していく必要がある。しかし、競争力のある価格で二次流通を作りだすために、容器包装と材料の設計が重要となる。エレン・マッカーサー財団の2017年の報告書、「The new plastics economy: catalyzing action(新プラスチック経済:行動を促進する)」では、循環させるために設計された包装は、リサイクルの経済性を1トンあたり約190〜290億米ドル、またはOECD加盟国全体で年間20〜30億米ドル改善されると推定している。このようなメリットを活用するには、必要なプラスチックを確実に循環させるために、今後5年間だけで回収と再処理に少なくとも1,500億米ドルの投資が必要になる。ただし、廃棄物削減と再設計に関する重要なアクションがなければ、これらのコストは大幅に高くなる懸念も同時に浮かび上がっている。

特に容器包装の設計は、リサイクルの経済性に直接かつ重要な影響を及ぼす

根本的な容器包装の再設計と革新的な技術がなければ、プラスチック容器包装の約30%が再利用されることなく、非リサイクル品は追加のコストを発生させてしまう。一例としてフランスでは、リサイクルが難しい有色ボトルは、年間推定100万~200万米ドルのコストがリサイクルシステムに発生していると推定されている。

政策立案者は、リサイクルの経済性を改善し、再生プラスチック市場を創出する政策に注目を集めている

例えばEUでは、リサイクル率の向上を目的に、リサイクル不可能なプラスチック包装廃棄物に対する新しい税(1キログラムあたり0.80ユーロまたは1トンあたり800ユーロ)が2021年1月1日に導入された。また、新型コロナウイルス拡大以前には、 2030年までに分別とリサイクル能力を4倍に増やすという目標を掲げた循環型経済における「欧州プラスチック戦略(the EU Strategy for Plastics)」がある。また、「新循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」は、再利用とリサイクル性を考慮した製品設計の改善、複合素材の解消、製品における再生材含有量の向上、プラスチック廃棄物の分別回収の改善、必要に応じて使い捨てプラスチック削減などの政策を追加している。

リサイクルインフラへの投資は、気候変動問題にアプローチし、追加の雇用を創出する機会も提供する

Material Economicsの調査によると、欧州内で高品質のリサイクルプロセスを拡大すると、プラスチック生産に必要な材料投入量の最大60〜70%が供給でき、現在のアルミニウムのリサイクルレベルに近づくと示されている。同時に、リサイクルすることでCO2排出量の約90%が節約される。これらの技術は、気候目標を達成するだけでなく、高所得経済圏での雇用創出にも役立つ。複数の研究によると、1トンあたりのリサイクル品の処理だけでも、埋立の約20倍の雇用を維持し、リサイクル材料を使用するプラスチックメーカーは、埋立の約100倍の雇用を維持する。

新興国や低所得国の都市にとって、使用後プラスチックのインフラへの投資は、経済的および社会的機会を提供する

世界中で、推定1,500万〜2,000万人のウェイストピッカーが、廃棄物の非公式な収集・分別・リサイクルで日々の生計を立てている。世界中に見ても、彼らは公式セクターよりも多くのリサイクル用プラスチックを回収しており、これは世界の回収量の15〜20%を占める。しかし、新型コロナウイルスによって非公式のコミュニティは特に脆弱になり、ヘルスケア・衛生必需品・保護具へのアクセスが制限されているため、彼らの健康は危険にさらされている。さらにはリサイクルセンターの一時的な閉鎖により、彼らの仕事は脅かされているという。このように、同セクターへの投資と公式化は、材料の流通を維持しながら衛生状態を改善し、貧困を緩和する可能性を秘めている。

プラスチック汚染に効果的に取り組むためには、上流と下流の両方のソリューションを展開する統合アプローチが必要

プラスチックによる汚染を阻止するためには、回収・分別・リサイクルだけに焦点を充てるだけではなく、プラスチックの包括的な循環型経済の仕組みが必要である。具体的には、不要なプラスチック容器包装の排除や使い捨てから再利用モデルへの転換、産業と政府による相互補完的なシステムへの介入などが求められている。このような包括的な循環型経済のアプローチは、海洋に流入するプラスチック量を年間80%以上削減し、年間2,000億米ドルのコスト削減、25%の温室効果ガス排出量の削減、そして2040年までに70万人の追加雇用を創出する可能性がある。このような統合的なアプローチに向けた変化を促進するためには、目標を共有し、業界や地域を超えた協力が必要である。このような理由から、プラスチックの循環型経済という共通のビジョンの下で、「新プラスチック経済」(New Plastics Economy )のイニシアチブは過去4年間、企業や政府を結集してきた。今日、このビジョンは、「新プラスチック経済グローバルコミットメント(New Plastics Economy Global Commitment)」と「プラスチック協定(Plastics Pact)」のネットワークを通じて、プラスチックのバリューチェーンや公共民間部門を横断する 850 以上の組織を結びつけている。これらのイニシアチブは、不要なプラスチックを排除し、市場に流通しているすべてのプラスチックが再利用リサイクル、またはコンポスト可能なものになるように革新し、すべてのプラスチックを循環させ、経済にも環境にも影響を与えないようにするための集団行動を推進している。

【参照レポート】Plastic packaging Two circular investment opportunities towards a low-carbon and prosperous future

これまでのレポート

【建設編】新型コロナウイルス禍からの回復に向けた重点投資ポイント−建物のリノベーション促進、建築資材のリサイクル基盤整備を−(重点投資ポイント1.2)

【運輸・交通編】新型コロナウイルス禍からの回復に向けた重点投資ポイント−マルチモーダルシフトの推進、車両の修理・再製造・リサイクルインフラの整備を−(重点投資ポイント3.4)