建材の脱炭素と循環性向上に向けた新たなビジネスの規模は、2030年までに年間310〜460億ドル、2050年までに2340〜3600億ドル。世界経済フォーラム(WEF)とマッキンゼーによる調査結果だ。
建築物の建設・解体時に廃棄される資材は多い。世界で製造・廃棄される資材の3分の1が建築・土木に関連するものだ。リサイクルされる資材もあるが、分別できずにまとめて廃棄される資材が大半を占めるのが実情だ。この問題を解決するため、各国の事業者やスタートアップが循環型のビジネスモデルに参入しつつあり、技術開発も進む。
循環型のビジネスモデルを取り入れることで実現できる脱炭素の効果も、新しいビジネス機会の追い風となる。世界のGHG排出量の26%は建築・土木業界によるものとされ、気候変動に対する責任は大きい。
では、今後発展が見込まれる循環型ビジネスの機会はどのようなものか。冒頭の調査結果を紹介する世界経済フォーラムとマッキンゼーのレポートでは、6つの建材に焦点が当てられている。
6つの建材は、構造材として世界中の建造物を支えるコンクリートと鉄のほか、アルミニウム、プラスチック、ガラス、石膏。いずれも循環性に課題を抱え、製造過程で多くのGHGを排出する。裏を返せば、今後新たなテクノロジーやビジネスモデルが期待される材料だ。それぞれの建材において期待されるビジネスの機会と現状の課題を以下で紹介する。
なお、本記事で紹介するGHG・CO2排出量や経済効果についての値は、出典を明記しない限り同レポートおよびマッキンゼーの調査結果に基づく。
目次(前編)
1. コンクリート(セメント)
強度が高く施工が容易なコンクリートは世界中の構造物を支えている。GHG排出量は建材の中でも最も多く、世界のGHG排出量の7%を占める。
CO2排出量の多さはその製造過程に起因しており、そのため脱炭素が難しいともいわれる。コンクリートは、セメントに水や骨材(砂や砂利など)、混和材料を混ぜて形成される。セメントは石灰石を燃やしてつくられるが、石灰石を燃やす過程で必然的にCO2が排出される。
コンクリートでカーボンリサイクル
セメント業界のなかでも期待が高まっているのは、CCU(Carbon Capture and Utilization:二酸化炭素回収貯留)技術だ。
セメントの製造過程や他産業などで排出されるCO2をコンクリートに吸収させて固定するほか、CO2を利用した化学反応でコンクリートの原料を形成する方法もある。CO2を地中等に貯留するCCS(Carbon Capture and Storage:CO2の回収貯留)技術に対して、CCUはCO2をコンクリートの一部として利用するため「カーボンリサイクル」とも呼ばれ、循環型のアプローチと考えられている。
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