持続可能かつ循環型の製品を推進するツールとしての役割を担うEUエコデザイン規則(以下ESPR)は2024年7月18日から施行された。ESPRは、2020年にEUが採択したサーキュラーエコノミーアクションプラン2020における目標を達成するためのツールの一つだ。本規則はエネルギー関連製品に焦点を当てる「エコデザイン指令(2009年)」を大幅に改正するもので、その適用範囲が拡大した。加えて、製品の循環性向上を推進する要件が中心となり、そのための新要件が多数策定されている。そのなかでエコデザインに関わる要件は、EU市場で取引されるほぼすべての物理的製品を対象とし、下記のような要項を促進するための内容を定めるものである。
- 製品の耐久性・リユース性・アップグレード性・修理性の改善
- 製品のエネルギーおよび資源効率を高める
- 製品の循環性を妨げる物質への対策
- 再生材の使用の促進
- 製品のリマン・リサイクルの簡易化
- カーボン・環境フットプリントにおけるルール形成
- 製品のサステナビリティに関する情報開示の改善
新たな要件のなかで世界から最も注目を浴びているものの一つがデジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入である。これはEU市場で取引される製品・部品・材料のサステナビリティ関連情報を示すデータセットを付帯するというものであり、これまでに前例のないものだ。それゆえ、日本の産業界を含めEU市場で事業活動を行う業界からも大きな注目を集めている。DPPには概ね以下のような製品に関する情報が保管される。なお搭載データの詳細に関しては、それぞれの製品グループ別に二次規制により決定されることになっている。
- 製品の技術的な性能
- 材料とその由来
- 修理活動
- リサイクルに関する可能性
- ライフサイクルにおける環境負荷
ESPRは、対象となる製品が非常に幅広く、完成品に加え部品や材料も対象となるため、影響を受ける業界からは多数の疑問の声がある。特にEU初の試みとなるDPPについては、参照となる実物がまだ存在しないこともあり、スコープや定義、搭載データ、実装から運営まで、対応の必要なステークホルダーは右往左往しているのが現状だ。こうした状況を考慮し、欧州委員会はステークホルダーを対象としたワークショップを複数にわたって開催するなど、DPPに関する情報の拡散に努めている。9月にはこれまでに欧州委員会が実施したフィードバックにより収集された情報をもとに、業界からの疑問に回答する「FAQ」を発表した。ここでは、その一部を紹介する。
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