欧州委員会は2月19日、「農業・食料ビジョン」を公表した。EU域内の農業競争力の強化を中心とし、掲げる方針は以下の4つだ。

  • 魅力的な農業・食料部門を築く
  • 競争力のある強靭な部門を育てる
  • 将来性のある部門への環境を整える
  • 農村部における食料、公正な生活、労働条件に焦点をあてる

EU域内の農業は厳格な環境基準を満たすことが求められる一方で、安価な輸入品に対する競争にさらされ、食料の販売価格は生産コストを下回る場合もある。ビジョンは農家の置かれる「不当な」競争環境を解消すべく、輸入品の基準強化を進める。同時に若年層の農家支援に焦点をあて、収入改善や公共支援の公正化をはかる。

自然に配慮する農家に利が出る仕組みづくりを目指す一方で、農薬の使用制限については慎重に進めるとした。規制よりもインセンティブを重視する姿勢がみえる。

EUが1月に示した「競争力コンパス」の方針も反映し、規制の簡素化にも言及した。「より多くの現場作業を、より少ない書類で」とビジョン策定の責任者である欧州委のハンセン氏は、自身のXのアカウントで強調。

インフレなどさまざまな圧力に苦しむEUの農業生産者を、多方面から支援する狙いだ。

一方で「農業・食料ビジョン」には批判も目立つ。それはなぜか。本記事ではビジョン策定にいたる背景と各関係者の反応を解説する。

1. 野心的な環境規制に伴う生産者の苦悩

2023年末から2024年、EU各地で農民デモが相次いだ。

農民デモの主な要因の一つとなったのは、所得を保障するための補助金を農業生産者に直接支払う「EU共通農業政策(CAP)」の運用方針だ。CAPにはEU全体の予算のなんと約25%(2023年※[1])が充てられ、農業生産者の命綱となっている。

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