気候変動対策で想起するものはと問われれば、再生可能エネルギーへの移行という答えが大半だろう。確かに再生可能エネルギーは温室効果ガス削減の最重要テーマであることは周知の通りだ。だが、再生可能エネルギーの取り組みだけでは十分ではないことが明らかになった。

2019年9月23日、英国に本拠を置くサーキュラーエコノミー推進団体のエレン・マッカーサー財団がスウェーデンのサステナビリティコンサルティングファーム、マテリアルエコノミクスとの協働により発表したレポート “COMPLETING THE PICTURE: HOW THE CIRCULAR ECONOMY TACKLES CLIMATE CHANGE“(「全体像を完成させる:サーキュラーエコノミーがどのように気候変動対策に取り組むのか」)では、再生可能エネルギーへの移行に加えてサーキュラーエコノミーを推進することが脱炭素社会の鍵となることが示された。

このレポートは、国連のグテーレス事務総長が主導した国連気候行動サミットの開催日である2019年9月23日に合わせて発行されたものであり、気候変動に取り組む上でサーキュラーエコノミーが果たす役割を忘れてはならないと警鐘を鳴らす形となった。

まず、再生可能エネルギーとエネルギー利用効率化は、全ての温室効果ガス排出のうち55%に対しての取り組みであり、仮にこの55%が解決されたとしても、残りの45%にはアプローチされないと指摘。残りの45%は耐久消費財や食料、日用品などの消耗品の製造や利用で占めている。

今後、2050年までに鉄やアルミニウム、セメントなどの原料の需要は現在の2倍から4倍に高まり、食料についても42%増加する見込みであるとしている。これらの業界の再生可能エネルギーの導入スピードは決して早くないため、2050年までに温室効果ガス排出ゼロ(ゼロエミッション)を達成することを難しくしている。したがって、この45%にアプローチをしないと根本的な解決にはならないというものだ。

サーキュラーエコノミーを推進する上での重点分野は、セメント・アルミニウム・鉄・プラスチック・食の5つであると提示している。この5つの分野に取り組むだけでも、45%の半分程度の温室効果ガス削減となり、現在の運輸部門からの排出値に相当する93億トン(CO2換算)もの温室効果ガス排出(世界全体の排出量の21%)が削減できるという。

エレン・マッカーサー財団が定義するサーキュラーエコノミーの3原則と気候変動対策との関係

レポートでは、エレン・マッカーサー財団が定義をしているサーキュラーエコノミーの3原則が気候変動対策とどう関連するかが説明されている。

1つ目は、廃棄と汚染を出さない設計を行うというものだ。あらかじめ設計(デザイン)の段階から廃棄や汚染を出さないデザイン、すなわち製品を使い続けられたり、環境を再生したりする製品を予め設計をしておくというものだ。さらに細かく3つの戦略に分類される。①製品を循環させるための設計(デザイン) ② 廃棄を出さないための設計 ③原料の代替である。気候変動対策においては、バリューチェーン全体での温室効果ガス排出を減少させる効果が期待される。例えば、上記①②に該当するが、詰め替えボトルが化粧品のすべての製品に導入されれば、使い捨てボトルと比べて、80%から85%の温室効果ガス削減が見込まれる。

2つ目は、製品と原料(素材)を使い続けること。さらに2つの戦略に分類される。①製品や部品の再利用 ②原料の再循環である。新しい原料の利用や廃棄に伴うCO2発生を抑制させることができる。加えて、製造に要したCO2を製品の中にとどめておくことができる点において、温室効果ガス排出削減に寄与する。

3つ目は、自然のシステムを再生させることである。このレポートでは主に環境再生型農業のことを指している。炭素を植物と土に固定させることで、多様な種が共存する健康な土に再生、カーボンポジティブ(二酸化炭素排出よりも多く吸収すること)にしようというものだ。

上記をまとめて図で明示したものが、レポートでも掲載されている通称「バタフライダイアグラム」だ。ぜひ参照いただきたい。

サーキュラーエコノミーが生み出すもの

同レポートの主旨は、サーキュラーエコノミーが温室効果ガス削減に対して果たす役割を明らかにすることにあるが、サーキュラーエコノミーの本質を付け加えることも忘れていない。サーキュラーエコノミーは、従来のビジネスモデル以上に、様々なセクターやバリューチェーンが共創されなければ実現されない。わかりやすい例でいうと回収である。

これまで従来型のバリューチェーンの中では重視されていなかった回収をどの地点でどの企業と協同していくかを考え実行していく工程が新たに発生する。既存のバリューチェーンをサーキュラー型(あるいはサステナブル)にしていくことと、リサイクル素材の提供者や回収・廃棄物処理事業者・修理事業者・物流など新たなパートナー構築(共創)が同時に求められている。その結果、残りの45%にアプローチが可能になると同時に、ビジネスモデルの変革やイノベーションの創出、雇用の拡大が見込まれる。したがって、環境負荷と経済成長をデカップリング(分離)することにつながる。

レポートが果たす役割

サーキュラーエコノミーを企業戦略や政策に組み込むことが気候変動対策になることが明示されたことで、企業や公的セクターのサステナビリティ戦略に影響を与えるだろう。現在のところ、多くの組織の気候変動対策のうち再生可能エネルギーの占める割合が大きく、サーキュラーエコノミーに対して焦点が当てられることが少ないからだ。その意味ではこのレポートが果たす役割は大きい。

【参考文献】Ellen MacArthur Foundation (2019) COMPLETING THE PICTURE: HOW THE CIRCULAR ECONOMY TACKLES CLIMATE CHANGE
【参照サイト】Ellen MacArthur Foundation “Butterfly Diagram”