目次
1. 欧州自動車産業の現状
EUによる気候変動対策やサーキュラーエコノミー政策に伴う新規制の導入・規制強化に伴い、欧州の自動車業界は現在大きな転換期に直面している。新要件へ対応していくため、自動車の電化や循環性の推進をはじめとする新事業戦略の展開が必要となったからだ。特にEVへの移行には欧州自動車メーカーは多大な投資を行ってきた。しかしながら、近年のEV販売の伸び悩みとともに欧州に停滞するインフレは、自動車販売全体に大きな影を落としている。そこへ中国による安価なEVが欧州市場へ参入、その攻勢的な市場展開に欧州自動車メーカーは競争力を失いつつある。さらに、2025年から適用となった排ガス規制(以下EURO7)における排出削減目標値は、達成できない場合多額の罰金を伴うことになっている。そのため自動車メーカーの負担はさらに大きくなり、欧州自動車メーカーを束ねる欧州自動車工業会(ACEA)は、EUへ向け救済措置を要請した。
これを受けて欧州委員会委員長フォン・デア・ライエン氏は、2025年1月主要自動車メーカーを招集し、「欧州自動車産業の将来に関する戦略的対話」を開いた。そこで挙げられた意見や要請に基づき、2025年3月5日に欧州委員会は「欧州自動車部門に関する産業行動計画」を発表した。同政策は、欧州自動車業界におけるバリューチェーンの事業能力を大きく引き上げることを焦点としており、欧州自動車メーカーの競争力を高める新技術の推進が含まれている。さらに、規制の強化にあえぐ自動車業界の要請を反映し、CO2排出削減目標値緩和への提案書も今回のパッケージに含めた。
2. 欧州自動車部門に関する産業行動計画とは?
「欧州自動車部門に関する産業行動計画」には、イノベーション・デジタル化、クリーンモビリティへの移行、競争力・サプライチェーン上のレジリエンスの確保、社会規模での技術改善、公正な市場と競争力のある事業環境の保証の5つの項目が掲げられている。

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