※本記事は、SCI-Japan(一般社団法人スマートシティ・インスティテュート)の会員向けに配信されたコラムの転載となります。
2023年5月から6月にかけて、フィンランド・ヘルシンキ、英国・ロンドン、フランス・パリ、オランダ・アムステルダムの4都市における循環経済の取り組みについて取材・視察を進めてきた。
本コラムでは全3回に分けて、欧州各都市の循環経済をめぐる議論や事例をご紹介した上で、それらの示唆に基づいて今後日本がどのように循環経済を推進していくべきかについて、日本における実践も踏まえながら考察する。
第1回となる今回は、2023年5月29日から6月2日にかけて行われた、世界循環経済フォーラムの様子をご紹介したい。本フォーラムの総括については主催となるSitraよりレポートが公表されているほか、会議の要点についてはデロイト トーマツ社による視察報告が、現地の臨場感ある様子については循環思考メディア「環境と人」の 視察報告で大変分かりやすく伝えてくれているので、ぜひそちらを参考にしていただきたい。本稿では、少し異なった角度から世界循環経済フォーラムを捉えていく。
フィンランドの独立100周年となる2017年に第1回が行われ、今年で7回目の開催となる世界循環経済フォーラム。今年はSitra(フィンランドイノベーション基金)とNordic Innovationの共催のもと、フィンランド・ヘルシンキの現地会場とオンラインのハイブリッド開催で行われた。世界155カ国から8200名以上の登録があった今年は、日本からも10番目に多い167名の登録があり、関心の高さが伺えた。
今年のメインテーマを一言でまとめると、「ネイチャーポジティブの実現に向けてどのように若者とともに循環経済への移行を進めていけるか」だ。フォーラムの冒頭で、Sitraの代表を務めるJurki Katainsen氏は、特に今年焦点を当てたポイントとして「企業」と「若者」という2つのキーワードを挙げた。
実際に今年は多くのセッションがネイチャーポジティブ・循環経済の実現に向けたビジネスやファイナンスに関わるものだったが、現地で会議に参加してみて、参加者の反応も含めて個人的に最も印象に残ったのは、1日目の最後に行われた「Visions for a circular future by young leaders」という「若者」に焦点を当てたセッションだった。
若者とグローバルサウスの「声を聞く」だけの時代はもう終わり
同セッションでは、ただ若者に焦点を当てるだけではなく、ガーナからリジェネラティブ農業を手がけるSabon SakeのCEO・Audrey S-Darko氏、タイからはGlobal Youth Biodiversity Network (GYBN) for Asia and Thailandでコーディネーターを務めるKittikun Saksung氏とタイ・ラッタサパーテレビで政治ジャーナリストを務めるKuncharee (Rijel) Thanaddoenkhao氏、そしてエクアドルからは環境人権アクティビストHelena Gualinga氏がパネリストとして登壇するなど、グローバルサウス出身の若者が多く参加している点が印象的だった。
この記事は、Circular Economy Hub 会員専用記事となります。