ANAインターコンチネンタルホテル東京は、館内に設置した堆肥製造装置で生ごみを堆肥化し、同装置を製造する株式会社有機醗酵の協力のもと、生成した堆肥を農家に販売する取り組みを4月1日より開始した。将来的には、生成した堆肥を使用して栽培された野菜や果物を同ホテルの食材として取り入れ、SDGsの取り組みの一つとして食資源循環につなげていく計画だ。

堆肥製造装置「エコ・ポスト」は、食品残さや肉・魚・野菜くずなどの生ごみを攪拌しながら24時間で分解して発酵させ、約5分の1の量の堆肥を生成する。同ホテルの2019年における生ごみ発生量は1日平均約1,000kgであり、エコ・ポストを館内に設置することで、ごみ排出量を大幅削減できるという。そこで、同装置での堆肥生成を2020年5月から試験導入し、装置に生ごみを投入する各部門従業員へごみの正しい分別手順の周知を図り日々経験を重ねることで、より一層良質な堆肥の生成に向け段階的に進めてきたとしている。実際に生成した堆肥の品質については、試験段階での提携農家から高評価を得られたため、今回正式に食資源循環の取り組みを開始し、安定した品質で販売していくことを目指す意向だ。

ANAインターコンチネンタルホテル東京が目指す食資源循環(出典:ANAインターコンチネンタルホテル東京)

総合型ホテルとしての社会的責任を経営の重要課題の一つと位置付ける同ホテルは、1986年の開業当初から、環境保全の取り組みを積極的に進めてきたとしている。今後も持続可能な社会の実現に向け、環境への配慮に責任を持ち、人と自然に優しいホテルを目指していく構えだ。

同ホテルがこれまでに実施してきたSDGsの取り組みは、以下のとおりである。

資源・エネルギーの再利用

  • 水の再利用(中水処理/2002年導入):厨房排水・雑排水・雨水・プールの水などをバイオ処理システムで再生し、トイレの洗浄水に再利用している
  • 食器洗浄機の蒸気熱の再利用(2019年導入):大型レストランの食器洗浄機で洗浄の際に発生する蒸気熱を回収し、その熱エネルギーを利用して洗浄すすぎ用の湯をつくっている

エネルギー消費の削減

  • 省エネルギー空調システム「ビル・エネルギー・マネジメント・システム(BEMS)」(2002年導入):ANAホテルズ独自のアプリケーション(当時)を搭載したシステムを全館導入し、最小限のエネルギーで最適室温を維持する空調制御を実現した。これにより、2003年度のエネルギー使用量を1990年度比で13.8%削減した実績を持つ
  • 遮熱フィルム(2002年導入):全客室の窓ガラスに遮熱フィルムを貼り、冷暖房効率向上を図っている
  • IHGグリーン・エンゲージ(世界のグループホテルで2009年より導入):環境に配慮したホテル運営を支援するオンラインシステム「IHGグリーン・エンゲージ」で、世界のグループホテルの電気・ガス・水の使用量や、CO2・廃棄物の排出量を継続的に監視・制御し、エネルギー消費削減に役立てている。同システムのもう一つの特色である「グリーン・ソリューション(Green Solutions)」は、ホテルにおける環境負荷低減に役立つ200以上の具体策を案内する機能だ
  • 照明のLED化(2017年より順次導入):客室・厨房・バックエリアの照明を全面的にLED照明に切り替えて室温上昇を抑えることで、空調の電力消費を削減している
  • プラスチックストローの使用廃止(2018年):客室・レストラン・宴会場において使い捨てプラスチックストローの使用を廃止し、プラスチックごみを削減している
  • 客室内でのその他の取り組み:人感センサーを全客室(844室)に設置し、不在室をセンサーが感知して空調・照明を自動的に消している。また、連泊客にシーツ・タオルの再利用を呼びかけてクリーニング量を減らし、水の節約や洗剤による水質汚染の減少を図っている。2019年度は、2016年比で再利用比率が約10%向上した

今後も同ホテルはSDGsを支援し、大規模ホテルとして特に消費量の大きい資源とエネルギーの有効活用を中心に、持続可能な社会の実現に貢献していく意向だ。

【プレスリリース】ANAインターコンチネンタルホテル東京 生ごみの堆肥化と食資源循環の取り組みを開始 堆肥を使って栽培された野菜や果物をホテルの食材に取り入れる計画も
【参照リリース】IHG、グループ全体で環境対策を本格化 オンラインシステム「IHG グリーン・エンゲージ」を世界の全ホテルで導入