株式会社エコリオはこのほど、事業会社の経営者・会社員を対象にサーキュラーエコノミーに関する調査を実施し、その結果を発表した。

サーキュラーエコノミーは環境負荷と経済成長をデカップリング(分離)させ、持続可能な成長を実現するための新たな経済モデルとして世界で注目を集めている。EUでは2015年12月に「サーキュラーエコノミーパッケージ」が採択され、日本では経済産業省が2020年5月に「循環経済ビジョン2020」を公表した。2021年3月には経産省・環境省・日本経済団体連合会による循環経済パートナーシップ(J4CE:ジェイフォース)が設立されるなど、サーキュラーエコノミー移行への取り組みが進められている。

今回、株式会社エコリオが公表した調査結果と考察は以下のとおり。

サーキュラーエコノミーの認知度

質問:サーキュラーエコノミーをご存じですか?
企業の経営者、課長クラス、主任・係長、一般社員は、「知らない」が過半数を占め、一般社員は7割以上が「知らない」と答えた。役職によって認知度に大きな差がみられた。

(出典:株式会社エコリオ)

「サーキュラーエコノミーの3原則」における取り組み

エレン・マッカーサー財団はサーキュラーエコノミーの3原則として、「自然のシステムを再生」「製品や資源を高い価値を保ったまま使い続ける」「ごみ・汚染を出さない設計」を掲げている。

質問:サーキュラーエコノミーの3原則の中で、貴社としての取り組みに最も近いものを選んでください

「ごみ・汚染を出さない設計」が14.8%、「製品や資源を高い価値を保ったまま使い続ける」が14.2%、「自然のシステムを再生」が8.4%、「取り組みを実施していない」が34.9%、「どれが近しいものかわからない」が27.7%という結果になった。3割以上の企業が、サーキュラーエコノミー移行への取り組みをまだ実施していない。

質問:貴社におけるサーキュラーエコノミーの3原則の取り組みを「サーキュラーエコノミー」という概念を理解したうえで責任を持って取り組んでいますか?(対象:上記の質問で、「ごみ・汚染を出さない設計」「製品や資源を高い価値を保ったまま使い続ける」「自然のシステムを再生」と回答した人)

「はい」が70.0%、「いいえ」が30.0%となり、サーキュラーエコノミー移行に向けて取り組みを始めている企業の多くは、しっかりその概念を理解し、責任を持って取り組んでいると思われる。

責任を持って取り組めている理由の例
  • 一人一人が徹底するよう目標を掲げているから
  • 社内に部署を作り、会社全体の廃棄物を管理している
  • 中長期戦略にサーキュラーエコノミー実現を掲げ、KPIにて実績を管理し、取り組み状況を確認して改善している
責任を持って取り組めていない理由の例
  • 本業の事業業績が芳しくないため、ESGへの積極的な取り組みがおろそかになる
  • 企業としては小手先の導入に留まっていると考えるが、自身にその導入に関する権限がなく、深く関われていない
  • 具体的なアプローチ方法が系統確立できていない

サーキュラーエコノミー移行に向けて、今後必要な取り組みと懸念事項

質問:サーキュラーエコノミーについて、今後企業として実施する必要があると考えている取り組みはありますか?

40.6%の人が「ある」と答え、59.4%の人が「ない」と答えた。

「ある」と回答した人が考える、今後企業として実施するべき取り組み例
  • 省エネ製品の使用、自然循環エネルギーでの企業活動
  • リサイクルとリユース。フェアトレードに基づく商業契約
  • 環境保護の意識を醸成する
サーキュラーエコノミーについての取り組みで想定される課題や懸念点とは?
  • 意識改革
  • 費用対効果の観点からあまりコストをかけずに実施するにはどうすればよいか
  • 再利用することで品質をどのように担保していくかが課題

サーキュラーエコノミーの重要度

質問:サーキュラーエコノミーは、今後の事業運営(企業経営)に関わる取り組みだと思いますか?

「とてもそう思う」が19.1%、「ややそう思う」が38.6%、「あまりそう思わない」が26.1%、「まったくそう思わない」が16.2%だった。約6割の人が、サーキュラーエコノミーは今後の事業運営に関わる重要な取り組みであると見ている。

今回の調査では、約6割の人がサーキュラーエコノミーは今後の事業運営に関わると認識しているものの、サーキュラーエコノミーの認知度が低いことが明らかになった。サーキュラーエコノミー移行には行政・企業・消費者の協働が必要となることから、まずは意識醸造のための教育が必要となるだろう。コストに関する懸念に関しては、ベストプラクティスの共有やイノベーション促進などが懸念解消に寄与すると考えられる。サーキュラーエコノミーの推進においては、異業種・異分野連携が生まれ、地域のつながりの再構築やオープンイノベーションにつながることも期待されている。

株式会社エコリオ

業務用厨房機・揚げカス搾り機の製造メーカー。食品由来の廃棄物を無駄なく有価物に変えることを目標とし、飼料原料・植物油脂の製造販売などの事業にて環境貢献・社会問題に取り組んでいる。

【プレスリリース】【サーキュラーエコノミー(循環経済)に関する調査】企業経営に関わる取り組みと認識しているものの、個人の意識の低さが露呈する結果に
【関連記事】日本のサーキュラーエコノミーの現在地と未来。経済産業省・羽田氏に聞く
【関連記事】テラサイクルジャパンとFabric、年次調査を発表。過剰包装への消費者意識が急上昇
【関連記事】ネオマーケティング、消費者1,000人を対象とした環境意識に関する調査結果を発表