環境省に設置された中央環境審議会の循環型社会部会はこのほど、報告書「第四次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第2回点検結果(循環経済工程表)(素案)」を発表した。

2018年に閣議決定された「第四次循環型社会形成推進基本計画」は2年に1回程度、中央環境審議会が循環基本計画に基づく施策の進捗状況を評価・点検すると定めている。第1回の点検では、「多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化」「万全な災害廃棄物処理体制の構築」「適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進」の3つを重点点検分野に定め、進捗状況を評価・点検した。

今回実施した点検では、「ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」を重点点検分野に設定した。加えて、これと密接に関連する分野「持続可能な社会づくりとの統合的取り組み」「多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化」「適正処理のさらなる推進と環境再生」「適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進」などについても評価・点検した。点検結果は、以下のとおり。

  • ライフサイクル全体での徹底的な資源循環:「国民1人当たりの一次資源等価換算した天然資源などの消費量」は改善傾向に、「リユース市場規模」「シェアリング市場規模」は拡大傾向にある。評価素材群は、現行の循環基本計画が取り上げているプラスチック、バイオマス、ベースメタルやレアメタルなどの金属、土石・建設材料、温暖化対策などにより新たに普及した製品
  • 持続可能な社会づくりとの統合的取り組み:「循環型社会ビジネスの市場規模」は年々増加傾向にあるが、目標達成は厳しい状況にあり、さらなる市場規模拡大が必要だ。「廃棄物の原燃料・廃棄物発電などへの活用による他部門での温室効果ガスの排出削減量」は増加傾向にある
  • 多種多様な地域循環共生圏形成による地域活性化:2000年度から各種ごみ排出量は削減されてきたが、近年は削減率が減っており、特に事業系ごみ排出量は横ばい傾向となっている。地域循環共生圏形成に取り組む地方公共団体数は少なく、地域循環共生圏についての認知度も低いことから、認知度を引き上げることが重要だ
  • 適正処理のさらなる推進と環境再生:「不法投棄量」「不適正処理量」「不法投棄件数」「不適正処理件数」は2000~2005年頃と比べると改善傾向にあるが、不法投棄や不適正処理事案の発生について監視を継続する必要がある。「一般廃棄物最終処分場の残余年数」「産業廃棄物最終処分場の残余年数」はすでに目標を達成している
  • 適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開の推進:「資源循環分野を含む環境協力に関する覚書締結などを結んだ国の数」は年々増加しており、取り組みが進んでいる。「循環産業海外展開事業化促進事業数」は長期的には減少傾向かつ近年横ばいで推移しており、さらなる取り組みが求められる

これらの評価・点検結果をもとに、循環経済工程表の素案を下記のように取りまとめた。

  1. 循環経済の役割と2050年を見据えた目指すべき方向性:現在の経済社会の物質フローをライフサイクル全体で徹底的に資源循環させるフローに最適化していく
  2. 素材ごとの方向性:現行の循環基本計画に示されている各素材のライフサイクル全体での資源循環の方向性に加えて、以下が推奨される。素材ごとにライフサイクル・バリューチェーン全体でのロスゼロを目指す。製品のライフサイクルの段階の多くを海外に依存しているモノについては、トレーサビリティを確保し、サプライチェーン上でのリスクや社会的責任に対応することが重要だ。脱炭素シナリオの研究や、資源循環の取り組みによる脱炭素社会への貢献に関する分析による知見の充実も求められる。素材ごとの施策の展開・効率化・高付加価値化を進め、3R+Renewable(再生)の取り組みの展開が望まれる
  3. 製品ごとの方向性:ライフサイクル全体で資源循環させるフローを最適化する。修理・分解・交換・アップデートなどが容易にできる設計や再生可能資源の促進、再利用・修理・サブスクリプションなどの循環型事業モデルの取り組みを推進する
  4. 循環経済関連ビジネス促進の方向性:循環経済に関する技術を持つ企業や循環経済関連ビジネスの構想を持つ企業が連携して取り組みを社会実装し、各国からESG投資が呼び込まれる社会を目指す
  5. 廃棄物処理システムの方向性:廃棄物・資源循環分野における脱炭素技術の評価検証や、廃棄物処理システムと施設整備の方針などの検討を進め、2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進める
  6. 地域の循環システムの方向性:地域循環共生圏を踏まえた資源循環モデルを提示し、廃棄物を地域の資源として活用する取り組みを推進する。2025年度までに資源循環分野における地域循環共生圏の構築を推進するためのガイダンスを策定する
  7. 適正処理の方向性:まず3R+Renewableを徹底し、その後、なお残る廃棄物の適正処理を確保するという優先順位で取り組む
  8. 国際的な循環経済促進の方向性:日本の循環産業や資源循環モデルの海外展開を推進し、世界規模での脱炭素や循環経済への移行に貢献する
  9. 各主体による連携、人材育成の方向性:循環経済への移行に向けて幅広い関係主体が連携し、官民一体での取り組みを推進する。「循環経済パートナーシップ(J4CE)」を活用して循環経済促進に取り組み、国内外に情報発信する。優れた能力・知識を有する人材育成に取り組む

同報告書作成に当たっては意見公募が実施され、幅広い関係主体から計143人が参加したワークショップも開催された。今回の点検は、「第五次環境基本計画」の点検における分野別の点検としても位置付けられており、点検結果の概要は総合政策部会に報告され、第五次環境基本計画の評価・点検の一環になる。

2050年を見据えて持続可能な社会を実現するべく、同報告書は循環経済アプローチ推進による循環型社会の方向性を示し、ライフサイクル全体での資源循環に基づく脱炭素化の取り組みの推進を図るものであると環境省は公表している。資源調達・製品設計・修理工程・廃棄物処理などの製品のライフサイクル全体、そして情報発信・人材育成まで、循環経済アプローチ推進を包括的に後押しする内容を有する同工程表をもとに、業界を超えたステークホルダーと国が共同で循環型社会構築への取り組みを進めていくことが期待される。

【参照サイト】中央環境審議会循環型社会部会(第41回)議事次第・資料
【参照資料】第四次循環型社会形成推進基本計画の進捗状況の第2回点検結果(循環経済工程表)(素案)
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