国際環境NGOグリーンピース・ジャパンはこのほど、大手カフェチェーンとコンビニエンスストアによる使い捨てカップや容器包装の直近の消費量を明らかにした報告書「変革を先導するー日本のコンビニエンスストアとカフェチェーンの企業責任およびリユースの解決策」を発表した。

本報告書では、日本の大手カフェチェーン3社(スターバックスコーヒージャパン、タリーズコーヒー、プロント)と、大手コンビニチェーン3社(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン)によるプラスチックや紙の使い捨てカップや容器包装の消費量を算出した上で、テイクアウト飲料の提供をリユースカップシステムへ移行した場合の環境影響評価(LCA)を調べた。その結果、カフェやコンビニが2023年に消費した使い捨てカップをリユースカップシステムへ移行した場合、CO2換算排出量、化石燃料の消費量、水の使用量をはじめとする項目で環境負荷が大幅に低減することが分かった。

目立つイートインでの使い捨て容器使用

報告書によると、カフェチェーン3社による2023年の使い捨てカップ消費量の合計は、推定4億7480万個で、2020年の3社の消費量よりも1億3000万個増えた。最多はスターバックスで3億4200万個、次いでタリーズの1億1140万個、プロントは2,130万個だった。

大手カフェチェーン3社が2023年と2020年に消費した使い捨てカップの総数
(単位:個)と、2023年に消費した使い捨てカップの総量(単位:トン) <報告書8ページより>

報告書を担当したグリーンピース・ジャパン プラスチック問題担当の大館弘昌氏は「スターバックスはリユースカップによるテイクアウトも促進しているものの、店舗数の増加などによって消費量が大幅に増えてしまっている。また、各社ともにイートインでの使い捨てカップの使用がいまだに多すぎる」と言及。その上で、一部チェーンで実施されている、イートイン時にマグカップやグラスなどのリユース可能な容器による提供を原則とすることが大幅な削減につながると指摘した。

次に、大手コンビニ3社での2023年度の使い捨てカップ消費量の推定は19億個で、セブン-イレブン9億1400万個、ファミリーマート7億3400万個、ローソン3億2800万個だった。また、大手コンビニについては弁当容器やおにぎり・寿司の包装も調査。その結果、3社合計の消費量はおにぎり34億個分、弁当8億1,100万個分、寿司5億1,100万個分だった(いずれも推定)。

2023年度にセブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンがおにぎり、お弁当、お寿司の各カテゴリーで販売し
た商品の総数(単位:個)、商品に使用する使い捨て容器包装の要素の総数(単位:個)、および使い捨て容器包装の総
重量(単位:トン)<報告書15ページより>

今回コンビニチェーンの使い捨てカップや容器包装についても調査したことについて、大館氏は「コンビニについては削減の道筋は正直見えていないが、この報告書をきっかけにソリューションを検討する機運に結びついてほしい」と期待感を示した。

リユースの割合が低くても、使い捨てより環境負荷を低減できる

報告書では、テイクアウト飲料の提供をリユースカップシステムへ移行した場合の環境影響評価(LCA)の結果も公表した。それによると、1日のテイクアウト飲料を100%リユースカップで提供した場合、使い捨てカップに比べて、1カップ当たりのCO2換算排出量は57%、水の使用量は36%、化石燃料の消費量は62%削減される。また、リユースカップの提供割合が20%であっても、使い捨てよりもCO2換算排出量などを含む16項目すべてにわたって環境負荷が低減されたことも示された。

リユースカップと使い捨てカップ(PEラミネート加工された紙カップとPETカップの50:50)の気候変動への影響(単位:グラムCO2-Eq./飲料1杯)。レンタルリユースカップについては、1日のテイクアウト飲料200杯のうち、20%、40%、60%、80%、100%がリユースカップで提供される場合の5つのシナリオにおける気候変動への影響を示したとしている<報告書20ページより>

さらに、今回調査した大手カフェチェーンとコンビニ6社すべてが2023年にテイクアウト用に消費した22億個以上の使い捨てカップをレンタルリユースシステムに100%移行した場合、46万5,000平方メートルの水使用量、8800万キロのCO2換算排出量、石油換算3700万キロの化石燃料消費量を削減できるとした。

リユースシステムの構築に向けて業界を超えた連携を

報告書を受けて、グリーンピース・ジャパンの大館氏は4つの提言を行った。

  • サプライチェーン全体を通して発生する使い捨て容器包装廃棄物の量についての情報開示の透明化
  • 使い捨て容器包装全体を削減する野心的な目標、および目標達成に向けた進捗状況の共有
  • リユースシステム化への野心的な目標を掲げ、ロードマップを明示する
  • 業界を超えたリユースシステム化を進める可能性を探求する

大館氏は「仮に様々な企業が独自にリユースカップのシステムを立ち上げた場合、容器デザイン、輸送ルート、洗浄施設・洗浄方法がバラバラになってしまう可能性があり、これは環境的にもサービスとしても良いとは言えない。例えば、環境面に配慮したり、耐久性、洗浄・回収がしやすい容器デザインや洗浄方法など、システム全般にわたって標準化を進めたり、回収場所・輸送ルート、洗浄施設の共有など、効率化も検討されるべき。消費者にとっても、A社の容器はA社のお店でしか返却できないとなると、利便性にも影響し、日常生活に浸透させるのも困難になる。このような観点からも、早い段階での企業間の連携が必要になる」などとコメントした。

本報告書を監修した国立環境研究所 資源循環社会システム研究室室長 田崎智宏氏は「世界的に取り組みが進められているプラスチックの問題は、私たちの日常生活や事業活動に深く根付いている。そのため、企業側だけの取り組みでは対策を思うように進めることはできず、消費者側の取り組みも欠かせない。今回の調査結果を、大量プラスチック消費社会の現状を考え直すきっかけにしていくことが大切だ」と講評した。

日本の一人当たりプラスチック廃棄量は、米国に次ぐ世界第2位。すでに有料化されたレジ袋は日本のプラスチック廃棄量のわずか2%程度にすぎず、プラスチックの使用量削減に向けて抜本的に取り組むべきは使い捨て容器包装の削減である。店内ではリユースカップによる提供を求めたり、リユースカップを持ち歩くといった消費者側の行動変容は当然のことながら重要だが、使い捨て容器を提供する側の企業側による連携した取り組みへの第一歩をそろそろ踏み出す時ではないだろうか。

報告書全文(日本語版)はこちら

【プレスリリース】リユース移行で化石燃料消費量や水使用量が大幅低減、カフェ・コンビニの使い捨てカップーー報告書『変革を先導する』を発表

【参考資料】

【関連記事】リユースカップシステムは小規模でも使い捨てより優位。グリーンピース調査報告書