東京大学はこのほど、「未来戦略ライフサイクルアセスメント連携研究機構」を設立した。

ライフサイクルアセスメント(LCA)研究者を結集し、エネルギーや材料などの先端科学技術研究者とともに10部局を横断する同機構には、40名以上が参画する。技術開発と制度形成を牽引するべく、未来戦略の立案に貢献する「先制的LCA」の学理創成を目指す。

国内外の研究者・研究機関・企業・行政などと連携し、世界最先端の研究・教育・未来に向けた科学技術戦略を提言していく。機構内には、参画企業14社の先制的LCA社会連携研究部門も設け、産業界に有用な先制的LCA手法としての開発と社会実装を目指す。東京大学が2021年9月に発表した基本方針「UTokyo Compass 多様性の海へ:対話が創造する未来」に示した地球規模の課題解決に向けても貢献していきたい考えだ。

先制的LCAが目指す2050年のイメージは、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーで、これらの達成には革新技術の研究と開発が不可欠であると東京大学は考える。技術効果の評価には、技術が社会実装される時点での産業構造・社会構造に合わせた評価が必要であることから、同機構は革新技術の「標準的な」評価手法を確立することを目指す。加えて、持続可能な社会の実現に向けては国際社会の動向を鑑みつつ、消費・生産形態の変革における社会システムとしての統合的な設計が必要だとしている。

先制的LCAが目指す2050年のイメージ(出典:東京大学)

東京大学は同機構を通じて、先端科学技術とLCAの専門知識を併せ持つ人材の育成・情報発信・LCAの国際拠点形成に取り組んでいく計画だ。

先制的LCAの開発・実装を目指して同機構が展開する取り組みが、製品・サービスについての質の高い情報開示と公平な競争条件の確保に貢献し、サーキュラーエコノミー移行が加速していくことが期待される。

未来戦略LCA連携研究機構 連携部局

先端科学技術研究センター(主管部局)、大学院工学系研究科、大学院農学生命科学研究科、大学院経済学研究科、大学院総合文化研究科、大学院新領域創成科学研究科、大学院公共政策学連携研究部、生産技術研究所、未来ビジョン研究センター、環境安全研究センター

先制的LCA社会連携部門の参画企業14社(五十音順)

旭化成株式会社、会宝産業株式会社、株式会社神戸製鋼所、住友化学株式会社、積水化学工業株式会社、株式会社テクノバ、株式会社デンソー、凸版印刷株式会社、日本製鉄株式会社、マツダ株式会社、三菱ケミカル株式会社、株式会社IHI、JFEスチール株式会社、株式会社UACJ

【プレスリリース】「未来戦略LCA連携研究機構」2023年4月1日発足―LCA研究者を結集、先端科学技術研究者とともに未来社会をデザイン―
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