大成建設は4月16日、生物多様性への貢献度を簡易かつ定量的に可視化する評価手法「Japan Biodiversity Metric」を開発し、解説書を一般公開した。国内ではネイチャーポジティブの達成度を測る共通指標の整備が十分に進んでおらず、建設事業や保全活動への適用を想定した新たな枠組みとして注目される。
同手法は、生物の生息場としての価値を土地の「面積」と「質」の積として算出する点が特徴で、さらに緑地の成長を踏まえた時間軸の概念を組み込んでいる。これにより、一定期間にわたる累積的な評価が可能となり、開発前後の環境比較や複数の設計案の検討を通じて、開発前と比べて生物多様性が純増している状態を示す「ネットゲイン」の達成状況や、生物多様性への貢献量を定量的に評価できる。
背景には、COP15で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」において、ネイチャーポジティブが国際目標として掲げられたことがある。一方、日本ではその達成度を測る共通指標の整備が課題とされている。
国内のネイチャーポジティブ達成に向けては、企業が自然環境に与える影響や、その保全への貢献を、分かりやすく数値で示す方法の整備が課題となっている。こうした中、積水ハウスや東急不動産など、建築・不動産分野を中心に評価手法の開発が進められている。
今回のJapan Biodiversity Metricは、こうした動きと軌を一にしつつも、具体的な評価ロジックを一般公開し、社会全体での共有・活用を前提としている点に特徴がある。企業ごとの個別最適にとどまらず、標準化に向けた一歩となる可能性がある一方、他社ツールとの整合性や業界横断での比較可能性の確保が今後の論点となりそうだ。
同社は2023年10月から本評価手法の開発に着手し、2024年には環境経済学や生態学、地域計画学などの有識者で構成する検討委員会を設置した。北海道大学名誉教授の中村太士氏を座長に、東京大学や国立環境研究所などの専門家が参画し、学術的見地からの助言を受けながら開発を進めてきた。
本手法は、英国イングランドで導入されている、生物多様性の状態を数値で評価する指標「生物多様性メトリック」の知見をもとに設計された日本初の事例とされる。動植物の詳細な現地調査を前提とせず、土地被覆の状態から間接的に評価するため、計画段階から事後評価まで一貫して適用可能である点も特徴だ。設計案の比較や意思決定支援、情報開示など幅広い用途に活用できる。
大成建設は本手法を自社内にとどめず、社会全体で共有・活用できる基盤とする方針で、公開を通じて外部からの意見を取り入れながら継続的な改善を進める。今後は自社の設計・施工案件への適用も進め、より良い生物の生息場の創出を支援する評価手法として高度化を図る考えだ。
【プレスリリース】ネイチャーポジティブ評価手法「Japan Biodiversity Metric」を開発・公開
【参照サイト】Japan Biodiversity Metric
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