国立大学法人東京大学(以下、東京大学)と株式会社クボタ(以下、クボタ)はこのほど、産学協創協定を締結し、共同研究・人材育成・人材交流を推進していくと発表した。

「100年後の地球にできること」が、同協定のテーマだ。「食料・水・環境」分野において、効率的な食料生産・水の安定供給・再生などの課題解決と、自然共生・脱炭素・循環型社会の地球規模での実現を両立していくことが必要であると両組織はみている。そこで、両者の知見・技術・ネットワークを活用し、地域および地球規模で、自然共生(ビオ)と循環型社会(ループ)を両立する「ビオループ」の創生を目指す。同協定の期間は2021年12月1日から10年間で、クボタは総額約100億円を拠出するとしている。

同協定では、両組織が得意とする以下の研究・技術を融合し、「食料・水・環境」のビオループ創生とソリューションの提供を目指す。

  • 東京大学:自然現象や物質循環に関する現象解明やモデル化などの学術的研究
  • クボタ:食料・水・環境の分野におけるさまざまなデータを取得し分析するセンシング・データ解析・予測技術・可視化されたデータをもとに、行動に移すための機械設計や制御技術などの実践的な研究や技術開発

各分野の内容について、両組織は下記を発表した。

1.食料分野:農業の効率化により、豊かで安定した食料の生産に貢献

クボタの農業に関するスマート化技術と、東京大学の基本方針の重点項目であるデジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)技術を組み合わせ、新しい食料生産・流通・消費の循環「食のビオループ」創生を目指す。

2.水分野:水インフラの整備により安心できる水の供給と再生に貢献

両組織の水に関する先端技術や研究を融合し、安心できる水の供給と再生に取り組むことで、生物圏に配慮した新しい水循環の仕組み「水のビオループ」創生を目指す。

3.環境分野:社会基盤を整備し、快適な生活環境の創造と保全に貢献

温室効果ガス排出削減とその利用・資源循環への移行を実現し、持続可能かつ生物圏に負荷をかけない、快適な生活と環境保全を両立させる「環境のビオループ」創生を目指す。

4.人材交流・人材育成

食料・水・環境のビオループ創生を実現する人材は必要不可欠であることから、以下を実施する。

  • クボタの世界的事業網と拠点を活かし、東京大学の学生に世界的インターンシップの機会を提供するとともに、クボタ社員にリカレント教育を実施する
  • クボタと東京大学の研究者が交流し、両組織で積極的に共同研究できる制度を整える
  •  東京大学は「100年後の地球」を考える機会として教育プログラムをさまざまなステークホルダーに提供し、次世代育成のための持続的な教育も実施する


(画像の出典:国立大学法人東京大学、株式会社クボタ)

「食料・水・環境」分野は上図のように密接に関係している。これらの世界的課題の相関性を考慮しながら各課題の解決を目指す方法の一つに、ネクサスアプローチがある。現在、国内外のいくつかの学術機関が、「食料・水・エネルギー」などの分野におけるネクサスアプローチの採用について研究を進めている。今回、東京大学とクボタが10年間の協定を結んだことで、こうした総合的な研究が加速し、世界的課題の解決に貢献していくことが期待される。

【プレスリリース】東京大学とクボタによる産学協創協定の締結について
【参照サイト】ネクサスアプローチとは・意味