伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)はこのほど、株式会社ecommit(以下、ecommit)と業務提携契約を締結し、日本市場における繊維製品の回収サービス「Wear to Fashion(ウェア・トゥ・ファッション)」を展開すると発表した。2022年春、両社は全国の事業者・自治体を対象に順次サービス提供を開始する。

同サービス提供開始の背景には、衣服の廃棄問題がある。環境省によると、廃棄された衣服の約95%は焼却・埋め⽴て処分され、その量は年間約48万トンにのぼる。これは、⼤型トラック約130台分の衣服が毎⽇焼却・ 埋め⽴てされていることに相当する。

2019年春、伊藤忠商事は衣類の大量廃棄問題に焦点を当てたプロジェクト「RENU(レニュー)プロジェクト」を発足させた。同プロジェクトでは、使用済み衣類や生産工程で発生する生地片などを原材料とするリサイクルポリエステル素材「RENU」を展開している。株式会社ecommitは、全国における回収物流ネットワークと排出からリユース・リサイクルまでの追跡システムを構築することで、資源循環型事業を展開している。

伊藤忠商事は、同回収サービスを「RENUプロジェクト」の新たな取り組みとして位置付ける。同サービスでは、伊藤忠商事の繊維・ファッション産業におけるネットワークと、ecommitの回収から資源循環までの仕組みを融合させ、次のような拠点で排出される繊維製品を回収・選別して、再利用・再資源化を図る。排出拠点は、「小売店で回収した使用済みの衣類」「事業者における繊維廃棄物」「自治体による回収衣類」など。

再利用可能な製品はecommitの知見・技術を活用して再利用し、リサイクル可能なポリエステル製品は「RENU」の原材料とすることで、繊維製品の長寿命化と廃棄削減を促進し、資源を有効活用していく意向だ。同サービスを普及させることで、繊維・ファッション産業の事業者と自治体の廃棄に関わる課題を多角的に解決し、サーキュラーエコノミーへの移行を目指すとしている。

伊藤忠商事は、中期経営計画「Brand-new Deal 2023」の基本方針である【『マーケットイン』による事業変革】と【『SDGs』への貢献・取組強化】の一環として、繊維事業におけるサステナブル原料起点でのバリューチェーン構築に取り組んでいる。今後も、原料から製品までのバリューチェーンを軸に、事業モデルの進化や新サービスの提供などを通じて、繊維・ファッション産業におけるサステナビリティ課題の解決と持続可能な成長に貢献していきたい考えだ。

現在、世界中で衣服の廃棄削減に向けた動きが加速しており、一例としてフランスでは衣料品の売れ残り製品の埋め立てと焼却を禁止する法律が2022年1月に施行された。伊藤忠商事とecommitによる繊維製品の回収サービス提供が、衣類の廃棄問題解決に貢献していくことが期待される。

【プレスリリース】サーキュラー・エコノミーの実現を目指す繊維製品回収サービスの展開について
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*冒頭の画像の出典:伊藤忠商事株式会社