早稲田大学は9月19日、同大学とキリンホールディングス株式会社、栃木県農業総合研究センターが共同で、同センターの大麦試験圃においてバイオ炭施用によるビール大麦の生育状況や土壌への影響に関する研究を、10月に開始することを発表した。この共同研究は、環境再生型農業の可能性や生物多様性評価の高度化に寄与することを目的としており、気候変動の緩和や脱炭素社会の実現への貢献が期待されている。

研究では、栃木県農業総合研究センターがビール大麦の生育・収穫への影響や土壌の物理性・化学性の改善効果を解析し、早稲田大学が微生物の菌叢解析を担当する。キリンホールディングスは、発酵・バイオテクノロジーの技術を活用し、解析データからメカニズムを考察するとともに研究全体の取りまとめを行う。

さらに、バイオ炭施用による炭素貯留量の算定を通じ、J-クレジット制度への申請も視野に入れている。このプロジェクトは、基礎研究として位置づけられ、将来的にはビール大麦栽培農家へのバイオ炭の普及や温室効果ガス排出量削減に寄与することが期待される。

バイオ炭は、未利用バイオマスを350℃超の温度で加熱し作られる土壌改良資材であり、土壌の透水性向上や炭素貯留の効果があると言われている。バイオ炭を活用した農業は、化学肥料や農薬使用の環境負荷を軽減することから、環境再生型農業の実現が期待される。

また、早稲田大学の竹山教授は、ラマン分光解析技術や微小組織打ち抜き技術を駆使し、土壌微生物の解析技術を向上させている。この技術をビール大麦に応用し、循環型協生農業の推進に活かす考えだ。

【プレスリリース】ビール大麦試験圃場へのバイオ炭施用による効果を検証する新たな共同研究を開始
【参照記事】バイオ炭とは~農業分野での脱炭素~
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