ファッション業界は、消費財関連産業の中でも特に新型コロナウイルスの影響を受けた業界の一つである。2020年の世界のファッション業界の売上高は、27-30%の減少が見込まれている。新型コロナを受けてオンライン販売に重点を移す動きも見られるが、オンライン販売の売上高も世界的なロックダウンの影響で大幅に減少。ロックダウンが行われた4月までに29億米ドル相当の輸出が失われ、世界200万人以上のアパレル関連の労働者が影響を受けた。

一方で、衣服の十分な利用やリサイクルが低迷している影響で、ファッション業界では新型コロナの影響を受ける以前から年間5000億米ドル相当の価値が失われてきた。業界が及ぼしてきた環境への多大な負荷の削減がかつてなく求められているタイミングで、ファッション関連の小売店はかつてない規模の在庫の取り扱いに直面している。

企業側によるオンライン販売へのシフトやDXを通じたデジタルの強化、消費者側によるサステナブル志向のブランドへの支持や価格に対する意識の変化――。ファッション業界が直面するこうした新たな挑戦に対応しながら将来のトレンドを活用するためにも、サーキュラーエコノミーはファッション業界をよりレジリエントに、かつ地球環境にも価値ある産業にデザインし直すための魅力的な機会を提供するものだ。

ファッション業界でのサーキュラーエコノミー推進に向けた投資は、増え続ける消費に対してより多くの回数の利活用ができるよう、衣服はより多く使われるとともに、安全で、再生可能なエネルギーによって、かつリサイクルによる生産を強化する方向に向けられる必要がある。

具体的には、特に2つのテーマが投資機会として浮上する。

本編は10の投資機会のうち、7,8を取り扱う。投資機会1-6は下記参照

7. レンタル・再販ビジネスモデルの推進

レンタルや再販を通じて衣服が使い続けられるサーキュラー型のビジネスモデルに投資することは、ファッション業界にとって早く、かつ未来志向で業績を回復させることにつながる。

レンタル・再販ビジネスモデルを推進すれば、大量生産・消費に依存するリニア型のビジネスモデルに比べて一着当たりで得られる収入を増やすことができる。また、生産に関わるコストの削減で可能になる低価格化は、コロナ禍で服飾品への消費額を減らしている価格に敏感な顧客層を引き付ける。レンタルサービスのデジタルプラットフォーム「CaaStle」のデータによると、サービスのアクティブな利用者が消費した金額はコロナ禍以前よりも前年比125~175%増えたことが明らかになっている。レンタルに代表されるサービスモデルは、顧客の信頼感も高めているのだ。

レンタル・再販ビジネスモデルは、環境負荷の低減に貢献できる。実際、再販品1着を購入することによって平均で廃棄物1キロ、水約3000リットル、22キロのCO2を削減できるとされている。2019年のデータでは、再販品購入のうち米国と英国で65%、中国で41%が新品の購入を回避することにつながった。これは、2050年までに世界の温室効果ガス排出に占める割合が26%超となることが見込まれるファッション業界にとっては、非常に大きなことである。

世界では、フランスのサーキュラーエコノミー法で在庫や返品衣類の破棄をすでに禁じているほか、国連やOECDではファッション業界によるサステナビリティに向けた横断的な取り組みも行われている。コロナ禍以降、70%の顧客がファッション業界は気候変動への対策に取り組むべきと考えているというデータからも明らかなように、環境に配慮したブランドへのニーズが高まっていることとも相まって、ファッション業界にとってはレンタル・再販ビジネスモデルへの投資に対する魅力を高めている。

実際、レンタル・再販ビジネス市場はコンスタントに成長し、今後も成長が見込まれている。再販プラットフォーム「thredUP」の調査によると、再販市場は2019年の280億米ドルから2029年には800億米ドルにまで成長すると予想されている。これは、ファストファッション市場のほぼ倍近い規模になる。向こう5年間では、再販モデルが4倍以上もの成長を遂げるのに対して、通常の小売りモデルは逆に4%減少するとも予想されている。

こうした状況を受けて、再販ビジネスモデルはBtoCだけでなくCtoCやC2B2Cなど様々なモデルとして展開され始めている。大手ブランドにとっては、自社で再販ビジネスを新たなに立ち上げるよりも、革新的な再販・レンタルビジネスを行う組織との提携を通じた参入が魅力的なようだ。同時に、修繕に必要な雇用も創出できる。

レンタル・再販ビジネスモデルの拡大には、デジタル技術への投資も欠かせない。2020年4月に英国とドイツの消費者を対象に実施した調査では、回答者の43%が新型コロナウイルスの流行後に初めてオンラインで購入するとともに、将来的に店頭での購入を減らすと回答したのは28%にのぼった。こうした傾向を踏まえて、SNSやライブ配信イベント等を活用して顧客のエンゲージメントを得ることも大切だ。ただし、SNSや動画を駆使しても多くの選択肢から選びやすいオンラインのインターフェイスが確立していないと購入に結びつかないため、顧客から選ばれるためのデジタルインフラの増強への投資も同時に求められるだろう。

最後に、レンタル・再販ビジネスの成功においてデザインの役割は大きいという点だ。安全で長く循環させられるようにするために、衣服は耐久性が高く、かつ無害な素材でデザインされなければならない。同時に、流行にとらわれすぎず、着回しの効くようなデザイン上の意思決定がなされるべきだ。ファッションのサーキュラー化につながる投資に際しては、こうしたデザインの原則も考慮される必要があろう。

8. 資源を収集、分別し、価値を回復させるインフラ

繊維業界では、かつてないスピードでリサイクル素材の使用がバージン素材の使用に取って代わられようとしている中、資源を収集、分別し、価値を回復させるインフラへ投資することは、未来のファッション業界をよりレジリエントにすることにつながる経済的、環境面での価値向上に寄与する。

まず、こうしたインフラ投資は廃棄コストを削減する一方で、経済的価値の保持につながる。今日、衣料品に使われる繊維の87%は埋め立てか焼却処分されており、これはトラック一杯分の繊維が2秒ごとに焼却されていることに相当する。リサイクルされている繊維は13%にとどまり、うち12%はダウンサイクルされており、新たな衣服にリサイクルされているのはわずか1%にすぎない。

新型コロナウイルスの流行に伴い、衣料品の販売減や受注減によって積み上がった在庫で廃棄量が大幅に増える恐れがある。もしこれらを再び循環させることができれば、年間1000憶米ドル相当の価値が失われずに済むとともに、収集における新たな雇用を創出し、分別・リサイクル施設の整備につながる可能性がある。リサイクル繊維の流通量が増えれば、衣料品の生産コストの低減につながる可能性もある。

資源の収集、分別、リサイクルは、ファッション業界による環境汚染を低減させることにつながる。バージン素材への依存を減らすことで、年間930億立法トンの水使用を削減でき、温室効果ガスの排出も削減できる。また、最終処分を回避することで、染色による地下水汚染を抑えることができる。ファッション業界の環境問題に対する消費者の意識はかつてないスピードで高まっているため、ファッションブランド企業は、衣料品の収集、リサイクルのプログラムを運用することで、顧客のつなぎとめや新たな顧客獲得につながるかもしれない。

各国による財政支援や規制を通じて、衣料品の循環を増やす施策への支持が広がっている。衣料品の収集、リサイクルのプログラムを運営する企業への減税のほか、収集・リサイクルを促進するための法規制の強化を図る動きが出ている。例えば、EUの改正廃棄物枠組み指令では繊維製品の収集・分別スキームを2025年までに整備するよう加盟各国に求めている。自治体は資源の収集・分別・リサイクル体制の整備を迫られることになるため、この分野に対するタイムリーな投資はさらに魅力的になるだろう。 

デザインは、繊維リサイクルを促進するうえでも重要な役割を果たす。リサイクルを意識した素材の耐久性、衣服の構造、加工(染色)によって、高い価値を保持したまま何度も使用され、最終的にはリサイクルされるような意思決定が必要だ。

衣料品の収集、分別、リサイクルできる物理的な拠点を増やすことへの投資が必要とされている。現在、衣料品の循環を可能にする設備のある地域をめぐって大きな不均衡が存在する。英国やドイツのような国々には公的なルートで衣料品回収の仕組みが存在する一方で、特にアフリカやアジア地域の国々は私的な回収ルートに依存している。ドイツのような回収率の高い国でさえ、衣料品の75%は自国に回収インフラのない国々に輸出されているような状態だ。このため、結果としてこうした国々に公害をはじめとする問題をもたらしている。さらに、こうした国々では現在、新型コロナウイルスの影響で古着の受け入れを禁止しているため、西側諸国では回収した衣料品が滞留する事態になっており、輸出業者は在庫を抱えて苦慮している。このことは、すべての地域で回収・リサイクル設備が設置される必要があることを物語っている。

また、回収・分別を早く、正確に行うための技術インフラも優先的に整備されなければならない。リサイクルに関わるコストを下げ、高付加価値市場をターゲットにすれば、投資は容易に回収できるとともに、リサイクルコストやリサイクル素材とバージン素材の価格競争力の改善にもつながる。また、繊維リサイクル設備とリサイクル技術そのものへの投資も必要だ。衣料品から衣料品へのリサイクルがダウンサイクルよりも優先されるべきなのだ。 

【参照レポート】The circular economy: a transformative Covid-19 recovery strategy(Fashion)