2021年にGreenBizで2番目に多く読まれた記事は、実は約4年前に公開されたものだ。この記事は、ソーラーパネルがエネルギーを生産する社会の一員としての役割を果たし、寿命を迎えるときに起こることに関する調査報告書である。

※この記事は、2022年1月12日、オンラインメディアGreenBiz上に掲載されたHeather Clancy氏による記事を許諾を得て筆者が翻訳しています。本記事は、気候テックに特化したニュースレターClimate Tech Weeklyに掲載されたものです。

ソーラーパネルの設計上、ガラスからカドミウム・ガリウム・ゲルマニウム・インジウム・セレン・テルルなどの貴金属に至るまで、さまざまな部品の分解・回収は複雑なプロセスであることが、この調査報告書で判明した。ガラスやアルミニウムを売却しても経済的なメリットがないため、ほとんどがシュレッダーにかけられるか、埋立地に運ばれる。

調査報告書が最初に公開されて以来、この事実に大きな変化はない。しかし、米アリゾナ州立大学のプロジェクトでは、太陽光発電装置からシリコンや銀などの材料をより簡単に、かつ経済的にもメリットがある方法で回収できるソーラーリサイクルプロセスを構築しようとしている。同プロジェクトに携わる研究者らは2021年12月初旬、先進製造におけるサーキュラーエコノミーへの移行の推進に焦点を当てたエネルギー省のプログラムの支援のもと、48万5,000ドル(約5,600万円)の助成金を受け取った。ソーラーパネルメーカーの米ファーストソーラーも資金調達を開始しており、ほかにも一部の太陽光発電装置メーカーやリサイクルに関するイニシアチブが資金援助を受けていることは、注目すべき点だ。 

風力タービンについても同じような問題に直面している。そのため、2021年に最も読まれたGreenBizの記事トップ25のなかに、シニアエネルギーアナリストのSarah Golden氏が執筆した、巨大な風力タービンブレードが軸から取り外された後の運命に関する記事があったことに、私は驚かなかった。EUでは、取り外されたブレードは焼却されたり埋め立てられたりする。リサイクルするという選択肢はあまりないが、デンマークに本拠を置くØrsted社のように、事業で使用されなくなったブレードの部品を回収・リサイクル・再利用することを公約している大手デベロッパーも存在する。Ørsted社は次のように報告している。「現在、風力タービンの85%から90%はリサイクルできますが、風力タービンブレードは軽量でありながら耐久性があり、分解しづらい設計であるため、依然として課題となっています」

そこには「設計の優先度」の問題があるのだ。

よりクリーンな経済に移行するために早急に必要とされる気候テックも含め、世界で流通している製品のほとんどは、寿命を迎えたときのことを考慮されていない点は言うまでもなく、そもそもサーキュラリティを念頭に置いて設計されていない。しかし、気候テックの専門家らにとってのインスピレーションになるような変化の兆しが現れている。

手本として注目すべきプロジェクトの一つに、循環型材料・修理可能性・再利用を優先したノートパソコンの再構築に焦点を当てた米デルのエンジニアリング・設計イニシアチブ「Concept Luna(コンセプト・ルナ)」がある。同イニシアチブを通じて米インテルと共同でつくられた概念実証プロトタイプは、ほかのノートパソコンとほとんど違いがないが、サーキュラリティを考慮した多くの微調整が施されており、もし商業化されれば(現在検討中)間違いなく変化をもたらすだろう。プロトタイプの特徴は次のとおりだ。

  • ネジの数を大幅に減らした。分解や修理をする際、パソコン内部のパーツを確認するのに外す必要のあるネジは、わずか4本だ。(10分の1に削減)
  • 従来の接着剤を使用していないバイオベースのプリント基板を採用した。接着剤は水溶性ポリマーを原料としているため、リサイクル業者は金属などの回収可能なパーツを基盤から簡単に分離できる。
  • マザーボードの配置を変更し、小型化した。マザーボードの総面積を75%縮小しただけでなく、トップカバーに配置し、修理や部品交換をより簡単にできるようにした。(放熱性にも優れている)
  • パームレストとキーボードを簡単に分離できる設計を採用した。当然のことながら、パームレストとキーボードは、ノートパソコンで最も頻繁に交換されるパーツだ。

誤解を与えないように付け加えると、これらの機能は現時点で、デルの特定の製品に搭載されているわけではない。しかし、将来的には商業化の可能性を見極めながら、一部、あるいはすべての機能が組み込まれるかもしれない。同社のデザイン・ストラテジストであるDrew Tosh氏は、チームがどの材料を試してみるかを決定する際、プロジェクト全体を通して耐久性を重視したと語ってくれた。「当チームは、できる限りの手段を講じました」とTosh氏は話す。

このプロジェクトに携わるエンジニアらは、インスピレーションを受けるため、電子機器の分解施設を訪れた。彼らは、持続可能な材料の専門家らに相談しながら、プロトタイプに使用する材料も選んだ。その一例として、Concept Lunaで使用されているアルミニウムは、水力発電で製造する工場から調達している。デルのノートパソコン製品マーケティングチームは、このコンセプトパソコンを評価し、どの機能を実際の製品ロードマップに追加するかを検討する。

また、スピーカーメーカーの米Sonosが2021年12月初旬に正式に発表した同社初の気候変動対策戦略の一環として、サーキュラーデザイン原則の導入を積極的に検討していることを知り、私は興味を惹かれた。同社の社会的影響担当部長のDeji Oluktun氏に話を聞いたところ、サーキュラーデザイン原則の導入について、次の3つの例を挙げてくれた。

  • 接着剤の代わりに留め具を使用することで、パーツを破壊せずに簡単に修理できるようにする。
  • 電子廃棄物を減らす設計を優先する。2023年度末までにSonosのすべての新製品で、バージンプラスチックの代わりにリサイクルプラスチックを使用する予定だ。
  • ハードウェアよりはソフトウェアの機能アップグレードを優先させるという、スマートホーム製品メーカーとしては珍しい方針を継続する。Oluktun氏によると、ソフトウェアのアップデートは古くなった端末にも適用できるため、Sonosの製品の90%以上が現在も使用されているという。

今こそ気候テック分野のメーカーが、サーキュラリティの向上にもっと積極的に取り組むときであり、この分野でゼロから取り組みを開始するスタートアップについてはなおさらだ。

【翻訳元記事】Why climate tech needs circular design
【関連記事】Dell Technologies、循環型PC設計コンセプトを発表。CO2排出量を50%削減

これまでのGreenBiz連載

【GreenBiz連載#1】システムチェンジってそもそも、何?

【GreenBiz連載#2】DXがサーキュラーエコノミーへの移行を可能にする

【GreenBiz連載#3】再販高級化の兆し?

【GreenBiz連載#4】2022年に注目すべき「持続可能な容器包装」の6つのトレンド 

*記事中の画像の出典:デル