世界循環経済フォーラム(以下、WCEFまたはフォーラム)2024と関連イベントが2024年4月15日から18日まで、ベルギー・ブリュッセルで開催された。同フォーラムの会場には1500名の関係者が集まり(オンライン登録者を合わせると約9300名)、社会経済システムを変革するドライバーとしてのサーキュラーエコノミーをどう実装していくか、議論が交わされた。

今回は、「サーキュラーファイナンス」「自然に寄与するソリューション」「循環型都市・地域」「需要側の巻き込み・アプローチのあり方」「重要原材料の循環化」「公正な移行」などが主なテーマ。加えて各業界における最新の知見が持ち寄られた。本連載では、毎年現地・オンラインいずれかの方法でWCEFに参加する筆者がこれらのテーマのもと交わされた議論について、日本へ投げかけているであろうメッセージを読み取りながら考察を加えていきたい。

まず初回ではWCEF自体について見ていこう。同フォーラムそのものの性格を知ることで、グローバルレベルで行われているサーキュラーエコノミーに関する議論のベースを掴むことにつながる。

一言で表すと、Sitra(フィンランド・イノベーション基金)が主導するWCEFはサーキュラーエコノミーのグローバルプラットフォームないしはコミュニティに発展しつつある。大げさに言えば、このフォーラムを単なるイベントとして捉えるだけでは、機会を失ってしまう可能性すらある。

「ツールとしてのサーキュラーエコノミー」を「気候」や「自然」と同列に扱うつもりはないが、気候分野における国連気候変動枠組条約締結国会議(UNFCCC-COP)や生物多様性分野における国連生物多様性条約締結国会議(CBD-COP)のように、サーキュラーエコノミーにはこれらに相当するような条約交渉や決め事を行う国際会議がない(プラスチックなど個別分野は除く)。そういったなか、WCEFは両COPがそうであるように、関係者による最新の科学的知見や実践知が集まり、知見を蓄積させてきた。閉じた会議体ではないため、新しいプレイヤーが参画することでプラットフォーム自体を拡大している傾向もある。

WCEFの歴史

WCEFの歴史を見ていこう。以下は、WCEFや関連イベントのこれまでの歩みだ。

  • 2016年 フィンランド、国家サーキュラーエコノミーロードマップを策定(同国によると国レベルによるサーキュラーエコノミーロードマップは世界初)
  • 2017年 フィンランド独立100周年に合わせWCEFを立ち上げ
  • 2018年 日本の環境省と共催で横浜で開催
  • 2019年 フィンランド・ヘルシンキで開催
  • 2020年 オンライン開催(新型コロナウイルス感染症拡大のため)
  • 2021年 オンライン・オランダ(WCEF+Climate)で開催
  • 2022年 ルワンダ・キガリで開催
  • 2023年 フィンランド・ヘルシンキで開催
  • 2024年 本回であるベルギー・ブリュッセルで開催
  • 2025年 ブラジル・サンパウロで開催

このように、これまでの開催地は欧州が多いものの、2025年も含めると未開催の大陸はオセアニア大陸のみとなった。(アメリカ大陸については2025年にブラジルで開催。なお、2020年にカナダ・バンクーバーで開催予定だったが、2021年に延期され開催もオンラインとなった)

SitraのWCEFの責任者の一人であるMika Sulkinoja 氏は、「フォーラムの主催はSitra単独ではなく、予算面も含めて他機関や開催地のパートナーと連携している。フォーラムという形態を通じて、コミュニティを広げていくことがねらいだ」と話す。2024は、科学ベースの議論を強化すべく国連環境計画の国際資源パネル(IRP)とCircle Economy Foundationとの共催という体制だった。次回ブラジルでは、サンパウロ州産業連盟・ブラジル貿易投資促進庁・ブラジル全国工業連盟と共催する。このように、Sitraは各開催地で現地機関や国際組織と連携することで、サーキュラーエコノミー移行に向けたグローバルコミュニティを拡大しようとしているのだ。

次回開催地発表時(筆者撮影)の様子

こういった「大義」の一方で、一つ付け加えておく必要がある。Sitraの母体であるフィンランド政府は、上記の通り2016年にサーキュラーエコノミーロードマップを策定。フィンランド共和国独立100周年にあたる2017年にWCEFを立ち上げたという点だ。フィンランドのまさに「生き残り戦略」としてサーキュラーエコノミーを位置づけるという競争戦略としての要素があり、その延長線上にWCEFも位置づけられているという見方もしておく必要がある。そもそもSitraの使命の一つに、国の競争力向上への貢献があることを忘れてはならない。

さまざまなプレイヤーが公式・非公式に議論

フォーラムには、サーキュラーエコノミー推進団体として「おなじみの」英エレン・マッカーサー財団、蘭Circle EconomyやEIB(欧州投資銀行)、European Circular Economy Platform、OECD、WEF(世界経済フォーラム)、ACEA(African Cirucular Economy Alliance)などの推進組織に加え、企業からの参加(2024は全体の35%)、自治体、政府関係者、NGO、リサーチャーなどが参加する。セッションを通じた公式的な議論はあるが、無論この会議を活用した非公式なディスカッションも多数行われる。

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