このシリーズでは、10分以内でサーキュラーエコノミーの学習ができる、比較的短く難易度の低い動画から順番に取り上げます。第4回の今回は、「Meet the people designing out waste(あらかじめ廃棄物が出ないように設計する事例の紹介)」をご紹介します。動画の内容やエディターの視点も合わせてお楽しみください。
動画タイトル
「Meet the people designing out waste (あらかじめ廃棄物が出ないように設計する事例の紹介)」
配信元
Ellen MacArthur Foundation(エレン・マッカーサー財団)
所要時間
3分26秒
配信日
2019年7月17日
動画の概要
日常生活において、使い捨てされる商品は多く、それらはすぐにごみ箱行きになる。例えばファストフード店で使用するケチャップ包装は、ほんの数秒で役目が終わり、廃棄されてしまう。しかし、一瞬で消費されてしまうこのような製品は、廃棄物処理に負荷がかかる。取って、作って、捨てるというモデルに問題があるのは明らかだ。この問題に設計の視点で取り組む2社を紹介する。
1社目は瞬時に消費されてしまうプラスチックパッケージに目を向け、海藻から生成された、食べられるパッケージ「Ooho」を開発している企業、Notpla社だ。同社は、既存の製品パッケージに新しい視点を取り入れ、従来のパッケージの基準を大きく変えようとしている。Oohoは、プラスチックのように中身の品質を保管する役割を果たしながら、生分解性の素材を使用しており、頑丈なうえ、食べられるパッケージとして機能する。使用後は数週間で自然へと戻る仕組みだ。現在はシャンプーや洗剤類の容器も開発している(Oohoについてはこちらの記事でも取り上げている)。
2社目のDSM社は、カーペットのリサイクル率がヨーロッパでわずか3%ほどであるという課題に着目し、マットレスやカーペットなどをリサイクルしやすくよう開発に取り組んでいる。また、使用後にリサイクルできるように設計するだけでなく、製品メンテナンスなども手がけ、製品自体の残存価値を高く保持し、高品質で長く使える製品を提供できる工夫をしている。
このように、企画・設計・開発段階でサーキュラーデザイン(循環型設計)に取り組むことが重要となる。これらの発明は今までの経済モデルを変革し、気候変動や大気汚染、廃棄物削減へ大きく貢献するに違いない。
エディターの視点:サーキュラーデザインを用いて廃棄物削減や気候変動問題に貢献する
現在の消費活動は、有限の資源を採取し、低コストで使い捨ての商品を製造し、使用後すぐにごみとして廃棄するリニアエコノミーの構造になっている。このような現在のリニアエコノミーから、サーキュラーエコノミーを実現させるためには、設計(デザイン)はもっとも重要だと位置づけられている。そういった文脈で、この動画はサーキュラーデザインに取り組む企業を紹介している。
広く知られている3R(リデュース・リユース・リサイクル)は、設計された「後」の製品を大切に長く使い、原料を回復させようとする「デザイン後の視点」が用いられている。その考え方に対してエレン・マッカーサー財団は、「Design out waste and pollution (廃棄や汚染をしないようにあらかじめデザインをする)」という考えをもつ。EUのレポートによると環境負荷の80%以上は、設計(デザイン)の段階で決定づけられてしまい、ループを回せるように、あるいは廃棄する際に環境に良いインパクトを与えるために、しかるべきサービスや設計が施されなければならないと記されている。
サーキュラーデザインの定義を確認しよう。エレン・マッカーサ財団によると、サーキュラーデザインとは、サーキュラーエコノミーに移行するために、リニア型モデルで作られたサービスや商品をサーキュラー仕様にデザインし直すことと定義づけられている。この動画からもわかるように、「Design from waste(廃棄物から(ありきで)設計する)」 ではなく、「Design out waste (廃棄物をあらかじめなくすように設計する)」の視点をもつことが重要だ。販売までのサービスのあり方も含め、製品の構想段階でリユースやリサイクルできるように設計をする必要がある。
では、具体的にどのような戦略を取るべきだろうか。まず、サーキュラー仕様に設計するには、下記の「サーキュラーエコノミーの3原則」に則った設計をする必要がある。
1. ごみ・汚染を出さないための設計
2. 製品と原材料を使い続ける
3. 自然の仕組みを再生する
上記3原則に基づき、エレン・マッカーサー財団は下記6つの具体的設計戦略を紹介している。
1. 安全で循環する素材を選ぶ
2. 製品寿命を長くする
3. モジュール化する
4. 非物質化する
5. 製品からサービスへ
6. 資源を「内側の円」に留める
この動画で紹介されている1社目のOohoの場合は、プラスチックパッケージから生分解性のある海藻を素材にした「1. 安全で循環する素材を選ぶ」戦略に当たる。
2社目のDSM社は同様に、「1.安全で循環する素材を選ぶ」「2.製品寿命を長くする」「3.モジュール化」「6.資源を「内側の円」に留める」の4項目に当てはまる。カーペットやマットレスの使用後の処理方法を設計段階から考慮し、健康と環境にプラスになる素材のみを活用(1)し、使用後はパーツを分解できるよう製品をモジュール化し(3)、資源を内側の円に留めている(6)。また、顧客にメンテナンスのサービスを定期的に提供し製品寿命を延ばしている(2)のだ。
ここで注意すべき点がある。それは、部分的な解に焦点を当てすぎないことだ。例えば、「2.製品寿命を長くする」ことは、その製品の利用期間が短く利用頻度が少ないにも関わらず、頑丈に作られすぎているため、製造に多量のエネルギー負荷をかけているかもしれない。良かれと思ってある部分で環境負荷を低減したとしても、他の部分で環境へ悪影響を及ぼしているおそれもある。そのため、全体像を俯瞰しながら本質的な最適解を生むシステム思考の考えが重要だ。
エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーデザインを自社内で実践できるようにProduct Journey Mappingというツールを公開している。ここに描かれているステップを実施してみると新たな発見があるかもしれない。
【参照記事】ロンドンのハーフマラソン、水分補給はプラスチックカップから「食べられるボール」へ
【参照記事】Ecodesign your future (EU report)
【参照記事】「サーキュラーエコノミーのためのデザイン」エレン・マッカーサー財団学習プログラム From Linear to Circular #2
【関連サイト】Notpla社
【関連サイト】DSM社
【関連サイト】Product Journey Mapping エレン・マッカーサー財団
Circular Economy Hub Learning 動画シリーズ(全5回)
- Circular Economy Hub Learning #1 (動画「Circular Economy」より)
- Circular Economy Hub Learning #2 (動画「Circular Economy… it’s the way forward」より)
- Circular Economy Hub Learning #3 (動画「Dame Ellen MacArthur: food, health and the circular economy」よりバタフライダイアグラムの解説)
- 今回 Circular Economy Hub Learning #4 (動画「Meet the people designing out waste 」より)
- Circular Economy Hub Learning #5 (動画「Systems and Network Innovation」より)