アミタホールディングス(以下アミタHD)とNECソリューションイノベータは、2022年11月1日より宮城県南三陸町でICTと行動経済学(※1)の概念の一つであるナッジを活用した、生ごみの回収・再資源化の促進を目指す社会実証を開始すると発表した。アミタHDは2018年から同町で生ごみの分別・回収への住民の参画意識向上などを目的とした社会実証を行い、域内資源の循環利用を推進してきたが、今回は回収量のさらなる増加を目指して「ICTと行動経済学を活用した社会実証プロジェクト」として23年3月末まで実施する。

今回の実証では、NECソリューションイノベータと明治大学 情報コミュニケーション学部 後藤晶専任講師の共同研究の成果であるナッジ(※2)などの行動経済学の手法を活用する。具体的には、LINE公式アカウント「南三陸生ごみ再資源化ミッション」に友だち登録した南三陸町の住民に対して、地区ごとの回収目標値や進捗状況を配信するとともに、目標に対する結果を月に一回通知し、それに対して住民同士で「いいね」などで評価し合い、集計結果も公開する。

LINE公式アカウント「南三陸生ごみ再資源化ミッション」の配信イメージ(出典:アミタHD)

両社は、同実証でナッジの概念を活用することで期待される効果を以下のように説明する。

  1. 目標値の設定:目標設定によって参加者の行動が促されることが行動経済学では示唆されており、そのノウハウを同実証でも活用する。ICTを活用し、あえて一人では達成できないような数値目標を自動設定することで、住民による近隣住民への協力要請など、周囲を巻き込む行動を促す。また、地域の横のつながりを創出することで、参画を促しながら生ごみ回収量の増加に寄与することを期待する
  2. 「頑張る」気持ちと「いいね」の表明:ナッジでは、行動しようという意志を事前に周囲に表明することがその行動を促進すると示唆されており、同実証でもその効果を期待している。「頑張る」気持ちの表明件数を集計し、住民同士で共有することによって、地域の連帯感の醸成を後押しする。住民は全地区の回収結果に対して「いいね」を表明でき、集計結果は後日配信される。行動経済学では「いいね」のような社会的承認を受け取ることが協力行動の促進につながると示唆されており、その効果を狙う

こうした機能を通じて、地域参画の気運を高めながら住民同士の連帯感の醸成を支援することで、昨年度の同実証と同じ時期(2021年11月1日から2022年3月31日)の回収量実績(155.1トン)よりも10%の増加を目指すとしている。回収された生ごみは、2015年からアミタグループが同町で運営しているバイオガス施設「南三陸BIO(ビオ)」で、液体肥料と電気に100%資源化されて再び地域内で使用される。

※1 行動経済学:人間が必ずしも合理的には行動しないことに着目し、伝統的な経済学ではうまく説明できなかった社会現象や経済行動を、人間行動を観察することで実証的にとらえようとする新たな経済学

※2 ナッジ:行動科学に基づく工夫や仕組みによって、人々がより望ましい行動を自発的に選択するよう促す手法

【プレスリリース】アミタHDとNECソリューションイノベータ、 11月1日より南三陸町で、サーキュラーエコノミーを推進する社会実証を開始  ~ICTと行動経済学のナッジを活用し、地域家庭からでる生ごみの再資源化を促進~
【参照記事】自分のための循環から、誰かのため、地域のための循環へ ~アミタが問いかけるサーキュラーエコノミーの先に広がる世界とは?~