アサヒグループホールディングス株式会社の独立研究子会社であるアサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社はこのほど、アサヒグループ研究開発センターに「メタネーション装置」を導入し、2021年9月から実証試験を開始すると発表した。メタネーション実証試験実施は、国内食品企業では初(※)となる。

同装置は、株式会社IHIが製造した。メタネーションとは、水素とCO2からメタンを合成する技術で、カーボンリサイクルの有望な技術の一つとして位置付けられている。

2020年1月、アサヒグループは「CO2分離回収試験装置」を導入し、ボイラ排出ガスからCO2を分離させて高効率回収する実証試験を実施している。

今回の「メタネーション実証試験」において、アサヒグループは「CO2分離回収試験装置」で回収したCO2の有効な用途の開発に取り組む。回収したCO2を「メタネーション装置」内で発生させる水素と反応させて合成メタンを製造し、ボイラや燃料電池などの燃料としての利用を検討する。9月から連続1万時間稼働の長期試験を開始して、「CO2分離回収試験装置」との連結運転やシステムの性能・合成メタンの品質・コスト採算性などを確認し、工場への展開の可能性について評価する意向だ。

メタネーションの合成フロー

「事業を通じた持続可能な社会への貢献」をグループ理念の行動指針の一つに掲げるアサヒグループは、気候変動への対応として2050年までにCO2排出量ゼロを目標とし、「自然の恵み」を次世代に引き継ぐことを目指している。CO2排出量ゼロ達成に向けては、国内外の製造拠点での再生可能エネルギーの積極的な活用・製造工程の見直し・物流の効率化などによる省エネ推進にグループ全体で取り組んでいるとしている。排水由来のバイオメタンガスを利用した燃料電池による発電システムなどにも取り組み、研究開発を推進していると発表した。

2020年10月に日本政府は「2050年温室効果ガス実質排出ゼロ達成」を宣言し、カーボンリサイクルなどの革新的イノベーションが達成への重要な要素であることを示した。これを受け、経団連は2020年11月に新たな成長戦略である「。新成長戦略」を発表し、CCUS(二酸化炭素の回収・有効利用・貯留)などのイノベーションを国家プロジェクトとして官民連携で強力に推進することを表明している。

現在カーボンリサイクルへの取り組みは、さまざまな分野で進められている。例としては、一酸化炭素と水素を活用した持続可能な航空燃料(SAF)の製造やCO2と水素からカルボン酸を合成する新技術、回収したCO2からつくるカーボンリサイクル・コンクリートや都市ガス機器利用時の排ガス中のCO2からつくるコンクリートなどが挙げられる。今後、さらに展開されていくであろうカーボンリサイクルへの取り組みに注目していきたい。

※:アサヒグループホールディングス株式会社調べ

【プレスリリース】国内食品企業初のメタネーション実証試験を開始
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*記事中の画像の出典:アサヒグループホールディングス株式会社