経済産業省中部経済産業局は7月17日、2023年度「中部地域におけるサーキュラーエコノミー移行の加速に向けた調査事業」調査報告書を発表した。サーキュラーエコノミーへの移行に向け、自動車関連産業を中心とした動脈産業・静脈産業・関連団体へのヒアリングを実施し、動静脈連携のアクションプランをまとめている。調査事業の受託者は株式会社フルハシ環境総合研究所。

サーキュラーエコノミーの実現には、従来の環境配慮設計では循環されなかった資源を考慮し、材料の見直しや回収、選別の仕組みを設計時点で検討をする「循環配慮設計」の実装が必要だと指摘。「循環配慮設計」の普及には、動脈産業側(設計実施者側)の取り組みだけでなく、動脈産業と静脈産業のコミュニケーションを通じた具体策の検討が不可欠だと述べている。

本調査事業では、こうした資源循環の課題と、自動車関連産業を中心にEUのELV(使用済み車両)規則案による再生樹脂の利用率規制やMaaS・CASEによるビジネスモデルの変革などの動向を踏まえ、動脈・静脈双方の視点からサーキュラーエコノミーへの移行に向けた具体策を検討した。

まず資源循環の課題把握のため、静脈産業と動脈産業それぞれの現状についてヒアリングを実施。ヒアリングを通して、使用済み自動車の部材のほとんどが他分野用途やカスケードリサイクルとなっており、自動車部品製造への再利用は限定的であることが明らかとなった。その理由として、バージン材料との競争力が障壁となっており、特にコストを課題とする指摘が多いと指摘。再生材のコストを押し上げる要因について、今後詳しく調査をする必要があると述べている。

また中小・小規模事業者が多い静脈産業においては、個社単位では品質要求、技術開発、体制構築などの対応は難しいこと、動脈側への働きかけにはハードルが高いことを指摘。目指すべき資源循環の姿を仮説(課題解決の糸口)として設定し、サーキュラーエコノミーへの移行に向けて、動脈側には「サーキュラーエコノミー時代のものづくり(調達・製造)」を強く意識すること、静脈側には「単に捌くのではなく戻す」よう推進することを求めた。

具体的には、動脈側は「再生材の優先的な調達と、廃棄・焼却前提の部材の不使用」「解体・回収が容易な設計・製造」「回収の容易な素材利用・配合・組み合わせ」を、静脈側は「焼却・埋立を極力排除」「ダウンサイクルに頼らない出口の追求」「トレーサビリティの確保」を求めている。

まとめとして、サーキュラーエコノミーへの移行にあたり、単に「再生材料の利用量を増やす」という発想に留まるのではなく、自動車を製造する際に再利用しやすい材料、解体・選別・回収しやすい設計・製造方法を採用することで、循環配慮設計の実装と資源の循環に関する課題を大きくクリアする可能性を秘めていると示唆した。

本調査を通して作成されたアクションプランをもとに、今後は自動車メーカー個社の主導では実現が難しい項目を中心に動静脈双方で課題を共有し、個別の課題抽出と解決に向けた役割分担、技術開発、統一規格や制度整備について深掘りしていくことを提唱している。

【プレスリリース】令和5年度「中部地域におけるサーキュラーエコノミー移行の加速に向けた調査事業」調査報告書を作成しました
【参照記事】「中部地域におけるサーキュラーエコノミー移行の加速に向けた調査事業」調査報告書
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